付加価値税と賃金と経営者

 はじめに、『人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか』(慶應義塾大学出版会)玄田有史東京大学教授編集によれば、賃金の定期昇給や日本型雇用契約(年功型賃金(賃金カーブ))が完全には崩れていない事を示しています。「所定内給与は減らないが、賃金は上がらない。」この本の分析は賃金が上がらない要因は大部分が国内要因にあるというのが前提で、1991年のマーストリヒト条約が日本経済に与えた影響は書かれていません。たしかにEUという統一市場の誕生は国内市場だけの企業にとっては殆んど影響が無いとされていますが、EU加盟条件である「付加価値税(VAT)15%以上」が日本企業経営者に与えた「行動」は、EU内企業並びに労働組合が取った「行動」と重なるものだったと思います。それは、本書でも書かれていた企業経営者の行動に表れているからでした。付加価値税は経営者の「行動」を変えたと同時に労働者側の「行動」も変えたということです。それは、労働時間の厳格化と労働者自身の時間をどのように使うべきか、家庭との調和と生産性と労働分配率のあり方などがあります。また、近年世界共通に個人請負型就業者が拡大をしていることと無関係ではないと思います。

 また、米国のトランプ政権がTPPから脱退する理由として、「米国企業が日本へ輸出すると付加価値税(消費税)を負担するコストが増える」というのがあります。さらに、米国トランプ政権は北米自由貿易協定(NAFTA)の修正も同じ理由で行動をおこしているのです。
 2016年のEUとカナダの自由貿易協定(FTA)への対応(関税撤廃)から、カナダは付加価値税(HST)を15%へ引き上げています。米国内で製造した商品への課税強化(輸出戻し税が無い。または、納税コストが高い)を、嫌ったことによるものです。米国製造業の復活による米国内からの輸出拡大を行うためのハードルが如何に高いものであるかが伺えます。
 しかし米国企業は売り上げも利益も上げています。それは米国国内からの輸出ではなく、製造場所を中国へと移転させたことが大きく関係しており、安い人件費だけではなく、対EUを含む付加価値税を設定している国との貿易を有利にすることを米国民主党政権が行った政策だったからです。TPPでも不利にならない自信が米国民主党にはあったといえます。
 それは1991年の日本とEUの関係になる以前から準備されたことでした。現在では、日本の付加価値税(消費税)8%と中国の付加価値税(増値税)17%で、日本への輸出に対し中国が有利、日本が不利な条件となっていることからも伺えることですが、中国の付加価値税(増値税)17%とEU付加価値税(VAT)15%以上で貿易条件の不利益を対消滅したとも見えるからです。

 日本の政策として、この税率差への対応は大きく分けて三つです。
 
「金融政策(為替)」「財政政策(法人税・消費税・関税等の改定等)」「構造改革(雇用の流動化・規制緩和等)」となり、「失われた20年」のその時の政権が齎した改革圧力が様々な方面で蠢動することとなっていったのです。

付加価値税を考える

 付加価値は、「課税売上−課税仕入(原材料費,外注費,販管費等)」、「税引後純利益+支払利息+手形割引料+賃借料+人件費+租税公課」などで表すことが一般的です。
 多くの方達から批判される付加価値税(消費税)が、賃金並びに経営者に対しどの様な行動を促すのでしょうか。そのためには付加価値税が何に対して課税しているのか理解するところから始めましょう。

 付加価値税(消費税)の「仕入税額控除」をマクロ的に見ると最終的に課税される科目が何かというと「付加価値=労働価値+剰余価値」と表されることになります。労働価値というと、マルクスの「労働価値説(人間の労働が価値を生み、労働が商品の価値を決めるという理論)」いわゆるマルクス経済学ですね。また剰余価値(労働者が生み出した剰余価値の対価を支払わない。「搾取」と称する)も同様です。でも生産能力(機械化・ICT化等)は当時と現代では全然違うため、簡単に当てはめるのは難しくなっています。そのような時代の変化の中で、付加価値税が登場してきます。
 
 付加価値税(VAT)は、フランスで生まれた税制です。所得税がドイツで生まれて世界へ広がったのと同様に社会情勢の変化への対応とも言えるでしょう。この「労働価値」と「剰余価値」の双方に課税するのが付加価値税(VAT・消費税・GST・HST・増値税等)ということになります。

 付加価値が高いということが、コストパフォーマンス(コスパ)が高いということを指すコンサルがいますが、この方達は「剰余価値」を重視していることを前提としています。
逆に「労働価値」を重視する方達は「労働分配率」を重視していることになります。それぞれの主張には理があり、お互いを全否定するのは難しくお互いが譲歩し合うことしかできないと思います。

 現代社会において消費者が求める要求(欲求)は、「コストの圧縮を行い、リーズナブルな価格でお客様にご満足いただける商品及びサービスの提供」が経営者に課せられていることもこの問題を難しくしているからです。

付加価値税の売上時の仕分けは、税込(消費税率8%)ですと

現預金 10,800 / 売上 10,800 

となります。この仕分けだと付加価値税(消費税)が分かりませんから、実際の仕分けは、

現預金 10,000 / 売上  10,000
現預金  800/ 仮受消費税  800

となります。「消費税を消費者から預かっている」というのは、こういう仕分によるところが大きいですが、事実は違います。付加価値税(消費税)の実際の課税科目はこれでは分からなくなるからです。
 ですが、税が分かりにくい反面、付加価値税が存在しない以前から法人税や関税等の税コストは、商品価格に価格転嫁されていましたから、税コストを「見える化」しているということでは消費者に対し、説明責任を果たしているとも言えるのです。
 「税の見える化」が何でこんなに忌み嫌われるのでしょう。様々なメディアの取り扱いも含め「見える化」って要求されますよね。見える化によって得られる「痛税感」で理性が吹っ飛び、本来の目的を忘れてしまい、困難な道へと突き進んでしまうのは何故なんでしょう。

商品の仕入れ、サービスを購入する場合の税込の仕分けは、

材料費(外注費) 5,400 / 現預金 5,400 
ですが、きちんと分解して、
材料費(外注費) 5,000 / 現預金  5,000
仮払消費税  400/ 現預金  400

そうすると、
仮受消費税 800 ― 仮払消費税 400=消費税納税額 400

消費税は、「仮受消費税−仮払消費税」で納税額を算出するのですが、ここで大事なのは、一般的な企業会計「収益−費用」ではないということです。また税務会計(法人税)の「益金−損金」でも無いということを理解しないといけません。

 昔の「役員報酬」は「損金不算入」。つまり経費として認められていませんでした。そのため法人税減税にならないわけですから、日本の経営者は役員報酬を高くしなかったのです。それが変化したのは、「事前確定申告」で役員報酬を固定化すれば損金(経費認定)されたからです。でもそれは、現在のコンプライアンスで不祥事が生じた際に役員報酬を減額すると「事前確定申告」が崩れることになりますから、経費として認定されない。当然のこと税務署は損金扱いしないので法人税が高くなることになりますから、経営者はコンプライアンスを強化する経営を行います。課税の在り方が経営者の行動を促している一例ですが、付加価値税(消費税)はどのように経営者の行動に影響を与えているのでしょうか。

 反リフレ派の方達が利益を減らすのは簡単だと言います。その方法として「給料・賞与」の支出(労働価値を重視する)を主張しますが、企業会計「収益−費用=当期利益(損失)」や税務会計「益金−損金=課税所得」は、法人税に対する算出方法ですので、付加価値税(消費税)では関係がありません。

給料・賞与 3,000 / 現預金 3,000 
仮払消費税   0 / 現預金   0 

 この仕分けでは、消費税が課税されていません。不課税科目だからです。先ほど述べた役員報酬も不課税科目であることもポイントになります。ここに付加価値税(消費税)の「マクロ的に見ると最終的に課税される科目」が何かが浮かびあがってきます。何故なら、仮受消費税−仮払消費税での課税仕入れ科目に該当しない「不課税」「非課税」こそが、消費税8%の「労働価値」に相当する部分の納付額になるからです。課税されてないいのに、課税されている。そこに付加価値税の難しさがあるのです。

津波被災の記録146

 東日本大震災の「被災者」「被災地」というのは、様々な報道の在り方を見ていると、本当に都合の良い「道具」として使われるための言葉なのだと身にしみる日々です。「忖度」という「お客様に寄り添った接客」などのことではありますが、この6年は実に都合の良い「忖度」をするNPO等により被災地を混乱させ、死ぬまで付きまとうという「忖度」の別の面を見続けてきました。平成23年3月11日の発災から様々な支援や政策が「被災者の気持ちが分からないのか」という罵声や怒号などの「忖度」要求により実施され、税金が使われることになりました。
 
 当事者の被災者からの要望というのは、当時は殆ど汲み上げられていなかったと思います。半年から一年が経過してから被災者に対する意見集約が始まったので、その間に決まったことは一部の有識者、大学関係者、国・県・市町村の中で「忖度」が行われただけなのです。その「忖度」で復興特別税による復興予算20兆円超が決まるプロセスには被災地は殆ど関与しておりません。間接民主主義の日本において様々な政策は「忖度」されながら決まり、実行段階で当事者との意見調整がなされながら進むものです。その中で、防潮堤の高さを高くしてほしいと言う地域もあれば、低くして欲しいと言う地域もあり、「忖度」したから物事がその通り進むことが無いのはこの6年での復興計画の遅れとなって現れているのです。
 
 大槌町の復興の遅れは、防潮堤建設の際に共産党系の反対する方たちの「巨大な防潮堤ガー」ということによるものです。地下水脈が豊富に流れる町内を嵩上げせずに再建させるには震災前より大きい防潮堤整備と非難道路の整備を行うことで、自然環境を温存しつつ町内再建者を増やし、人口流出を抑制するという考え方によるものです。ですが、当時、反対派は安倍首相夫人が城山体育館に来訪されて際に、「安倍首相夫人も疑念があると発言した」と政治利用をしたのです。上手に利用されたわけですね。
 それにより大槌町の復興計画は狂いこの6年で住民の流出はとどまるところを知らず、復興後の予測でも人口は半減する方向へ反対派によって誘導されていったのです。嵩上げの選択が復興を遅らせることは当初から分かっていたことで、これを後押ししたのが、メディアによる報道でした。
 明治・昭和の津波の際の高台移転の事例や津波石などを取り上げ、住民を誘導して言ったのです。それをさらに利用したのが東京のNPOによる「桜植樹」「鎮守の森」等の植樹募金ビジネスです。浸水地域という穢れた土地という設定の下に、復興計画が住民の意思から乖離して行き復興はどんどんずれ込んでいくようになりました。
 
 大槌町の復興の遅れと住民離散が様々な政治利用による要因であると同じように、釜石市の復興の遅れの最大の原因は「ラグビーワールドカップ」です。「被災地(被災者)に寄り添う」「元気付ける」と言いますが、まったく違います。日本ラグビー協会大学ラグビー関係者ならびに盛岡市民のせいで、釜石市鵜住居地区の復興は2年から3年延ばされてしまいました。ラグビー場建設により、本来設置しない下水道処理施設建設によりどんどん遅れていってます。そのため住民はあきらめ感で覆われており、URや下水道公団、釜石市は調整機能不全に陥っており、ラグビー協会の圧力によって、事業そのものも遅々として進まないため、終わった後は、住宅など建たず原野の状態になるしかありません。それと言うのも、民進党系の市長により、下水道利用料は350円以上を徴収するという方針を伝えられ、被災しなかった地域の下水道利用料は100円程度で維持し、ラグビー場建設に伴う下水道処理処理場の建設費を被災した地元住民のみに負担させるというからです。嵩上げによる土地の固定資産税ももの凄く上がり、住宅の固定資産税も爆上げ、ラグビーの負担も負えと言う民進党共産党自由党と県知事の意向というのは恐ろしいものだと改めて感じたしだいです。グループ補助金の際も自由党の大先生のポスターが貼っているご利益からか、外国人研修生の多い企業への「忖度」というのは、あるものだなあと感じましたが、自分たちへの支持が低いと思われる地域へのやりようは本当に怖い。

 住民からの要望があった防潮堤は、いまだに完成の目途が立たない。理由は、受注したゼネコンが下請作業員も含め殆どを五輪対応に持っていったため、作業員宿舎には人が居ません。五輪とラグビーワールドカップは、実態としては復興を遅らせているのです。北関東・奈良県南部の大水害、鳥取・熊本の地震の被災地も含め東京の人達が都合良く「被災者の気持ちが分からないのか」と代弁する団体等がありますが、そいう都合の良い「忖度」をこの6年散々見せられ、利用されたんですよ。

 東京では終わったと思っている方も多いそうですが、それは首都圏の再開発にリソースが割かれているからということを理解してもらいたいです。被災地がサボっているというのは勘違いですのでやめて貰いたいです。

 今年は復興公営住宅も殆どが建設されますがそれでも入居率は悪いですし、建設予定で造成した土地も再建を断念したりで、空き地が目立っていますし、様々な要因で遅れたため、土地の取得のためだけに仮設に残っていると思われます。
 みなし仮設に居る方達も含め医療費無料化が続いています。民進党共産党によるものではありますが、これは事実上の県立病院対策でもありますが、それにより被災者は生活保護相当の扱いを継続していると言うことでもあります。生活保護と違い所得の把握をしないため、貯金が随分たまったと言う声もあるようです。そのため被災地の住民からもあまりよく思われていないです。これが住民対立へと向かうことになるんでしょう。
 県立病院以外の民間病院も恩恵は受けていますが、昨年から患者数が減ったということなので、転換点に来たのかと感じる出来事です。
 生活保護相当の扱いを受けた方達が、そのまま生活保護へ向かうのか、その際の所得管理等の把握のためマイナンバーが機能するかどうかということも含めいろいろと転換する動きを感じる6年と約1ヶ月です。

ご訪問の方へ

 どのような理由からか存じませんが、あまり良い趣味ではないと思います。このようなご訪問が有ったので、書くのを止めております。6年目にについても書こうとしましたところ、こちらだけではなく、ツィッターのログインまでするなど悪化の一途をたどっているようです。どのような手段を用いて知り得たかは問いませんが、自粛して頂ければ幸いに存じます。

追記

3/29の福島県 いわき市の方が全て同一人物とは思いません。こちらとしてもパスワード変更をせずに、ログインして何をしたいのか様子を見ていたというのもあります。今回の件で流石に変更しましたが、はてなのパスワード管理が甘いのか、自分のパスワード設定が甘かったのか、いずれにしても私の勉強不足からこのようにログインされたのだと思っています。今後は、他のはてなユーザー等へのログインも含めこのようなご活動は自粛されて頂くのが良いと思います。

リフレ派のルーツ

トランプ主義のグローバルなルーツ―― ネオリベラリズムからネオナショナリズムへ
マーク・ブリス ブラウン大学教授(政治経済学)

 約30年前に欧米ではネオリベラリズム政策が導入され、経済政策の目標はそれまでの完全雇用から物価の安定へと見直された。生産性は上昇したが、収益はすべて資本側へと流れ込むようになった。労働組合は粉砕され、労働者が賃金引き上げを求める力も、それを抑え込む法律と生産のグローバル化によって抑えこまれた。だが、かつて完全雇用をターゲットにしてインフレが起きたように、物価の安定を政策ターゲットに据えたことで、今度はデフレがニューノーマルになってしまった。金利の融資が提供された結果、危機を経たアメリカの家計債務は12兆2500億ドルにも達した。反インフレの秩序を設計した伝統的な中道左派と右派の政党は政治的に糾弾され、反債権者・親債務者連合が組織された。これを反乱的な左派・右派の政党が取り込んだ。これが現実に起きたことだ。・・・

 ユダヤ金融陰謀論の主、闇の世界政府とも揶揄されるところが、こういう記事を配信するのも、時代の変遷を感じます。「ネオリベラリズム政策=物価の安定」という「インフレ目標」そのものが、ネオリベラリズム政策であると断じるのもなかなか無い事です。
 この指摘はリフレ派による「デフレは貨幣現象」を完全に否定している事が興味深い点でもあります。そのためリフレ派による昨今のインフレ目標から雇用改善が成果であると言う話も、ユダヤ金融側から「デフレはインフレ目標のせいである」と強烈に指摘されるということから、方針転換せざるを得ないと言うことでしょう。
 「反債権者・親債務者連合」による「クニノシャッキンガー」「構造改革ガー」「既得権益ガー」なとが、ネオリベラリズム政策そのものであり、「デフレがニューノーマルになってしまった」という日本がネオリベラリズムを信奉し続けた「失われた20年」の原因は「貨幣現象」ではなく「ネオリベラリズム」そのものが原因であるというのも強烈ですね。

ふくろうおやじ‏@sunafukin99
よく考えてみるとアベノミクス以後いまやリフレ派が日本の経済政策のヘゲモニー握ってると考えていいと思うのに、いつまでも財務省利権の壁ガーとか消費増税のせいでとか言ってる人がいるのはかなり奇異に見える。

犬吠埼カヲル‏@inubou_cfs
犬吠埼カヲルさんがふくろうおやじをリツイートしました

思うような結果が出ないことについて、クロトンひとりに責任を押し付けようとしてるように見える。上武大教授とかは特に。

ふくろうおやじ‏@sunafukin99
リフレから新自由主義成分を抜いたらうまくいくかもしれない。なぜかそれだけは嫌がるけどね彼ら。

ふくろうおやじ‏@sunafukin99
たぶん新自由主義が主たる政策であり、リフレ政策はそれをサポートするだけの補助的な役割しかなかったというのが正確な認識なのかもしれない。わしらがあべこべに考えていた可能性がある。

あけまして、おめでとうございます。

  今年は復興公営住宅が殆ど完成しますが、入居者は7割を超えないという現実にどのように向き合っていくのか試される年に成ります。東京商工リサーチ等は、住宅建設が増加すると見ていますが、期待はずれのほうが大きいとみています。また、グループ補助金での「共同事業」の破綻も顕在化するころだろうと思います。殆ど会合すら開かない、開いてもお茶会のような程度になっているのですから、多くの国民から頂いた税金の使途に対しては厳しい動きが強まってくることでしょう。

 そういうなかで、震災復興関係の年末年始休暇は、ゼネコン系では12月30日から1月8日または9日までが多いようです。地元は1月5日までと「働き方」によって違いがあります。
 月給制の連合組合員であるゼネコン系正社員(日本型雇用契約)はこのような休日の多いことに賃金が左右され難い構造になっているのと違い、地方や下請専門業者は、日本型雇用契約と言っても日給月給の非正規雇用と変わらない変動する賃金形態になっているからです。でも「正規雇用」なんですよ。正規雇用とは「無期雇用」「直接雇用」「フルタイム雇用」と三つの条件を満たすことなんです。賃金の形態はあまり関係がないのです。
 正社員の副業を認める動きは以前書いた「ミニジョブ」と同じ動きと言えるでしょう。ドイツでの経過では、結局このような「副業(ミニジョブ)」ができるのは、正規雇用の人達ということでした。「同一労働同一賃金」「働き方改革」は、片方では英国、ドイツの事例を織り交ぜながらで、日本的価値観は無くなっていく方向が強まっているのは残念なことです。

 多くの人は本日が「仕事始め」ですから、なんにせよ、良い年でありたいと願います。

通貨はタダなのか

 マシナリさんの再分配の高コストな構造を拝読しながら、以前読んだ本から記録として抜粋します。

 貨幣という謎―金(きん)と日銀券とビットコイン (NHK出版新書 435)著者 西部 忠

序  章 貨幣という謎――貨幣がわかれば経済がわかる
第一章 お金は「もの」なのか「こと」なのか――貨幣と市場を再考する
第二章 「観念の自己実現」としての貨幣――日銀券とビットコインは何が違うのか第三章 貨幣につきまとう病――バブルとお金の関係
第四章 なぜ資本主義は不安定になるのか――ハイパーインフレと投機を考える
終  章 資本主義の危機と貨幣の「質」――どのお金が選ばれ、生き残るのか

 著者は通貨(貨幣)を「情報の伝達」と捉えています。
 お金の宗教的・心理的な機能(P28)
  

お金には、社会的責務を返済するという「祓い」の役割があるわけです。

 また、 

「互酬」わかりやすく言えば「相互扶助」あるいは「結(ゆい)」を含んでいます。
 「市場」の世界では世間への贖罪を感じることはなく、むしろ腐れきった人間関係を交換関係として断ち切るため「市場」の世界の拡大によって「互酬」の世界を相対的に縮小している時代である。

 とも設定しています。

 4 貨幣生成の原理 貨幣は言葉と同じ?(P65)

 「欲望の二重の一致」のための「何か」が貨幣です。
 次なる「交換」を予感させる「販売可能性」があるもの「貨幣」への進化から「貨幣とは、貨幣として使われるから貨幣である」という循環関係の形成が「貨幣の正体」なのです。

 2「裸の王様」からお金を考える(P103)

 日本銀行券は不換紙幣ですから、なんらの有価物にも兌換されません。また、日本銀行券は財務省印刷局で印刷されますが、一万円札の製造費用は20円足らずですから、その実質価値は殆ど無いに等しいと言えるでしょう。このような物としてはわずかの価値しか体現しない不換紙幣がなぜ一万円として龍杖するのでしょう。

 これを「観念の自己実現」=みんなが思うこと。と、しています。

 民衆「何も見えない」「あっ、あの王様ね裸だ」。
 
 でも王様は行進を止めません。何故でしょう。

 王様は、後進を続けることで「王権」を守ったということです。

 慣習の自己実現(P113)

 「日本銀行法」には、「日本銀行が発行する銀行券は法貨として無制限に通用する」と書かれています。日本銀行券は国の法律が通用力を保証したれっきとした「法貨」です。それは国家権力の後ろ盾を持つ王様のように偉い存在と言えます。日本国内で一万円を差し出され、それを貨幣でないただの紙切れだから受け取らないというならば、法律違反で罰せられるかもしれません。では、法的強制力があるから人は紙幣を受け取るのでしょうか。

 大臣や民衆が「王様は裸だ」と思っても国に出さなかったのは、単に王様の権力を恐れたからではなく、そうすることが自分にとっても得だったからです。これと同じく
日本銀行券が現実に流通しているならば、たとえそれ自身に何の価値も無く、また、それを日本銀行の窓口に持っていっても金貨などのそれ自体に価値のある物(本位貨幣)に交換して貰えないにしても、日本銀行券を受け取ることの利益があるはずです。

 「慣習の自己実現」=利益とは社会の安定的な秩序を求めることである。


 予想の自己実現(P117) 

 受け取った一万円札がたとえ紙切れでも、未来において次の人がそれを一万円として受け取ってくれると予想できるならば、自分がそれを受け取るのは理にかなっている。たとえそれがババでも次の人に渡せるならば、何の損にもならないからだ。もし、次の人も自分と同じように合理的に考えるならば、やはり日本銀行券を受け取ってもよいと考えるだろう。そしてまた、次の次の人も、次の次の次の人も同じように考える筈だ。これが無限に続くならば、みんなが受け取ってもよいと考えるだろう。だから、自分も受け取ってよい。

 
「観念の自己実現」「慣習の自己実現」「予想の自己実現」により、「信用創造」により生み出された日本銀行券は債権と債務の二面性を持ちながら連続(永続)性を求められるということになります。政府と日銀による最初の「信用創造」による「日銀券発行」により、財源としての増税が必要が無いという考えを持つ方達がいます。マシナリさんが指摘する「再分配の高コストな構造」は、信用創造の永続性を担保するためには、公的セクターそのものが利用することそしてそれをまた民間セクターへ送り返す事にコストはかかるのは、当然と考えるのです。
 とても自然な流れだと思います。

5 貨幣の「情報化」は何を意味するのか(P148)
 貨幣の二つの流れ:情報化と信用貨幣化
 
 貨幣を歴史的な貨幣(素材)から電子化という「脱物化」のなかで、貨幣も本位貨幣等から「信用貨幣化」へと変化した。その「信用貨幣」とは

 つまり、金や金貨のように素材そのものが価値を持つ「本位貨幣」から、負債の存在を証明し、その返済を約束した「信用貨幣」へと変化したのです。しかも、債務証書である貨幣が兌換性から不換制へと移行したことで、負債が返済義務のない有名無実のものになりました。

 「信用創造」で生み出された「日本銀行券(負債)」は、永続性を得たことで「返済義務」が無くなったわけではないが、国家が消滅しない限り「返済義務が有名無実になった」。この流れで「永久国債」とかが出てくるわけです。統合政府理論で債権債務が対消滅もしていなから、B/Sには計上され続けることにはなります。それが「バランスシート拡大論」や「通貨(国債膨張政策)」へと繋がっていくのです。でもリフレ派は、国債を発行すると民間の投資資金を奪うことで「民間投資がクラウディングアウト」するという飯田泰之の理論に乗っかっていましたから、国債=通貨を膨張させる気が無かったと言うことになるのです。リフレ政策とはなかなか難しいものですね。


 信用貨幣と信用創造(P149)

 「現金通貨」である日本銀行券と日本国政府が発行する補助通貨のほかに別の通貨が存在します。それは、

 もう一つは、私たちが銀行の口座に持っている残高、つまり「預金通貨」です。預金通貨は現金通貨のような紙や金属という形ょ取らず、通帳の上に印刷されたり、コンピュータ上に記録されたりする単なる数字にすぎません。預金通貨は預金者が民間銀行に預けている預金のうち、要求すれば直ちに払い戻される普通預金当座預金などです。預金通貨をこれらの口座に預金すれば預金通貨になり、預金通貨を払い出せば現金通貨に成ります。

 国債残高と個人の預貯金残高を比較して、「クニノシャッキンガー」というのがありますが、最初の信用創造で生み出されるマネー(現金通貨)と個人の預貯金は同じ性質のものではありません。銀行から払出して「預金通貨」から「現金通貨」への交換量を指し示すものとなります。

その一方で、民間銀行はこうした要求払預金の一部を支払いのために準備しながら、企業や個人への貸付を行うことによって、「ハイパワードマネー」(現金と準備預金の合計)の何倍もの預金通貨を創り出すこともできます。これが「信用創造」です。

 国の借金より「民間(企業・個人)の借金」である「信用創造」がどの程度の規模なのかということを見るべきでしょう。

 ある貨幣がなくなつても必ず他の貨幣が現れる(P209)

 ハイパーインフレーションは、貨幣がある種の仮想現実であることを私たちに教えてくれます。しかし、それにより、私たちは夢から覚めてうつつに戻るのではなく、一つの夢うつつから別の夢うつつに移行するにすぎません。バブルもまたある種の仮想現実ですが、たとえそれが弾けても、私たちは繰り返し別の仮想現実の中にいることを知るべきです。

リフレ派大好き「歳入庁」

 リフレ派は「財務省を解体して歳入庁を創る」という話をしますが、歳入庁で現行の徴収漏れを無くすんだそうです。それはリフレ派が主張する「可処分所得ガー」という、消費税増税社会保険料増によって、可処分所得が減り民間需要が落ちると言うものです。
 歳入庁によって徴収される行為そのものは、リフレ派の主張する「可処分所得ガー」と変わらないものです。片方では「税収が落ち込む」と言い、「片方では税収が増える」と言います。自分が対象に成らないものは増えるというだけの半径2m感覚でしかありません。
 歳入庁は「国税庁+社会保険業務」だけではないからです。米国の内国歳入庁の事例を見てみましょう。

個人請負労働者の誤分類を正して雇用労働者に戻す試み―連邦労働省と住宅都市開発省の提携ほか

個人請負に向かう流れを食い止める

連邦労働省は従来から個人請負労働を問題視してきた。残業代や労働時間といった厚生労働基準法による規制や、年金、健康保険などの社会保障負担を逃れるために、事業主が雇用している労働者の区分を個人請負に切り替えることが横行しているからだ。労働者の労働条件だけでなく、税収の低下や国の社会保障負担の増加にもつながりかねない。

連邦労働省は、実質的には雇用労働者と変わらないにもかかわらず、個人請負状態にあることを「誤分類(Miss-Classification)」として、連邦税の徴収を行う内国歳入庁(IRS)と連携するなどして、取り締まってきた。

 内国歳入庁は、単なる徴税機能限定の存在ではありません。このように労働者保護を通じた活動にも関わる部門です。

建設産業では、日雇い労働者や機械工を中心とした「誤分類」の増加が深刻化している。連邦政府が行う建設事業に従事する労働者の労働条件は、ニューディール政策期につくられたデービス・ベーコン法により、地域における一般的な労働者の水準を上回らなければならない。この規制を回避して、人件費コストを低減するために、「誤分類」を利用する企業が増えているのだ。

デービス・ベーコン法は、本来は労働者と使用者に委ねられる労働条件交渉に政府が介入するものであるため、労働者が使用者に直接に訴えかけることが認められていない。そのため、「誤分類」を解消するためには、政府が乗り出さざるを得ない。

 日本の消費税でも共産党の「輸出戻し税ガー」や「労務費を外注費にすれば、消費税を逃れる」のような馬鹿な組織ではありません。共産党の反対する消費税の税逃れに対する対応は、労働者保護とも密接に関係しているのです。単純に反対をするのは、日本国内の国税庁厚労省が連携する機会を奪う行為と同じなわけです。

「誤分類」による賃金未払いのケース

8月18日、ルイジアナ州左官業ブラウンロウ・プラスタリング株式会社は、147人の労働者の未払い残業代36万5000ドルの支払いに合意した。

同社は、多くの個人請負労働者や下請け企業を利用して事業を展開している。これら個人請負や下請け企業をみつけだし、契約関係を構築する業務は、レーバー・ブローカーと呼ぶ仲介者に委託していた。

このブローカーが請負なのか、雇用なのかを連邦労働省賃金時間局が問題視し、捜査の結果、請負労働者を「誤分類」と認定した。週40時間を超える部分が残業代の対象になったが、それは、ブローカーの報酬が時間当たりの固定単価で支払われていたからだった。

 リフレ派や共産党の「消費税増税ガー」という批判と「歳入庁」ということがまったく現実の組織を理解していないということです。ただし、日本の場合は、暗黒卿の「歳入庁18兆円」となるため、消費税5%増税の13.5兆円よりも多い、大増税に成ります。 

 連邦労働省は「誤分類」の解消による労働者の権利擁護と企業に対する法令順守を最優先順位においており、行政横断的なパートナーシップの構築や、不正をはたらく企業に対する取り締まりを強化している。

 リフレ派は「リフレ政策は左派の政策」と主張しますが、単なる徴税強化としての「歳入庁」でしかなく、他の政府機関との連携を行うのです。「闇の権力」とはほど遠りものです。



労働者の約半数が時給15ドル以下―民間シンクタンク報告

5830万人が時給15ドル以下

貧困問題解消を目的とする国際共同NPOオックスファムアメリカとリベラル系シンクタンク、経済政策研究所は、アメリカの労働者の多くが低賃金、有給の病気休暇の不備、残業代未払いの状態にあるとする報告書を発表した。

2015年の労働者の43.7%、5830万人が時給15ドル以下で働いているだけでなく、4170万人が時給12ドル以下、年収にして2万5000ドル以下の状態にあるとする。この金額は連邦政府が提示する4人世帯の貧困ラインをわずかに上回るにすぎない。

低賃金労働者とその家族は何らかの生活保護を受けていることが多いが、もし連邦最低賃金を現行の7.25ドルから12ドルに引き上げれば、こうした生活保護に費やす連邦予算を170億ドル削減できるとしている。

 時給1500円の最低賃金運動の本質は「連邦予算削減をするためには民間企業が負担するべき」ということになります。日本でも共産党系がやっていますが、本質は一緒です。
 

5100万人が有給の病気休暇なし

公共部門で雇用される労働者の86%に有給の病気休暇がある一方で、民間企業で雇用される労働者の46%に有給の病気休暇がない。

有給病気休暇を義務付けている州は全米で5つに留まっており、5100万人以上の労働者に有給の病気休暇がない。その内訳をみると、賃金の高低により差が現れる。低賃金労働者の80.6%が有給の病気休暇をもたないのに対して、比較的に賃金の高い労働者では21.4%に留まっている。

また、無給の病気もしくは看護休暇を低賃賃金労働者が取得した場合、七人に一人が職を失う事態に直面している。これに対し、たとえばインフルエンザに疾患した状態で勤務し、同僚や顧客に感染が広がることで大きな経済損失を招いており、その額が年間1600億ドルにのぼっているとし、有給の病気休暇に関する法制化の必要性を指摘している。

 日本でも有給休暇の取得拡大を言われますが、米国のジョブ型雇用では「有給の病気休暇は無い」ということです。日本でもインフルエンザへ感染した場合の有休取得を奨励していますが、米国の雇用現場は日本以上に劣悪なのが現実なようです。傷病手当金の様な保証もないということですね。社会保険料増を批判されますが、何でも米国的になれば良いと言うものではないことがわかります。

残業代支給対象拡大のための政策を指示

報告書は、低賃金労働者の状況を改善するために、残業代支給の重要性についてもとりあげている。ギャラップ社が2014年に報告した調査結果をあげ、労働者の労働時間が平均週47時間であり、そのうちの約4割が週50時間以上働いているとする。この数字は、公正労働基準法(FLSA)が定める残業代支給対象となる週40時間を超えている。しかし、その多くが公正労働基準法の行政規則が定めるホワイトカラー・イグザンプションにより、残業代支給対象から除外されている。

残業代支給対象者を拡大し、低賃金にとどまる労働者の賃金を増やすため、連邦労働省は2016年12月にFLSAの行政規則改正を計画している。いまだ多くの大企業や共和党が改正の見直しや延期を求めているなか、報告書はすみやかない改正の実施を訴えている。

 米国歳入庁の活動は、残業代支給対象労働者を拡大し、歳入をも拡大する。政府支出を削減するためには民間支出を拡大させる政策であり、そのための役割をもつということですね。


外国人の流入拡大に抑制策、一部で労働力不足への影響も

4.現在、最低賃金制度を歳入関税庁、労働者派遣事業をビジネス・イノベーション・技能省のそれぞれ担当部門が監督しているが、ギャングマスター制度の監督機関(Gangmasters Lisencing Authority)の権限拡充によりこれらの機能の統合をはかる方針とみられる

 リフレ派の尊敬する英国リフレの「歳入関税庁」は最低賃金制度を監督しています。
 リフレ派は「雇用は日本人だけのものではない」と、移民政策を進める立場であります。ですが、外国人労働者流入抑制のために「歳入関税庁」は一部機能を持っているようです。リフレ派が徴税機能の強化しか見ずに、他の機能はまったく考えていないことが良く分る事例です。ただ、英国リフレは飯田泰之が大好きな「課税ベース拡大(増税)」の実施も行った国です。増税すると永久に不況になるという話でありますが、飯田泰之は「増税」を求めている人ですが、また、地方に対しては緊縮財政の切捨て論者でもあります。教え子は緊縮財政の思考の型を詰め込まれ社会に旅立っていると思うと胸が熱くなります。


在宅介護労働者、最低賃金違反で雇用主を提訴

訪問先間の移動は労働時間

介護業は、国内でも代表的な低賃金業種の一つで、これまでも最低賃金制度違反の横行が指摘されてきた。監督機関である歳入関税庁(HMRC)が国内の主要介護事業者を対象に実施した調査では、対象となった事業者(注1)の約半数が最低賃金違反を行っていたとされる。また、シンクタンクのResolution Foundationは、介護労働者の1割強(16万人)がこうした違反の対象となっており、未払い賃金の総額は1億3000万ポンド(1人当たり815ポンド)にものぼるとみている(注2)。

 英国リフレを支える歳入関税庁は、リフレ派の「おちんぎん(低賃金)を上げたら民間投資がクラウディングアウト」に真っ向から立ち向かう立場です。
 リフレ派の考える「徴税強化」部門というより、財務省厚生労働省の全ての部門が合体した強大な組織です。行政コストが減るとかという馬鹿な考えなどおきようがない組織と言う事ですね。


配偶者控除より「歳入庁」を

結局、女性活躍とは名ばかりに「パート減税の拡大」で幕引きだろう。「もっと働き、もっと税金や保険料を納めろ」というだけだ。それなら国税庁日本年金機構を統合し歳入庁をつくる方がよほど効果がある。権益を失う財務省は猛反対だろうが。 (久原穏)

 素晴らしいほどのネオリベ感覚を炸裂する東京新聞の論説です。つまり「歳入庁」は、納税をしていない人達、負担が十分ではないと人達限定で徴税強化する組織としか見ていないと言う事です。指摘するような「国税庁日本年金機構を統合」では、所得税及び住民税の増税になり暗黒卿の主張する「歳入庁18兆円」になります。「社会保険料の経費否認」は最大の増税になるからです。権益を失うのは国民ですよ。厚労省所管であるからこそ、「経費」として認めさせているのに、それが無くなってしまうわけですから、ネオリベ新聞は怖いです。

 日本のネオリベが求める構造改革は米英の歳入庁とは似て非なるものです。自分達が気に入らない者達からの徴税を強化して、シバキたいだけなんです。」