付加価値税とアベノミクス

 続きにあたり、本来これは社内用の説明資料として整理していたもので、外部に出すつもりはありませんでした。リフレ派経済学者と経済評論家等を始めとする説明があまりにも酷すぎるため、付加価値税(消費税)がどのような影響を与え、行動を促しているかについて参考として貰うためにブログに上げています。整理がついてない箇所や錯誤がある部分についてはご勘弁願いたいと思います。

 財務省が平成29年7月5日発表した2016年度の一般会計決算概要によると、国税収入は55兆4686億円となり、前年度比8168億円減少した。税収が前年度を下回ったのはリーマン・ショック後の09年度以来7年ぶりで、第2次安倍政権発足後では初めて。1月成立の補正予算時の見積もりも下回り、当初予算から約2兆円下振れした。円高や株安などの影響で、基幹3税(所得税法人税、消費税)がそろって減収となった。(2017/07/05-19:30)

という、記事が出て、「経済成長頼みのアベノミクス行き詰る」で批判が高まり、支持率も低迷の状態となっています。基幹3税がここまで見事に下がることは予想していませんでしたが、歳入が下がることをしていたのがアベノミクスだと言える部分もあるので、様々な行動が結実したことによるものと考えられます。

○法律で付加価値税減税を推進する世界的に珍しい安倍政権

 消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法(平成二十五年法律第四十一号)という法律があります。公正取引委員会中小企業庁消費者庁財務省内閣府を含め霞ヶ関の殆どの官庁が関わっている法律です。
 これが減税と何の関係があると言いますと「付加価値税(消費税)」なんですね。

 財務省と言えばリフレ派を始めとして、大変忌み嫌われる官庁の代表格ですが、その財務省付加価値税(消費税)の減税を推進し、歳入減に取組んでいるのです。財務省は一円たりとも税収を確保するため闇の権力を持っているとされていますが、実態はさほどでもないことになります。

 この法律は、適正な価格転嫁を促すことを謳っていまが、結果として減税となるのです。

 付加価値税を効果的に減らすのは、課税費用を増やすことです。価格交渉後に値切ったりすることや優越的地位の乱用で不当に安い価格を強いるコストカットは、企業会計「収益−費用」だけをみていればそうなりますが、下請並びに資材供給業者への適正価格での支払いを減らす行為は「付加価値税(消費税)増税」となり、適正価格での支払を行う行為は「付加価値税(消費税)減税」となるのです。

 「消費税増税で下請(中小零細企業)が困窮する」という話とは、真逆ですね。また、「消費税増税で負担が増えた」というのも、コストカット要求の強い企業にとっては「収益−費用」で損したということになり、デフレ脱却することから見た場合、誉められたものではありません。

 アベノミクスにおける財政政策での付加価値税の減税措置がどのような政策によって動いているのかを読み取るのは中々困難です。デフレ脱却の為にも、適切なコストを支払いさせつつ、減税の恩恵を享受させるという難しいものだからです。霞が関の省庁職員の能力が高いからこそ実行できるといえるでしょう。ただ、新自由主義的なコストカッター手法を売り文句にしているコンサル等にとっては、あまり歓迎されるべきものではないのも事実なので、アベノミクス批判が出てくるということになります。

 アベノミクス批判とは、かなり捻じ曲がったものが多い印象があり、単純な批判に乗るようでは、現実的な対応を失う恐れがあることを知ることが必要です。


※追記
 
 付加価値税を減税するには、課税仕入れを適切な価格で計上する(支払う)ことが一番です。その結果、中小零細企業の財務状況は好転することになります。今までできなかった、「待遇改善」「賃上げ」等ができることに成りますね。大企業に対する適正価格の支払いを法によって強制することで、最終的に物価上昇圧力にもなっていることもわかります。付加価値税を適切に納付せず、コストカットによって利益を増やし内部留保が積みあがる構造を抑制するには、付加価値税の節税となる、を促すことで経済循環を改善することになるのです。

 逆に「付加価値税と配当と株主」の「物言う株主」にとっては、あまり面白くないこととなります。それは賃金を抑制し、コストカットによって得た「剰余」を配当へとできなくなるからです。
 アベノミクスの財政政策は、その立場によって見方がもの凄く変わる政策であるため、賛同・批判側にも利がある為、混同しやすくその評価を得るのが大変難しい政策なのです。

 付加価値税(消費税)の価格転嫁がスムーズに進むことは、消費税の税収を下げます。また、法人税も下げます。今回の統計での動きは、アベノミクスの財政政策が浸透したことにより、消費税・法人税の税収が下がるケースと言えるでしょう。所得税については、年功型賃金での年齢構成の変化がかなり進んでいる事(付加価値税の節税対策でもある)が考えられます。それだけ大企業の雇用対策が進んでいる事に成りますから、このまま進めば、中小零細企業の雇用環境もかまり変化することになるでしょう。ただそれは、「都民ファースト」や「コンクリートから人へ」を諦めない新自由主義者にとっては、許しがたいこととなり、反動から政権に対する攻撃が激化することになるのは、ある意味自然な動きでもあり、日本におけるネオリベへの帰依が如何に深刻なものであるかを物語っているのです。