付加価値税とアベノミクス その3

○「特区」の負担は誰か

 小泉構造改革以降、様々な特区が創設されました。特区は「規制緩和」だけではなく、法人税減税等の財政政策がセットでついています。そのため、法人税減税等による税収不足が特区設置自治体及び国で生じることになりますが、その補てんが「付加価値税(消費税))」で行われています。東日本大震災の「復興特区」での所得税・住民税・固定資産税の減税措置の財源は「復興特別所得税」「復興特別住民税」によって、補てんされています。

 復興特区の事例で語りますが、個人の資産形成へ直接補助金をぶち込むわけにはいかない為、間接的な団体を経由するのですが、補助金は収益計上し相殺するものが無ければ、法人税の課税所得になります。それを逃れるための手法が「復興特区」だからです。

 建物のなどの固定資産は補助金額と同額で相殺する圧縮記帳と呼ばれる「減価償却」を行いますが、多額の減価償却費の計上は翌期からの減価償却額を下げることになりますから、法人税の対象となる課税所得は増えることになります。事業継続をすることで、法人税で投入された補助金は回収されていることになります。それを抑制するのが特区による法人税免除となります。そうすると、国・自治体は税金を回収することが出来ません。次年度の税収は減ることになりますね。

 それを防ぐために付加価値税のマクロ的な課税科目が必要となるのです。ネオリベやリフレ派は、「減価償却の一括償却」を唱えますが、法人税の課税からすれば、翌期から法人税の税収を増やす行為ですから、同時に「法人税減税」を唱えることになります。そうしないと、利益が減り株主への配当も減るということだからです。分かり易い思考だと言えます。そのような要求を無条件でかなえては、翌期の歳入減歳出減の緊縮財政にならない為に、財源を確保することになります。

 特区による法人税減税等の減税措置をすればするほど、付加価値税(消費税)に頼らざるを得ないのです。納税を免れたと思っている企業も含め付加価値税(消費税)でみんな負担し合う必要が理解できることと思います。


※追記
アベノミクスでの生産性向上設備投資促進税制(生産性向上設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除)についても同様のことが言えます。これはネオリベやリフレ派が求めていた「一括償却」そのものといっても良い仕組みですが、一括償却時の決算では、法人税減ですが消費税は増となります。マクロ的課税科目が成せることだからです。翌期以降は、減価償却額が無くなりますから、利益が増える事で、法人税は増となり、消費税も増となることになり、国としてはあまり損はしていないことになります。ただ、設備投資を促す事で、固定資産税の税収が増える市区町村の財政に貢献することとなり、国はその目的を達成していると言えます。このように税収の経路を変化させながら、アベノミクスの財政政策は地方にも波及していることが伺えるのです。