付加価値税の課税構造

 付加価値税の課税構造は所得税法人税と違い見えにくくなっています。一番の違いは、「課税所得」ですね。
 勤労者世帯の大多数は、この年末までに「年末調整」を行っています。会社から年末調整の明細書を交付されても中身を見ない人が大半を占めますが、所得税がどのように決定するかを知るまたとない機会ですので、内容を確認することを勧めます。

 年末調整や確定申告で費用として認められる金額で最大のものは「社会保険料控除」です。社会保険料が上がって、可処分所得が減ったと言う方達が居ますが、そういう方達は標準報酬月額が上がったことや前年の所得が賞与や一時所得等の別所得があったため「住民税」が上がったことによって減少していることが大半の理由です。賞与が無い非正規労働者の話ではないです。正社員が優遇されているからこその問題とも言えますね。また、新幹線通勤等の交通費が多い方は標準報酬月額が上がる為、社会保険料が上がりやすい傾向があります。給与が減ったといいますが、地方では新幹線通勤など一部の大企業正社員だけが受けてるだけですので、殆ど無関係な話になります。
 不満を述べる方達は結構良い待遇と所得を得ている方達と見るべきでしょう。

 法人税は決算による利益に対し、損金と益金という加算と減算によって課税所得が算出されます。メディアは当期利益がこれぐらいあるのに税金は少ないと言う報道をしがちですが、それは法人税の課税構造を伝えないで意図的に錯覚させる報道と言えますので、悪意が感じられますね。当期利益を課税所得にするというような方向になるため、所得税社会保険料控除や各種控除、生命保険料等の控除も廃止しないと整合性が付かなくなります。
 これがいわゆる「課税ベース拡大」と言われるものです。

 リフレ派の経済学者である飯田泰之は、この提唱者で大増税派の一人でもありますが、経済学者が口を開けば「減税」しか言わないことに比べれば、まだマシなのかもしれませんが、消費税増税には反対しています。消費税増税に反対するのは「課税ベース拡大」論と衝突することがあげられるからです。

簿記四級程度での損益計算書はこんな感じですかね。
大雑把な取扱いで、勘定科目が全く分からない。これを簿記三級程度と称してリフレ派が一万円札の製造原価25円から30円が分るなどと言うのですが、製造原価は簿記二級以上ですので、こんな損益計算書を書いたら試験には通りません。それでも基本は基本なので、左右が均衡することだけこれで押さえておきましょう。

 消費税会計と言うのはありませんが、便宜的に書いています。本来はこれは社内だけの説明用ですのでこうしてブログに上げることは考えていませんでしたから、まあしょうがないですね。あれだけ書いてこれを出さないのもダメなんだろうから。

 消費税は「仕入税額控除」でどうしても「課税売上」と「課税費用」がクローズアップします。これが本来の課税科目から目を逸らす役目であることは、前回までの付加価値税で説明いたしました。
 消費税のマクロ的課税科目に向かう前に、消費税は国内取引課税である事が大前提であることを抑えてください。そのため、国内取引以外は「消費税を還付」いたします。これが共産党等から批判がある「輸出戻し税ガー」と言われるものです。還付するのは何故かは後で説明します。

 国内取引課税であるため、利子・配当に対しては課税しません。これは、海外子会社(海外市場)からの利益移転である為です。日本だけでなく世界各国は「租税条約」を締結し、配当に対し0%課税を実施して国外に還流することを認め合っています。これが、消費税では二重課税回避措置として当期利益(剰余価値)と相殺し合います。日本国内取引が赤字である企業にとっては、逆にもう一つの課税である労務費等(労働価値)を減額するのです。所得税法人税での費用計上を認めることと同様の考えです。図はあくまで国内取引でも利益が出ている事としていますが、期間会計ではそういう事もおきるのです。
 そういう前提を踏まえ、法人税所得税の課税構造の違いが見てみましょう。

 法人税の課税所得の元となる利益は、国内取引と海外取引と配当等によって構成されています。国内取引でも日本国内に各支店を置く大企業は東京本社に売上と利益を集約しますから、法人税は東京に大部分が落ちます。東京が地方を搾取している明確な証しでもあります。今まではこれを国が再分配するために課税強化するのが一般的でしたが、企業のグローバル化が国内だけの問題ではなくしてしまったのです。

 OECD等は、発展途上国等から搾取的利益移転を抑制する措置として「法人税の税率逓減」を各国に要請しているのです。そのため「法人税増税」は世界的には逆行する「帝国主義」「植民地支配的搾取」となります。立憲民主党が掲げるのは旧世紀への回帰運動とも言えるわけで、なかなか難しい事です。日本だけ搾取的課税強化に向かう場合、憲法九条を掲げているから戦争放棄だは通じません。事実上の経済戦争の宣戦布告となります。日本の「植民地的搾取」支配を受けるかどうかという内政への徹底した干渉となる「自国ファースト」だからです。なかなか難しいですね。海外利益を自国のために使うななんですから。

 逆に「法人税ゼロ税率」を主張するリフレ派を見てみましょう。
 金融政策により円安の恩恵は海外子会社からの利益と配当が大きく増加したと言うことです。そうなるとこれを株主資本主義が黙って見過ごすわけにはいきません。そうなると法人税減税を主張します。ただいきなり下げては、歳入が減り歳出が減ることで再分配機能は著しく低下します。まして「ゼロ税率」は、株主への配当増を目的としてるため、海外の利益と配当が金融政策の効果として恩恵を独り占めすることに成りますね。国は再分配縮小、辛うじて配当所得への課税を20%にしていますが、金融セクターは元の税率である10%に戻せといっており、更なる再分配縮小を求められることになるのです。
 法人税ゼロ税率って、おくめんもなく良く言えるとは思います。まあ、それがリフレ派と言うものだからしょうがないです。

 法人税増税と減税は、そのまま内部留保論へと向かうのですが、その目的が海外からの移転された利益にあるのはどちらも一緒なんです。

 消費税は国内取引課税の為、海外からの利益と配当には課税していません。
 そのため海外利益と配当が、株主配当の原資に向かい、国内利益が賃上げや待遇改善へと向かうことため、剰余価値の役割を分担することになるのです。
 法人税増税は、国際的批判を受け、法人税減税は国内再分配を弱体化する危険性を共に抱えていることかわかります。その使途を明確に分離することで、海外利益を搾取しない宣言として「法人税減税」をしつつ「消費税増税」で国が直接取り込まない宣言も同時に行うという難しい事をしているのです。不特定多数である、株主には機関投資家である各国の年金基金(労働者の資金運用)がいるための配慮でもあるわけです。間接的に労働者の年金所得へと分配されればそれは搾取ではないということを前提にしているからなんですね。
 また、消費税の還付制度は事実上は利益相当を国外へ返還していると言う見方もできるため、図で書いている海外利益はかなり縮小することに成りますので注意が必要です。

 内部留保が増えている事への批判ある意味で正しい事でもありますが、その分配の利益配分が様々な国際情勢で制約されていることへの理解が必要になります。国内だけの取引しかしていない企業の経営者や労働者には関係ない事に成りますが、国内で全て完結できない国際取引が必要不可欠な日本は避けて通れないのです。

 消費税では、国際取引での利益や配当へは課税しないため国内取引をいかに改善するかが最大の課題となります。コスト削減は消費税を増やしますので、消費税を節税するのは適切なコストと利潤の獲得が必要になりますから、過度な競争原理では国内取引が縮小しデフレに陥りやすくなるのです。そのため、消費税の課税構造から緩やかなインフレに向かうのがベターになるのです。
 適切な価格転嫁が必須となることに同意して頂かないとデフレ脱却は難しいんですね。

 消費税で役員報酬に課税しているのは、法人税の損金算入による法人税減税の影響を落とす為でもありますし、所得税累進課税を弱めたことへの対処でもあるのです。二つの課税構造に対して同時に対処する消費税の労働価値課税の一面です。
 租税公課印紙税の印紙代が変更になったことも消費税と関係がある為です。また、電子取引に対する印紙税の課税免除も消費税で対応しているからです。免除しているようでどこかで課税して調整しつつ税のフラット化を同時に行えるのが付加価値税の特徴です。
 所得税累進課税が弱くなったと見る人が多いですが、実質的には所得税の課税前に一定税率を事前課税をしているのが消費税なのです。現行の所得税率と消費税率を加算されたものが本当の所得税率とも言えるからです。そのため、高所得者は嫌がります。本当に嫌がります。それもこれも高所得者がスーツや高額な書籍等の購入費用を認める所得控除を要求したからにほかなりません。

 飯田泰之の「課税ベース拡大」を事実上は消費税が担っているためする必要が無いんです。また、上野千鶴子(おひとりさま)等のフェミが要求する控除廃止も弱めているとの見方もできるので、要求自体が意味がありません。
 低所得者に対して「逆進性」がある。これは控除が弱まることと、価格転嫁でインフレへと向かうと低所得者に負担が増えるからですが、それは基礎控除の金額を上げるか再分配を強化するかで対処可能なのです。

 消費税批判は高所得者が嫌がる課税構造であることや大きな政府になって再分配が強化されることを嫌う方達にとっては、本当に嫌われる税金なのです。
 消費税減税・廃止・反対等を言えば言うほど、私の所得は高いと暴露しているようなものなんですがね。
 ただ、海外利益と配当への課税回避によって配当増が期待できるとみる投資家にとっては、消費税は問題が無いとも言えるため、受け取る立場で好き嫌いが出やすいですね。

 そうはいっても普段、左派と称する方達は「金持ちからふんだくれ」というから、消費税でふんだくらせて頂きたいんです。よろしくお願いいたします。