付加価値税と賃金と労働者 その2

付加価値税可処分所得ガー

 「付加価値税は逆進性がある」と言われています。それは、所得税累進課税が緩やかになったことから、低所得者への課税が強くなったという批判です。
 ただ、付加価値税(消費税)のマクロ的な課税科目から見た場合の課税で、低所得者一人一人に対して課税はしていません。「役員報酬」「給料・賞与」「福利厚生費」の総額に対する課税であり、労働者に支払った後の決算時での企業課税となりますので、労働者一個人への付加価値税の課税は行われていないのです。

 リフレ派は付加価値税(消費税)で、「可処分所得が減った」と言いますが、給与支払い時に消費税は課税されていませんので、給与から税控除は出来ない。つまり、可処分所得を減らしていないのです。付加価値税率が商品及びサービスに対し「見える化」するのは、マクロ経済学での法人税等の価格転嫁額を表示する行為そのものになりますから「貨幣錯覚」でしかないと考えます。

 所得税の累進強化が緩んだ背景には付加価値税よりも、住民税への税源移譲。いわゆる「地方分権改革」があります。みなさんは毎年6月の給料から新しい住民税が徴収されます。所得税がリアルタイムで課税するのと違い、1年遅れで課税されるのが住民税です。そのため、年功型賃金による定期昇給を打ち消すような税額により可処分所得ガーが起きているのです。様々な所得を合算して申告した結果、ダブルワークの給与所得、配当所得、一時所得などにより住民税が昨年より増加してびっくりすることは良くあることなのです。
 
 また、企業業績が好調で昨年は賞与がたくさん出た労働者の皆さんの住民税は高くなっていることが多いのです。可処分所得を減らすのは住民税の方が強くなっていることが分かりますね。これが地方分権改革により国から地方への税源移譲(所得税から住民税へ)によるものだからです。年配の労働者は年末調整で還付された金額が多く年末は同僚と飲食に費やしたり、家族へ還元したりということがありましたが、今では殆んど還付はありません。それは国は預かった税金を理由があれば返還するのに対し、地方自治体は返還する能力そのものが無いからです。

 リフレ派から忌み嫌われる財務省の闇の権力「国税庁」と地方自治体の徴税部門の職員の能力も違うこともありますが、そもそも地方自治体が住民に還付する能力を備えていないからなのです。そのため、住民税の計算間違いによる返金はあっても、年末調整で住民税還付は発生しません。所得税が6割、住民税が4割という構成だった時代では、年末調整で2割が還付されていましたが、地方分権改革で所得税が4割、住民税が6割となったため還付はほぼなくなってしまいました。これも消費が減った理由の一つかも知りません。この税源移譲が所得税の累進強化を下げることとつながっていました。原因は付加価値税だけではないんです。

 では何故、付加価値税を悪者にするのかというと、住民税が高まって得する地方自治体とはどこでしょう。最大は東京23区です。それに各政令指定都市、県庁所在地が続きます。要は人口が多い市区町村ほど有利になる再分配縮小政策を行ったということです。これは衆議院選挙制度改革での1区とも連動する話でもあり、構造改革による歪みなのです。

 可処分所得ガーとは、構造改革の歪みに対するクレームのはずが、真実を知られたくない人達にとっては、付加価値税を犯人に仕立て上げて逃れるための取り組みだと私は思うのです。