付加価値税と賃金と経営者 その4

付加価値税は本当に賃金抑制なのか

 経営者の経営方針で、賃金は確かに抑制的になりましたが、所定内給与を減らすには至っていませんし、非正規雇用への転換、賃金体系の見直し、ベースアップと賞与と時間外労働の削減が主でした。現在でもその方針は変わっていませんので「時間外労働の削減」を「ワーク・ライフ・バランス」と称して付加価値税(消費税)の節税対策を推進しているのです。平成30年度(2018)に税率を8%から10%に変更することに対応するために、企業経営者がとる「時間外労働削減」の「行動」は付加価値税(消費税)の節税対策に沿ったものともいえるわけです。

 政府による賃上げ要請を含め定期昇給最低賃金引き上げ圧力は継続して行われ、所定内給与を押し上げ続けております。しかし、雇用契約の構成比率の変化(年功型賃金の賃金カーブのフラット化)やベースアップの事実上の廃止(付加価値税の上振れ抑制)を重視すると賃金を抑制していると言えます。
 
 ただ総人件費の調整として、所定内給与(固定給)を増やすために時間外手当・休日出勤手当・賞与(変動費)から振り替えているとも見て取れるのです。これは賃金の変動費を固定費(経済学では「固定費用」、会計学経営学では「固定費」)へ付け替え、長期的に一定化することで、損益分岐点を固定化することになります。固定費削減では消費者でもあり企業にとっては利害関係者への不利益は企業自身の不利益となって帰ってきます。

 それはデフレで痛いほど経験したことでもあります。EUでの労働組合によって、時間外労働(手当)削減と所定内給与への付け替えを日本企業が行う流れを「賃金抑制」と見るのは難しいと私は思います。

次回は、付加価値税(消費税)と賃金と労働者の行動について考えます。