付加価値税と賃金と経営者 その3

付加価値税を嫌う理由とその集団の思考

 この仕組みを一番嫌うのが、大学教授と金融セクターと派遣会社です。米国でもそうですが、報酬の高い社員がゴロゴロいる金融セクターにとって、高額な報酬が消費税納税額を増やしているということは我慢ならない事です(所得税累進課税が緩くなっても実質課税しているのが、付加価値税(消費税)です)。

 大学教授は報酬の他に教材や講演料等の利益を得ていますが、個人事業主・法人事業主として課税されることになります。ダブルワーク等の二つ以上の所得がある方達への課税強化というのも大事ですね。普段はリベラルぶっているのに納税して相対的貧困解消に使われるのが厭だというのは、知識労働者の知的劣化の象徴そのものとも言えます。

 派遣会社は派遣法改正により雇用契約を締結すると、いままで払わずにすんでいた消費税の納税額を支払うことになります。これはサービス産業全体の人件費割合が高い構造によるものですが、サービス産業に対する課税強化に働く仕組みであるのが、付加価値税の特徴の一つだからです。一次産業から二次産業へ。そして三次産業への転換及び拡大という経済の流れへの対処が付加価値税なのです。

 また保険会社にとっては、保険商品が法人税の節税対策として売り出しているところがほとんどですが、消費税の節税対策にはならないため付加価値税(消費税)に対する憎悪があるのです。

 そうそうリフレ派の経済学者が付加価値税(消費税)を気に入らない理由として「法定福利費」もありました。小泉構造改革で「消費税増税凍結」と絶賛するリフレ派ですが、付加価値税(消費税)の仕組みでは、「法定福利費」である社会保険料(健康保険料・年金保険料・雇用保険料)の増加は消費税の納税額を上げていることになります。社会保険料の増加は所得税・住民税減税になるのは控除の仕組みによるものですが、不課税費用であるため仮払消費税を減額しないのです。

 まして小泉構造改革による下請へのコストカットを要求し達成していればそれは、外注費(課税費用)の減少ですから、下請けいじめの代償は消費税で回収されているとも見ることができます。そのため下請けいじめをせず、外注費を適正価格で支払うことが消費税の節税だといえるのです。トヨタのやっているカイゼンはそういう意味では節税対策にはなっていませんが、それはトヨタの真意は別のところにあるからです。

 消費税が3%から5%へと上がった1997年を「消費税増税永久不況説」「消費税増税税収消滅説」の論拠としているのがリフレ派や経済学者ですが、主に効率化、雇用の流動化などの提言は「消費税に対する節税対策(賃金抑制)」ということになりますので、剰余価値(コストバフォーマンス)を高める提言を前提としていることになりますが、それでは「賃金デフレは妄言」ではなくなってしまうのです。さらにリフレ派が「供給制約ガー」のさいに使用した「おちんぎん」というのは「賃金デフレ」を肯定することになる失言で自爆です。

 ついでにリフレ派が大好きな法人税減税について述べますが、コンサルやセミナーでの税金対策の殆どは「法人税対策」ですが、付加価値税(消費税)の節税対策セミナーはありません。大企業経営者の行動は法人税対策から付加価値税対策へと変遷していることへ対応できていないのです。また、中小零細企業経営者も同様です。

 しかし、大企業は確実に対応をシフトしております。「労働分配率を高めることが法人税減税だ」と考えるのと同様に、「減価償却費を高めることが法人税減税だ」というのもあります。航空機リースやマンションリースで減価償却費を計上する手法ですが、付加価値税(消費税)では「不課税」ということで、マクロ的には課税されていることになります。
 
 法人税減税をしてもあまり効果はないということなります。つまりリフレ派の主張する「リフレ政策唯一の財政政策法人税減税」は、企業経営にとってあまり効果が無い財政政策であるのです。

 リフレ派・反リフレ派共に課税に対する考え方は違えども、「課税回避行動」は同じです。双方ともから付加価値税(消費税)は憎まれるのはこういうことからです。