社会保障の難しさ(育児年金)

自分も良くブクマさせて頂いてご参考にさせて頂いている平家さんの「育児年金」というご提案があったので、興味深く読ませて頂きました。

育児年金の提案

ところが、対になっている世代間扶養のうち、現在の公的年金制度は養老だけしか代替していません。育児・子育ての給付については、基本は所得制限のある児童手当になっています。一見すると公的扶助のように見えますが、所得制限が960万円と緩いこともあり、資産による制約もないことを考えると資力の乏しい者に給付する公的扶助とも言い切れず、かといって、資力に無関係に広く給付する一般福祉ともいえない中間的な仕組みになっています。ただ、社会保険制度ではないことは確かです。なお、額は子育ての費用を賄えるほどのものではありませんし、税で賄う制度である限り、持続的な引き上げは困難でしょう。

つまり、世代間扶養が社会化する中で、一方は社会保険、他方は公的扶助と一般福祉の混合という整合性のない仕組みになってしまっています。この結果、ちぐはぐが生じています。子供の有無の差が、老後生活に与える効果が自然なものと逆になっているのです。

 現在、高齢低所得者対策で一時的な給付金が行われますが、いつもながらの「バラマキ」批判がでています。もともとは構造改革(課税ベース拡大)による所得税・住民税増税が平成18年6月において、老年者控除の廃止及び公的年金等控除の見直しが行われたことによるものです。「老年者控除(65才以上の老人で年間所得が1,000万円以下であれば、一律50万円を所得から控除できる)」があった時代では、高齢低所得者から所得税・住民税が減免されていたため、給付する対象は少なくて済んでいたともいえます。民主党の「子ども手当」が同様の構造改革(課税ベース拡大)である「年少控除廃止」による所得税・住民税増税の代償として創設されております。給付金をやるためには「課税ベース拡大(所得税・住民税増税)」が伴うのは常識だと思います。リフレ派は例外ですが。

 平家さんの提案する「育児年金」は民主党の「中小機構への業務委託」ではなく、「年金機構」を利用することの違いがありますが、財源は「課税ベース拡大(所得税・住民税増税)」が伴うことからは逃げていないように感じました。「ゆりかごから墓場まで」ではありませんが、それに近いことを行うためには、年金機構を利用した「保険」であれば、社会保険料のうち健康保険料・厚生年金保険料のどちらかの料率を上げることに成ります。健康保険被扶養者(異動)届の関係から、健康保険料率の事業主負担分及び被保険者の負担を上げることが必要だということです。
 現在は厚生年金の児童手当拠出金(事業主負担)を財源としてますが、「育児年金」の財源に関しては少し不透明な部分が見られます。平家さんの被保険者負担についてはありませんので、事業主が全額負担ということに反対する方も出るのだと感じます。

 民主党の提案と平家さんの提案を合わせた場合、事業主負担も含め全て税金で行うことになるのでしょう。大増税が必要ですね。

 公的扶助の機能をもたせるためには財源として、「扶養控除廃止」による「課税ベース拡大(所得税・住民税増税)」となりますから、国税庁の税額表から扶養人数はなくなり、全て扶養人数0の料率を適用させることになります。これは、おひとり様などが求める内容とも一致し、リベラルフェミの大勝利という印象を受けます。控除廃止は、リベサヨ・ネオリベが求めてきたことですから、給付金は構造改革にとって、中低所得者に対する保護の喪失が達成されることを意味しますので、おひとり様が大嫌いな自分としては、平家さんの「育児年金」に違和感を感じました。

子どもに対する手当の増額と年少扶養者控除廃止の影響
〜世帯構成別及び所得別の影響試算〜
調査情報担当室 鈴木 克洋

3.子ども手当創設に伴う年少扶養控除の廃止

2節のとおり子ども手当の創設によって子育て世帯に対する給付額が増加した一方で、民主党連立政権は、「(所得)控除から手当へ」の切替えを掲げており19、平成22 年度の子ども手当の創設にあわせて、所得税及び住民税の扶養控除のうち0〜15 歳に係る分(年少扶養控除)が廃止されることになった20(図表4)。所得控除制度は、課税ベースとなる課税所得の算出に当たって、1年間に得た総所得金額から、世帯構成に対する考慮や個人的事情に適合した応能負担の実現を図ることなどのために一定の金額を控除するものであり、これら控除する金額が多ければ(少なければ)、税負担は軽く(重く)なる。つまり、今回の年少扶養控除の廃止は、所得控除できる金額が減少するため、当該年齢の子どもを養育する世帯にとっては税負担が重くなること(増税)を意味する。

また、図表5のとおり、子ども手当創設による支給額上乗せは、増税に先行して平成22 年4月から実施され、当初は世帯収入は増加するが、その後増税が着実に実施される(所得税は平成23 年1月から、住民税は平成24 年6月から)。
子どもを養育する世帯にとって、これらの2つの制度改正によって子育て支援として実質的な収入が増えるか否かは、年少扶養控除制度が復活しないならば、ひとえに給付金額に依存するところが大きくなるだろう。
なお、これら扶養控除の廃止に伴う増収分については、最終的には子ども手当の財源に活用することが国民に負担増をお願いする趣旨に合致するとし、子ども手当の財源の一部になっていると認識されている

 参議院の資料の通り、リフレ派の良心が大好きな「課税ベース拡大」は「増税」です。また、給付金の財源は「課税ベース拡大(控除廃止)」です。「デフレ下で増税するのは馬鹿」とリフレ派は言いますが、構造改革とは増税の意味もある事を知るべきです。財政政策「給付金」というのは、「課税ベース拡大(控除廃止)」をしなければ出来ないものなのです。
 英国等では、給付と控除の選択ができる制度があったりしていますし、他の控除を廃止するかわりに、基礎控除を110万円に上げ低所得者に実質的減税を行っています。ベーシックインカムをすることは現行の社会保障を完全撤廃することなしには出来ません。

均一負担、均一給付というシステムの帰結として、所得再配分機能を持つことになります。正規労働者・非正規労働者、大企業・中小企業労働者の間の所得格差は緩和されるはずです。

 平家さんの提案である「育児年金」の理念は大変すばらしいものです。いままで日本が地方分(主)権による地方への税源移譲によって、このようなことができにくくなっている。

 「均一負担、均一給付というシステム」は、確定給付企業年金(DB制度)の応用ですね。