社会保障の難しさ(民主党)

民主党 | 「中小企業社会保険料負担軽減法案」を衆院に提出

 本法律案の内容は、中小企業が正社員を増やせる環境を整備するため、法施行後5年以内に正社員を増加させた中小企業に助成金を支給するもの。具体的には、新たに正社員を雇い入れた中小企業に対し、その新たに雇い入れた正社員ごとに社会保険料の事業主負担分の2分の1に相当する額を10年間にわたって助成金として支給することとしている。

 筆頭提出者の中根議員は提出後の記者会見で、「各種アンケートなどで、正社員を雇用できない理由として、中小企業の多くが社会保険料の事業主負担が重いことを挙げている」とした上で、「安倍政権が進める施策は大企業や黒字企業が中心だ。結果、地方の中小企業は疲弊し、格差は拡大している。中小企業が元気にならなければ、経済再生はない。今回の法律案はアベノミクスへの一つの対案だ」「労働者派遣法“改悪”法案が参院で可決され、非正規労働者が増えることが予測される中、正規雇用を増やすことが重要だ」などと述べ、本法律の必要性を訴えた。

 後藤議員は「バラマキでは」との批判が想定されることについて、「黒字企業にしか恩恵がない所得拡大促進税制などを止めれば財源は確保できる。地方で赤字でも頑張っている中小企業に財源をシフトしていくところに意味がある。『民主党はアンチ・ビジネス』だと言われることがあるが、これはビジネスを支援するものだ」などと説明した。

 可処分所得を増やすためには、民主党案の社会保険料の事業主負担分の1/2減免や良くする御大の低所得者である被保険者負担の全額免除と、事業主負担・被保険者負担分の社会保険料を「保険」という面よりも「貯蓄性」によって、蓄積されて保険料を用いることが提案されています。
 労働者の味方をするというものが、どのような観点からなされているのかということを勉強させてくれるのも社会保障が担う範囲が広いからです。

 社会保険料の事業主負担分は、会計上「法定福利費」として費用計上されますし、消費税の不課税対象科目ということもあり、この支出が減ることは、利益が出やすくなり、法人税が増えるという流れがあります。民主党の財源の一つは、法人税収の上振れと言えます。また、消費税の不課税金額が減ることは、仮受消費税-仮払消費税が縮小するので、消費税収は減ることになります。法人税と消費税の税制中立で結果として、上振れは生じず財源は無い事に成ります。これでは、社会保険料1/2の負担減により労働者の将来の年金は減額せざるを得ないということです。企業負担を減らすことで、労働者の将来の年金は減らすのが民主党クオリティなのでしょうか。難しですね。

 これは良くする御大の被保険者負担免除でも同様のことが考えられる為、「貯蓄性」より「保険」であるためには、負担を抜くわけにはいかないことになります。事業主及び労働者(被保険者)双方が負担し続けなければ保険としての機能が失われてしまうのは拙い。あとは、国が事業主及び労働者(被保険者)双方の負担を拠出するしかないが、国民の資産形成に税金を過度に入れる(バラマキ批判)わけにはいきません。理由が必要ですよね。そういう理由を霞ヶ関官僚に考えて貰わないと成り立たない。そのため叩いてばかりでは、上手くいかなくなります。どこかで手打ちをしないと。

 民主党助成金の財源はなんなのでしょう。

正規労働者雇入臨時助成金の支給に関する法律案概要には、財源は一切書いていません。
事務手続きは、仕分けで批判された「中小機構」ですね。年金機構ではない。現状で事業主及び労働者(被保険者)双方のデータを持っているのにもかかわらず。この点は後で書く、平家さんの提案と絡む話ですね。

独立行政法人中小企業基盤整備機構への事務の委託
正規労働者雇入臨時助成金の支給に関する事務の全部又は一部は、独立行政法人中小企業基盤整備機構に行わせること。

(※2)社会保険料:健康保険法、介護保険法、労働保険の保険料の徴収等に関する法律厚生年金保険法船員保険法、私立学校教職員共済法等による保険料、掛金等

 中小機構については、東日本大震災による被災した企業への仮設店舗等の支援をうけました。それも、単年度会計では対応が難しい中長期的な対応のため財源を確保するため「基金化」したことからできたのです。

独立行政法人中小企業基盤整備機構法

 第三章 業務等
(業務の範囲)
第十五条  機構は、第四条の目的を達成するため、次に掲げる業務を行う。

九  次のイからハまでに掲げる者に対し、それぞれイからハまでに定める資金の貸付けを行うこと。
イ 共済契約者(小規模企業共済法第二条第三項 の共済契約者をいう。以下同じ。)又は共済契約者であった者のうち同法第七条第四項 各号に掲げる事由が生じた後解約手当金(同法第十二条第一項 の解約手当金をいう。)の支給の請求をしていないもの その者の事業に必要な資金、その事業に関連する資金及びその者の生活の向上に必要な資金

ロ 会社、企業組合又は協業組合のうちその役員がその役員たる小規模企業者としての地位において共済契約(小規模企業共済法第二条第二項 の共済契約をいう。)を締結しているもの その会社、企業組合又は協業組合の事業に必要な資金

ハ 主としてイ又はロに掲げる者を直接又は間接の構成員とする事業協同組合その他の団体 その団体の事業に必要な資金

 民主党の法律案には法改正を行うことが謳われていますが、具台的なものはなにもありません。
あとは、批判している霞が関官僚が徹夜してでも作らないといけないのでしょう。財源はまったくみえません。これでいくと、基金への出資金を毎年行うことで、基金を取り崩して対応するという流れも考えられます。同様の手法が、東電を通じての支出であることは、言うまでもありません。
 ただ、福島県を含めた東電スキームでの補償・補てんは大層評判が悪いのも事実です。それでも民主党は同様のバラマキスキームを社会保障全体に拡大適用していくと言う事なんでしょうね。

 助成金(輸出戻し税補助金等)の会計上の処理は「雑収入」なので、利益が増えます。当然、法人税がかかります(公的セクターは、法人税で回収している。中長期の安定した利益を計上する経営で全額回収と言うスキーム。)。ただ、消費税は不課税なので仮受消費税は増えません。

 正社員化しても給料等が増える保証はありませんので、若干法人税が増える。消費税は減る。給料等が増えた場合は、消費税が増え、法人税が減る。この関係からは逸脱できないので、財源の根拠は全く分からない。うーん。法人税が増えることも殆ど無いだろうというのは、そもそもそういう中小零細が増える可能性が薄いからです。一番増えるのは、派遣会社による雇用による場合と考えられるので、民主党の提案は「派遣業者への助成金法案」という印象を受けます。

 社会保障の調整は、「保険」だ「貯蓄」だ、だけではなく税制そのものや雇用契約等も含めた広いものとなるので、目先だけでは判断できないので難しい。