社会保障の難しさ(共産党)

最低賃金 地域差 年収38万円も/島津議員「大幅上げを」 衆院予算委

「物価水準を含め、地域ごとに違う」と正当化する塩崎恭久厚労相に対し、島津氏は「小さな川をへだてて物価の差を持ち出すのは、現実とかけ離れた話だ」と批判。全国の物価や消費支出に大きな差はなく、「最賃の地域格差が地方を疲弊させている要因のひとつだ」と指摘しました。
 静岡県では、13年までの3年間で若者・働き盛り層が転出超過だと指摘しました。

 若者の人口流出の原因は「最低賃金都道府県別」のせいではありません。大学全入による職業高校の統廃合などの高校再編による職業選択の機会の削減によっておきています。共産党の主張は因果関係がおかしいです。

東京圏への人口一極集中と人口減少対策:Issue Brief

東京圏人口の社会増の大きな要因である若年者の転入については、大学進学時の地域間移動のインパクトが大きい。「集積が集積を呼ぶ」メカニズムが強化されることが指摘されている

 国立国会図書館の資料では、上記のとおり指摘されています。静岡県から東京の大学・大学院等への移動がその後の就業場所の選択肢を狭めることで、東京は集積効果を相乗させているということになります。 因果関係からすれば、地方の高卒者であろうと同一労働同一賃金により、大卒者との賃金格差を無くすと主張すべきなのです。共産党の主張は、大卒者が地方に留まるために、東京と同様の待遇を用意しろということです。大卒者限定の同一労働同一賃金最低賃金を学歴に合わせろってことですね。共産党員は大卒者が多そうだから、わからなくはないんですがね。

H. TSUJI ‏@galois225
国立大学の授業料をさらに上げようという財務省の方針だが、地方の人たちにとって、下宿代だけでも大変なのに、さらに授業料が上がるとなると、大学に行けない人が多くなるだろう。地元の大学に行けば良いという意見もあるだろうが、地方国立大学の疲弊はひどい。優秀な学生は東大や京大にゆくべきだ。

 リベサヨな方達は、共産党の意見には反対で、東京一極集中こそ利益。と、お考えのよう。地方国立大など無用の長物なので潰しかねない勢いを感じます。高校再編で県庁所在地以外になくなって、大学は東京のみとなれば、地方に人は残る選択肢が無くなるでしょうね。

 島津氏は「安倍政権が同一労働同一賃金の実現に踏み込むというなら全国一律の最賃制に踏み込むべきだ」と強調しました。
 さらに、最賃が先進国で最低水準だと追及し、早急に1千円以上に引き上げるべきだと求めました。

 最低賃金をドルベースまたはユーロ等の基軸通貨(元もあるかもしれない)を選択し、統一するってことなんでしょうか。金融政策により為替の変動に合わせて「全国一律の最賃制」を運用する
のは、円通貨を消滅するってことです。共産党がドイツを例にしていることからも、マルク(円)廃止・ユーロ移行と同じ考えで日本を見ていることに成ります。 

 全国一律制を導入したドイツは1年間で正規雇用が約69万人も増えたと紹介し、中小企業向けの減税や社会保険料負担分の軽減など「思い切った支援に踏み出すべきだ」と強調しました。

 
 ドイツの全国一律制は、ユーロという市場があるからできたともいえます。ユーロ安の恩恵により、ドイツが第四帝国として君臨出来たわけですから。

法定最低賃金、法案が閣議を通過(ドイツ:2014年5月)|労働政策研究・研修機構(JILPT)

背景に労働協約適用率の低下や貧困格差の拡大ドイツは、ヨーロッパでは少数派の法定最低賃金制度がない国であった。

その代わりに、労使は主に産別を中心に賃金交渉を行い、そこで決定された協約賃金を拡張適用することで、未組織労働者にも波及する仕組みを取ってきた。

政府はこの「労使自治(Tarifautonomie)」による賃金決定を長年尊重してきたが、昨今の産業構造の変化や労働協約適用率の低下、低賃金労働の拡大といった問題が生じるにつれて、労働組合社会民主党SPD)から法定最低賃金の導入を求める声が強くなっていた。

メルケル首相は、過去に2011年11月のCDU党大会で、法定最低賃金の導入提案をして党の承認を得たが、当時は連立相手の自由民主党(FDP)が了承せず実施には至らなかった。今回労働組合を支持母体とするSPDと連立を組んだことにより、法定最低賃金の導入に向けて大きな一歩を踏み出した格好だ。政府によると、今回の導入で370万人の労働者が恩恵を受けることになる。


 共産党の単純な主張とは中身が違いすぎます。hamachan先生のいるところから参照させて頂いてものなので、ドイツの労使関係の弱体化が前提にあり、国家権力により労働者保護を行う方向へ変更したということですね。

 共産党の批判する日本の都道府県別の最低賃金は、「労使自治」の延長的な賃金決定に近いと思いますので、日本共産党による最低賃金制度批判は「労使交渉(共産党)の弱体化」を表しているのかもしれません。


ミニジョブの現状と課題(ドイツ:2016年1月)|労働政策研究・研修機構(JILPT)

ハルツ改革以降、200万人増ミニジョブ(僅少労働)とは、雇用機会の拡大を目的として収入が月450ユーロ以下の場合に、所得税社会保険料の労働者負担分を免除する制度である(ただし、使用者は免除されず、税金、健康保険、年金保険の計30%の負担義務がある)。

2003年の「ハルツ労働市場改革(注1)」で、ミニジョブの報酬上限を325ユーロから400ユーロ(現在は450ユーロ(注2))に引き上げた代わりに、週労働時間の制限(上限15時間)を解除し、時給の下限を事実上廃止した。そのため、以降、この雇用形態は短期間で急速に拡大した。その後、2015年1月1日の法定最低賃金(時給8.5ユーロ)の導入に伴い、ミニジョブもその適用を受けて、再び時給の下限が設けられた。

 中小企業向けの減税については、法人税減税が実施されれば、中小企業のも恩恵がありますので、アベノミクスでの第二の矢(財政政策)次第です。何の問題もありません。共産党アベノミクスを支持している証拠でもあります。大企業の実効税率ガーと、共産党トヨタ等を使って批判しますが、実行税率に対応できる、組織・社員・取引先等があって出来るのです。それに引き替え、中小零細企業は対応できるリソースが不足しており、単純に法人税率を下げることで、複雑な管理も省略でき、リソースの省力化もできるので、もっとも恩恵を受けることになります。金額ではなく企業のリソースの問題です。共産党アベノミクスに理解を深めているのは大変ありがたいですね。批判すれば、こういう主張も無かった事になるので、共産党は政策提言能力が無い事に成りますね。

 また、社会保険料負担分の軽減など「思い切った支援に踏み出すべきとのことですが、これは、マシナリさんと良くする御大との一連のエントリーでもありましたが、社会保険料の事業主負担分を無くすことやその補填の財源はなんなのか不明です。民主党共産党も財源は濁します。

 共産党が一律の導入と共にこういう部分を指摘しないのは不自然です。

副業ミニジョブの動機―“頼みの綱”、“節税のため”

社会経済パネル調査(SOEP)(注4)を用いたミニジョブ分析を行ったハンスベックラー財団のドロテア・ヴォス研究員は、「副業でミニジョブ労働をする者は、主に二通りに分かれる。

ある者にとってミニジョブは“頼みの綱”であり、また別の者にとっては単なる“節税のため”である。前者の多くは女性で、彼女らは生活(困窮)のためにミニジョブ労働をしている。

また、その場合、往々にしてパートタイムとミニジョブを組み合わせるケースが多く、特に離婚した女性が多い」と述べる。一方で、ミニジョブを副業とする男性は、経済的に裕福な階層に属していることが多く、「税金を払わずにいくらかの副収入を得たいと考える有資格専門職の者が多い」と同研究員は説明する。

その上で、「特にパートタイムとミニジョブの組み合わせは女性たちにとって“困難な道”になる。社会保険加入義務のあるフルタイムと比較すると、ミニジョブを副業に持つ女性たちが将来獲得する年金は非常に少ないからである」と分析する。

 長時間労働ガーと言われますが、裕福な層ほど定時退社して副業に勤しみ財を蓄えれるのがドイツのようです。女性パートタイムとのダブルワークはどこの国でも困難と将来が不安になっているのは変わらないようです。ワークシェアリングは単純じゃないですね。
 共産党による「全国一律制を導入」は大卒のためのもので、それ以外の者にとっては、

ミニジョブ(僅少労働)とは、雇用機会の拡大を目的として収入が月450ユーロ以下の場合に、所得税社会保険料の労働者負担分を免除する制度である(ただし、使用者は免除されず、税金、健康保険、年金保険の計30%の負担義務がある)。

この、事業主負担免除バージョンということです。きついですね。


 社会保険は「貯蓄」ではなく「保険」ですが、財産権があるものでもあります。負担なしで、個人の財産形成に税金を直接投じる事になると保険ではなくなる可能性があります。
 
 それにしても、良くする御大は労働者(被保険者)側の負担軽減を主張し、民主党及び共産党は事業主負担軽減を主張する。なかなか不思議な光景です。社会保障を立場を変えて見ると様々に変わりますから、本当に難しいです。

 どちらにせよ、負担軽減した部分は、加算されるのか加算されないのかで、将来の年金額は替ります。下流老人とか下流社会とかまるで新しい発見でもしたような得意げな方がいますが、給与所得が定昇等を含め上がれるのかどうかでわかれるのは、昔から指摘されていたことです。最後にもらった額が年金の給付額と思っている方もいまして、説明しても理解できず、年金事務所を許さないとか言っていました。


RIETI - 社会保障・税一体改革の評価と課題

社会保障・税一体改革の「一体」の意味

 社会保障・税一体改革について、これまで我が国の危機的な財政状況を改善するために力が尽くされてきたことは承知しています。消費税率の5%引き上げを主眼としつつ「社会保障」であることを前面に押し出したほうが国民の理解を得やすいだろうという考えも、政治的にはあったのだろうと思います。

 実際、一般会計にスキマが生じているのは、税収の低迷と社会保障関係費の増であるため、「社会保障」と銘打つのは間違いではありませんし、スキマを埋めるのは消費税なので、税との一体改革であることは間違いではないでしょう。

 しかし、私は、一体改革は、それにとどまらず、社会保険料と税の本来的役割を再度確認し、それに向けて再構築していく発想が重要だと思っています。本来、社会保険料は、一定の垂直的再分配を持ちつつも、負担と受益の対応を身上としています。それによって租税と大きく差別化されるはずですが、「第2の租税」であるかのように、なし崩し的に、あるいは意図して再分配に使われ、その規模が拡大してしまっています。

 社会保険料は、もっぱら現役世代の賃金を課税ベースとしており、そういった再分配への使用は、水平的にも世代間でも公平とはいえません。事業主が保険料を半分負担するため雇用は抑制的となり、労働市場から見ても非効率です。消費税と異なり輸出免税もできないため、国際競争力の観点でも、あまり好ましくありません。

 事業主負担が雇用を抑止し、国際競争力の観点からも好ましくないということは、民主党共産党が主張する事業主負担分軽減は、批判している新自由主義的グローバル経済のための主張となります。

オランダの医療保険制度は、被保険者が保険者を選択することができます。保険者は30ほどありますが、民間保険会社で、保険料は所得にかかわらず保険会社が設定しています。しかし、低所得者には高額なため、政府が税務署を通じて補助金(Health care allowance)を交付します。これによって被保険者が自分の保険者を自由に選択することを可能としているわけです。これは、保険料と税の上手な役割分担だと思います。

政府が税務署を通じて補助金を交付するには、税制改革が必要です。つまり医療保険制度改革だから厚労省だけで行うのではなく、税制改革なども含めながら進めるという考え方が、社会保障・税一体改革の「一体」の意味です。

 高額療養費制度によって、低所得者を含め支出が抑制されていることを知らないのだと思います。保険料と税の役割分担とか出てくるはずがありませんので。
 そうなると、民間保険会社を利用することを目的とした構造改革をしたいだけと言うことに成りますね。税務署が払うとなれば、医療費控除は廃止し、他の控除も廃止したいのでしょう。そうしないと、「一体」でないらしいのです。

 課税ベース拡大(増税)が前提であることには違いはないようです。