津波被災の記録138

 2013年度の岩手県建設業者の完成工事高のランキングが日刊岩手建設工業新聞に載ったのですが、ゼネコンの決算状況と同様の結果に各社とも適切な会計処理がなされ一安心しました。

ゼネコン大手4社/13年4〜12月期決算/受注高、軒並み大幅増20140213建設工業

14年3月期の受注高は、清水建設が1兆2000億円台、大林組と鹿島が1兆1000億円台、大成建設は1兆円台をそれぞれ見込む。大成建設は利益優先の受注活動を展開する中で固めの数字を予想。清水建設は予想値を昨年5月の公表時から1600億円余り引き上げた。単体受注高以外の連結業績を見ると、清水建設大成建設が増収・営業増益、鹿島と大林組が増収・営業減益となった。鹿島は、建築事業の完成工事総利益率が大幅に低下したことが響いた。

 被災地での復興公営住宅を含め建築事業が土木事業と違い、民間資本形成(民需)への配慮が働き未だに適切な労務費や諸経費が確保できないため、建築事業主体の建設業者は軒並み利益が出せない状況が続いています。土木事業(公共投資)は政治的配慮が迅速に反映された影響からゼネコンを始め被災地でも土木事業主体の建設業者は軒並み完成工事高と当期利益をが10%以上出ている傾向にあります。県内での賃金上昇があったかはわかりませんが、建設業での賃金改善は進んだようです。
 もともとデフレ以前でも公的資本形成(公共事業)によね利益が民間資本形成(民需)の低価格受注を支える傾向があったのですが、デフレ期では相互に補完する事すらできず体力を削がれ労働者を整理することとなったわけです。
 
 機械化よる生産性向上が増した土木事業は、入札予定額が歩切等が無く適切に設定されると、自然に売上と利益の双方が向上する事となりますが、建築事業においては人力作業が未だに工程内に多いため生産性を向上する余地よりも建材等の環境対応等の付加価値に求める傾向がありますが、発注者の歩切り以上に建築家による歩切りにより、適切な価格交渉権を奪われた状態で、受注をもとめられるため、入札不参加や不落をしなくてはなりません。
 また、落札後の担当者から恫喝に怯える技術者を確保するのが困難となっています。
 技術者からは「これ以上仕事を与えられたら気が狂う。」という声があります。適切な労働環境を確保しつつ復興を行わなければならないのはどこでも苦しんでいることで、単純な「ブラック企業」を連呼して済ませばいいというものでもないのです。

六郷ライスセンター、秋に間に合わず

施工業者を決める市の入札に際し、5社のうち4社が「異常な短工期」「完成が間に合わない」との懸念を表明していた。3社が応札し、ヤンマーグリーンシステム大阪府)が落札した。
 市東部農業復興室は「契約書で期日を定めており、実現不可能だというのなら入札不調になったはず」と受注業者の責任を問う構え。

 「公契約条例」が怖いのはこのように自治体職員の暴言等に耐え忍ばなければならず、かつ雇用契約を無視して自治体が設定した賃金を支払わされるわけですから、雇用契約を無効とするような公契約条例の在り方には疑念があります。
 五十嵐法大教授のような公契約条例推進者が自由な雇用契約を無効とすることを推進しているわけですから恐怖は増すばかりです。

 歩切と低価格受注という新自由主義的経済観を求められ、自治体が根拠なき賃金設定して労働者は守ることを装いつつ企業の継続性は保証しない。結果として、企業活動は行き詰まり解雇となり、非正規雇用派遣労働者を大量に産み出すための規制がそんなに正しいものなのでしょうか。

公契約条例の在り方考える 盛岡で雇用・労働フォーラム

雇用・労働フォーラム「岩手の公契約条例を考える」(県主催)は22日、盛岡市のマリオスで開かれた。労働団体、企業、自治体関係者ら約150人が他県の事例を聞き、本県が来年の県議会2月定例会への提案を目指す公契約条例の在り方を考えた。

 長野県会計局契約・検査課の樽田(たるた)宏企画幹が、都道府県で初の公契約条例制定の経緯を報告。賃金下限額などを定める規制型でなく、「地域経済の健全な発展」「安全、良質なサービス提供」などの理念達成を掲げたことについて「賃金以外にも大事なことはたくさんあり、理念型条例なら対応できる」と説いた。

 愛知県の公契約のあり方検討会議座長を務めた名城大都市情報学部の昇(のぼる)秀樹教授は「契約条件を規制するのは政府の仕事。それだけでは安心安全な生活を守れないときに条例をつくればいい」と、条例による賃金下限額などの規制に否定的な考えを示した。

 公契約条例は、工事請負や委託業務など自治体が結ぶ契約に基づいて働く人の労働条件確保などを狙いに、各地で制定の動きがある。

公契約条例制定道険し 公共事業下請けまで労働条件保障

<人材難が背景>
 公契約条例は公共事業に携わる作業員らの労働条件を適正に保ち、事業の品質を確保するのが狙い。公共事業受注の行き過ぎた低価格競争で下請けへのしわ寄せが増したとして、導入する自治体が増えている。
 東北では4月に秋田市が理念条例の「市公契約基本条例」を施行した。県レベルで施行した例はない。
 岩手、宮城とも、議論のきっかけになったのは復旧工事の相次ぐ入札不調など人材難を背景とした復興の遅れだ。
 岩手県労働組合の請願を受け昨年、庁内に検討チームを設置。来年の県議会2月定例会への提出を目指し、条例案の策定作業を進める。「若年層で深刻さが目立つ建設業離れ対策の一環」(雇用対策・労働室)と位置付ける。
 宮城では県議会の調査特別委員会が議員提案の可能性を検討する。視察団は7月、先行する福岡県直方市を訪れ、取り組み状況を聞き取る。特別委の横田有史委員は、多重下請けによる工事代金の「中抜き」など多くの矛盾があることを踏まえ「条例で労働条件を保障しなければ、労働力不足の改善、復興の進展はままならない」と訴える。


<数多くの論点>
 条例化には対象事業の絞り込みや独自の賃金基準設定の有無など論点が多い。宮城県は「最低賃金制度のセーフティーネットに加え、県独自の総合評価方式や低入札防止策など既存の取り組みで対応できる」(契約課)と慎重だ。
 労働法に詳しい鶴見聡志弁護士(仙台弁護士会)は「直接の契約関係にない下請けまでチェックするには相当な労力が要る。行政は事務量の増大を嫌う」とみる。
 全国的には労働組合の支持を得る政党が条例化を後押しする一方、建設業界団体とパイプがある政党は慎重姿勢を示す傾向がある。山形市議会は27日、独自の最低賃金を義務付ける条例案を否決した。業界の反発が強いことなどが背景にある。
 鶴見弁護士は「先行自治体を見ると、条例が制定されるかどうかは行政トップのやる気に大きく左右される。知事の判断が重要だ」と語る。

 労働組合のある大企業経営者にとっては、重層下請構造が壊れて地方を含め全ての公共事業を占有できる手段であり、労働組合にとっては面倒な中小零細企業を叩き潰す手段でしかありませ。労働組合(連合)の悪辣さはメンバーシップ型雇用は自身は堅持しつつ、中小零細労働者にはバラバラになってしまえ。という押し付けが凄いのです。

技能労働者への賃金支払不履行/発注者、元請と契約解除/民法改正中間試案/公契約条例拡大には追い風20130418建設通信

民法537条の「第三者のためにする契約」とは、契約の当事者の一方(公契約条例では元請け、法律用語で諾約者)が、第三者(下請けの技能労働者、受益者)に対し給付(一定水準の賃金)を約束した場合、技能労働者は元請けに直接賃金の支払いを請求することができるもの。

 今回の中間試案では、537条の条文をより分かりやすくしたほか、「契約の相手方(発注者、要約者)は元請けに対し、技能労働者の賃金支払い請求をすることができる」条文を新たに明記した。
 さらに、538条では「要約者(発注者)による解除権の行使」として、「諾約者(元請け)が受益者(技能労働者)に対する債務を履行しない場合には、要約者(発注者)は、受益者(技能労働者)の承諾を得て、契約を解除することができる」と解除権を明確に規定した。

 地方自治体発注の工事や委託業務に従事する労働者の最低賃金を決める「公契約条例」は、自治体発注者と元請けが交わす契約の中に、下請けの労働者の賃金水準に元請けが責任を持つことを決めているが、その根拠として、「第三者(下請けの労働者)のためにする契約」規定がある。このため今回の改正は、公契約条例の効力を一層強める可能性が出てきた。

 これまで、日本労働組合総連合(連合)や、全国建設労働組合総連合(全建総連)は、国が公共工事や業務に従事する労働者の最低賃金を決める「公契約法」制定を最終目標に活動を進めてきた。

 ただ国は、既に最低賃金法(最賃法)があり、二重規則になることなどを理由に、公共調達に限定して公権力で賃金を規制する「公契約法」には否定的だった。

そのため自治体は、独自に最低賃金を義務付ける公権力規制を公契約条例として導入すれば、「契約自由の侵害など憲法違反」「条例で最低賃金を決めることができない最賃法」「最小経費で最大効果の原則を規定する地方自治法」などで違法と判断される可能性を踏まえ、民法の「第三者のためにする契約」の考え方を持ち込んで、公契約条例を正当化していた。

 今回、「第三者のためにする契約」で第三者の権利を確保するための改正試案が、社会政策として導入した公契約条例に基づく、技能労働者の賃金確保に結び付く可能性が出てきた。

 「技能労働者の賃金確保」が実質的には「技能労働者の合法的引き抜き」をしやすくすることになって、この工事が終了すれば解雇となり、この技能労働者が当初の企業に雇用されることは無いでしょうから、その後の末路は悲惨でしょうね。
 公契約条例がジョブ型雇用的な部分への対応と言うよりもメンバーシップ型雇用者(連合組合員)にとって、使い捨てし易いようにするようにしか感じられません。



建設業の賃上げ 労働者が訴える 盛岡で決起集会

大工や左官ら建設業従事者の労働環境を改善しようと、岩手県建設労働組合連合会は16日、賃金・単価引き上げ決起集会を盛岡市で開いた。
 約270人が参加。労働者に最低賃金を上回って支払うことを公共工事の請負業者に義務付ける「公契約基本条例」の制定を県に求める決議文を採択した。
 斎藤徳重会長は「東日本大震災後に設計労務単価を引き上げられたが、実際の賃金は上がらず、公共工事の入札不調が深刻になった。復興が進まないのは職人不足が大きな原因だ」と訴えた。
 連合会は社会保障費や道具代などを含め大工職で1日2万4000円の賃金を目指す。昨年行った組合員アンケートによると、実際は1万2000〜1万3000円にとどまっているという。

[http://blogs.yahoo.co.jp/guntosi/62798712.html:title=全建総連都連ら/東京・日比谷

公園で大集会開く/3千人集結、賃上げ求め気勢 20140207建設工業]
集会では、全建総連東京都連の伊東昇委員長が、「公共工事設計労務単価が2年連続で引き上げられた。若者が来る魅力ある産業をつくるために未来への希望が求められている。現場の賃金を大幅にアップする時であり、この集会がその出発点だ」と訴えた。神奈川県建設労働組合は「大手ゼネコンと話をしたら、要求した金額がすべて通った。ゼネコン現場に入ったのは1年ぶりだが、声を出していけば賃金は上げられる。要求することが賃金を上げていく第一歩になる」と報告した。

 予算要望での議員からの話でも、東京都内での大工工賃は「社会保障費や道具代などを含め1日8万円」となっている現場もあるそうです。被災地の無駄な巨大防潮堤で上がっているのではなく、東京都内の再開発事業のために全国から集めた職人の賃金が上がっているそうです。共産党の要求が通りやすい環境になったのもアベノミクスのお蔭なのでしょし、散々批判した「無駄な公共事業」を薄めさせた被災地での復興事業(復興特別所得税・住民税を原資とする公共事業)による再分配のおかけであることも忘れてはなら無い事だと思います。