津波被災の記録134

 3年目の311特集を見て書く気力が抜けてから、もう3ヶ月が経過してました。被災地も被災者も含め、未だに「可哀想な者」で居続けることや「過大な要求者」へと変わりつつあること、震災以前以上に「酷薄な都市リベラル」の反動への脱力感に捕らわれておりました。
 もともとの「ブクマ」による情報収集だけの環境に戻ろうかとしてましたが、一部の方達の復興(公共)投資への批判は更に高まりを見せており、そちらに切れてしまうため現状確認で、すこし書いてみます。
 
 環境省による「がれき処理」も3月末を持って終了(岩手・宮城県)し、「土建供給制約ガー」と言う方達には残念ながら、割かれていたリソース(人的・物的・金銭的資源)は、公共投資及び民間投資へ振り向けることが可能となっていますので、平成26年度の発注物件の入札不参加・不落等は減少していくことになるでしょう。また、3年間の「がれき処理」や工期が2年程度公共事業等の会計処理も平成26年度で計上されることになるので、数字も増がはっきりと見えてくることになります。
 被災地に営業所を構えていたゼネコン等も県庁所在地に後退するなど、受注環境への対応は迅速なものとなっています。国土交通省による建設業者のマッチングにより、公共土木には「供給制約」は見られません。ただ、C等級の物件については、大型ロット化した場合のメリット(マッチング)は見られないため、地元業者の下請工事の終了まで時間がかかることになります。公共土木が遠隔地からの建設業者を集約するのに対し、公共建築は建設業者の県内移動程度しか予定していないため、資材より下請業者の確保(移動経費(交通費・宿泊費)が認められない)による、受注環境の改善にはもう少し時間がかかる事でしょう。
 労災事故の抑制をするためにも労働時間の抑制が課題ではありますが、発注者の工期設定には柔軟さが出始めましたので、そういう部分からも不落は減少していくことと思います。


守るべきもの
等を含め書き続けるマシナリさんには頭が下がります。
自分などは、本当に辞めたくなりました。

最近の「巨大防潮堤」に対する批判は、

東京新聞:「緑の防潮堤」国の補助明確化 改正海岸法が成立:政治(TOKYO Web)

大規模地震に備え防潮堤と防災林を一体化して津波の被害を軽くする「緑の防潮堤」の整備を進めるための改正海岸法が4日の参院本会議で可決、成立した。通常の防潮堤と同様に海岸保全施設の一つに位置付け、地方自治体が整備する場合に国の補助対象になることを明確にした。

 緑の防潮堤は、通常の防潮堤の陸側などに土を盛って植林したもの。基礎部分が強化され倒壊しにくくなるほか、防潮堤を越える高さの津波が来ても防災林が勢いを弱めて、内陸への到達時間を遅らせる。またコンクリートがむき出しになった防潮堤に比べ、景観への影響を小さくできる。

 公共土木において、「土砂の量」は利益の源泉となりますから、建設業者にとっては美味しい仕事ではあります。防災林は減災の効果より、流木と化して都市機能の破壊や避難者に対する凶器を設置しているように被災直後に市街地に流れ込んだモノの流れを見たものとしては感じるところです。そもそも防潮堤による減災では100%という「神の奇跡」を期待することはできません。コンクリートの防潮堤を越流しても凶器が流れる危険はありません。
 「海が見えない」と言うので、現在は水族館で使用するアクリルガラスを填め込んだ防潮堤を建設中です。まあ、海を見て海面上昇を待っているようでは死んでしまうのですが。

 大事なのは、被害を最小限に抑え、再生を速めることが肝心です。これは震災後に批判されたBCPと現在の改善されたBCPにも言えることです(取引断絶を最小限・取引再開を最優先にする)。

 防災林はその後「がれき」となって焼却施設を塩害によって痛めるのは、新日鉄火力発電所におけるバイオマスの抑制運用を見ても再生における電力供給を不安定とするため、今回限りとするべきでしょう。「緑の防波堤」は被災後の都市再生・企業再生を含め困難にすることが考えられるはずなのに入れ込むには別の理由があります。

リニア建設による大量の土砂の処分です。
 
大深度に建設されるため膨大な土砂が、山間地・河川・海岸部を埋め立てるのに使われることになります。

リニア新幹線/東京〜名古屋・大阪同時開業へ、自民特別委に財務問題WT設置20140307建設工業

WTの座長には宮下一郎衆院議員、座長代理には片山さつき参院議員が就任。片山氏は「公金が投入されると指摘されるかもしれない。それでも、このプロジェクトはやらなければならないことを理解してもらうしかない」と訴えた。

 巨大コンクリート防潮堤批判をする片山議員は、リニアに思いがあるようです。でも被災地を含め地方の国土強靭化は「公金の投入」に批判的で、どこかにだけ「公金投入」したいだけなのかもしれません。被災地復興についても「このプロジェクトはやらなければならない」と、言っていただきたいものです。自民党も随分と被災地に冷淡になってきているようです。

JR東海/リニア中央新幹線の環境影響評価書を作成/国交相に送付20140424建設工業

建設発生土については、リニア新幹線の現場内での再利用のほか、公共や民間の事業での有効利用を進めていく考えを明示。発生土の置き場を設置する際の環境保全の考え方なども整理した。一部区間では、現時点で想定している再利用量や他事業での有効利用量、置き場所などを示している。

リニア、東京外環、膨らむ残土問題/来年度から集中発生/東京、神奈川で3150万m3想定20131107建設通信
 

大深度地下トンネルの建設で、東京ドーム25杯を超える残土が発生−−。リニア中央新幹線(東京〜名古屋)と東京外かく環状道路(外環、関越〜東名)の建設が2014年度にも同時着工するのに伴い、東京都、神奈川県内の建設残土発生量は、計約3150万m3に上ることが想定されている。集中的に発生する残土対策は、工事の進捗を左右する大きな課題。今後、事業主体、国、関係自治体を中心に他の公共事業などへの有効活用や搬送方法など適切な処理に向けた検討が本格化する見通しだ。

 別にリニアを批判するつもりもありません。被災地でもILC誘致を行っていますから、行う事は同じになります。「緑の防潮堤」は里山資本主義とかのリローカリゼーション(地域回帰)における「エシカル(倫理的)」行動(自己満足の充足行為の選択として)の一例でしかありません。常見陽平氏が指摘する「意識高い系(笑)」の環境(エコ)と言うものに対しては、斜に構えてしまうだけです。(まあ、呆れるほうが大かもしれない)

 被災地における「嵩上」に使用される「残土(土砂)」の処分は用途は決まっていますが、その管理と投入先の調整ができていないため、復興の工程が全く意味をなさなくなっているのです。リニアから出た「残土」を「スーパー堤防」等に利用することと同じように、被災地での「復興道路・支援道路」「県道・市道」等を発注しないと「残土(土砂)」が捻出できないため、残土(土砂)が出やすい工事を発注するのですが、残土処理を専門に調整する存在がいないのです。国・県・市町村の担当者も必要性は判っているけれども、誰もどこに管理し投入するか調整者がいないため、業者に処分を考えるように求める自治体関係者もいるそうです。

 「緑の防潮堤」などという「意識高い系(笑)」の自己満足のための犠牲になることほど愚かしい事はありません。「巨大防潮堤」「コンクリート防潮堤」批判に陥ると、本来やるべきものが出来なくなることの愚かさを理解して貰いたいだけです。