罪の在処(ありか)

べんきょうしてみた3

「均衡財政乗数」と「コンクリートから人へ」みずほ総合研究所 執行役員 チーフエコノミスト 高田 創]

 増税を行って公共投資を行う事は、増税で捻出した分の公共投資額が、GDPを引き上げることになる。 一方、上記とは逆のことを行ったらどうなるのだろうか。すなわち公共投資をを削減し、その分の金額を国民に直接給付する行為である。その効果は、先の均衡財政の乗数を考えれば理論上は公共投資を抑制した分はGDPマイナス効果が及ぶことになる。

 民主党政権、「コンクリートから人へ」として、公共投資から国民に直接給付をすることは、マクロ経済学の「均衡財政の乗数」の理論からは経済成長を低下させる政策を意図的に行うことだった。
 さらに2009年の民主党政権発足で始まった事業仕分けを通じて支出削減を声高に掲げることが一層の乗数効果を引き下げた面もあった。

 財政政策「公共事業」と財政政策「給付金」の効果は、全額消費される「財政政策」か半分も消費されない「財政政策」のどちらを選択するかと言う話だけではなく、高所得者が有利になって、中低所得の負担を増やしましょうということまで語って賛否を求めなければならないのに、リフレ派の経済理論に逆らう者は「異端」とすることしか何故できないのだろう。

 リフレ派の財政政策「給付金・BI」では、経済効果は「期待」出来ないけれど「金融・投資」への「期待」が高いことは、前回の「子ども手当」でどのような結果と効果があったのかについてリフレ派は何の検証も是正もしていないため、マネジメント能力が無いとしか言いようがない。

 財政政策(給付金・BI)をやる前提として、今月だと年末調整を給与所得者は行っているはずです。給与所得者の皆さんが「基礎控除」を含めた「全控除廃止」と「社会保険料控除廃止」を前提として、年末調整を行ってみるのがわかりやすい。但し、所得税率については、全体として上がる可能性があることは頭に入れておかないといけません。

年収多い層、恩恵大 4人家族の2010年分 家計への影響、大和総研が試算

「子ども手当は貯蓄」48% 教育格差助長も、内閣府調査

3月成立の子ども手当法の国会審議で野党から出ていた「大半が貯蓄に回る」との指摘が裏付けられた格好。低収入世帯が生活費に回し、高収入世帯は学習塾などに当てるという“教育格差”助長の可能性も示された。

 財政政策(給付金・BI)を全額消費を強制し、消費の根拠と支出の検証をどのように行うかについて述べているリフレ派などいません。ただ、「財政政策は公共事業だけではない。」「給付金で問題ない。」「財政政策(減税)で問題ない。」だけの連呼で実施における様々な課題に対しては何の提言もありません。
 また、全額消費に使われるとしても製造業等に対する「設備投資」は減るため、サービス産業だけに偏る歪な内需構造になることは考えなくてはなりません。それが「持続可能な社会」なのか。
 それでも後は、現在より俸給を3割削減した公務員に全ての責任を押し付けるだけの簡単な仕事だと思っているんでしょうね。
 
 では、財政政策(公共事業)における、消費の強制と根拠と検証をどのような実務で行っているかということになります。

 財政政策(公共事業)において、一般競争入札等で請負金額を決定します。決定時に不正があった場合「談合」等で叩かれる入口です。ここは皆さんも新聞等では出てきますからよくご存じのことと思います。
 落札後の契約前、契約後、施工時、完了時の税金の流れまでは国民の多くは知られていないことが、「バラマキ」批判を受ける弱さであると思います。
 
東日本建設業保証 保証の流れ

 公共工事においては、国民の皆様の税金を適切に管理するため様々に検証することになっています。また、国民の皆様の税金を保全するため「契約保証(請負金額の10%相当額)」を行うことになっています。これは、現金による「供託金」や民間保険会社の「履行保証」等の中から必ず選択することが義務付けられています。

 「前金払保証」は、工事の円滑な執行のため、資機材業者や下請業者への現金(振込)支払いを行うことにより、公共事業(税金)が他の産業へ円滑に支出されるための制度です。通常は工事代金(請負金額)の4割ですが、東日本大震災により5割となっています。

 財政政策(公共事業)に拠出される税金の使途を明確にするため、各種法令によって制約を受けます。
 ですから、国民の大多数が考える「バラマキ(税金を右から左に自由にできる)」はありえません。発注者に前金払を請求して金融機関に入金されても直ちに使用(消費)することはでき無くなっているのです。こられの仕組みは被災地での「グループ補助金」を含めた税金の拠出が「真のバラマキ(法的拘束が無い)」とは違うことになります。
 
 支払先の明確化、根拠となる「見積書」「請負契約書」「注文書・請書」等を提出しなければなりません。その総額の内で受注者が自由に使用できるものは、「自社社員の労務費」だけになります。じゃあ「労務費」だけ請求すればと言うことになりますが、そういう内訳では認められません。もちろん不正な請求をする業者はいると思いますが、その場合は「詐欺罪」を含め処罰されますから、公共事業から排除されます。建設業法等により営業権停止等の行政処分を受けた建設業者には金融機関は融資を停止します。実際に、岩手県建築工事談合事件では、そのような措置が取られました。そういう建設業者は民間投資だけで食わねばならないため、民間工事で安く叩かれてもしがみ付かざるを得ないのです。

 「土建供給制約」によって、「民間工事」が圧迫されるそうですが、実体は「民間工事」が困窮した業者をさらに圧迫することのほうが多いと思われるのは、資金の流れやコンプライアンスによる制約からと考えられるからです。

 支払先の明確化が承認され、支出する際には同様の内容を金融機関へ提出し、金融機関から東日本建設業保証に対し、支出の確認と承認を受けて、支払実行となります。発注者側の行政等も同様に下請工事業者と主要な資機材業者の一覧表の提出を求めていますから、トレーサビリティが行われやすくしています。
 
 よく言われる、政治家・NPO等に献金・募金等についても、請負金額から簡単に拠出されることはないと思うのは、企業努力や労働者の努力によって確保した利益からの拠出されないと、直接工事費からの拠出は簡単に足が付きやすいからです。

 東日本大震災以前は、地方自治体によって40%を認めない場合があり自治体側から前金払の金額を指定されていました。大規模な工事になると10%未満しかなく、プロパー資金と金融機関の借入でしのぐのですが、低入札を強いられる工事内容では、金融機関が融資を渋る状況もあったようです。国・都道府県では、低入札を推奨しながら安すぎるとペナルティとして、前金払を1/2に減額したりするため、資金繰りに困窮する建設業者が多かった。それも落札した建設業者の「自己責任」と発注者の担当者から罵られたわけですから、当時の状況が脳裏に残っていることからすれば、現在の建設業者は疑心暗鬼で入札案件を精査します。内容次第では不参加になるのは、発注者に痛めつけられた経緯があるからです。「土建供給制約」に陥るのはシバキが要因の一つでもあることになります。なかなか難しいですね。

 前金払制度は中小建設業者並びに資機材業者・下請業者の資金力や担保能力を含めた、融資能力不足を補う制度でもあります。前金払の原資は、豊かな自治体以外は「金融機関からの借入」によって支出されています。復興事業の進捗に従い自治体の借入金も伸びていることから、金融政策の効果も相互に補完し合っているのかもしれません。公共事業批判は、自治体による借入・起債に対する不満であると思われます。

 東日本大震災による特例措置による50%の前金払=発注者の借入金を前提とした場合、50兆円の財政政策(公共事業)は制度としては、25兆円の借入金(融資)ができるかもしれません。非現実的ですが、それでもゼネコン1社1兆円とかなら請けるかもしれません。(本社(納税地)が東京ですから、税金も東京に集中。消費税・法人税収も桁外れですね。羨ましい。ここにPFIの余地があるのは判らないでもないが)

 地方自治体の地方債の償還及び起債抑制によって、地方金融機関が浮いた資金を国債投資に向かったのは、財政政策(公共事業)の抑制とも無関係ではないと思います。現状では、国債購入により浮いた金をリスク資産投資に向かわずに、財政政策(公共事業)によって自治体融資へ向かい、リスク資産に向かわない資金がでることがリフレ派には困るということなんだと思います。

 銀行にとっては、優良な融資先によって運用できるが、証券等にとっては投資資金が集まらなくて困るという構図なのかもしれません。

 そうすると地方自治体にとって、借入に拠らない財政体質のために「自動車税」を増やすことが必要になります。毎年5月末日に納付されるこの税は、地方自治体が地方金融機関からの借入を抑制するためには、重要な財源であるのです。
 最近盛んな軽自動車税は市町村税ですから、基礎自治体が借入を抑制するためにも軽自動車税を上げたいのです。米国からの関税障壁(普通自動車)や二重課税解消への対応もありますが、その捉え方はなかなか複雑なものがあります。

 地方金融機関にとっては、預金は増えるが融資は減るということになります。

 バランスが難しいですね。

 財政政策(公共事業)は「土建供給制約」以前に「税金適正支出制約」があるため、実務が容易なものではないのは事実ですが、「財政政策(給付金・BI)」には「税金適正支出制約」がないと言うことを主張したいのでしょう。受給者が自由に消費ができるような幻想に捕らわれますね。でも、生活保護における「支出制約」も解除しないとバランスが悪い。しかし、頑迷な保守派がそれを了解するとは思えないんですよね。
 「支出制約」はむしろ強化されないと「貯蓄・投資」または「カジノ(未承認)・パチンコ等の公的ギャンブル」への支出が大半を占める様な気がします。
 リフレ派の「財政政策(給付金・BI)」でそのようなことに対して語られているものを見たことはありません。これは被災地での「支援金・義捐金」の消費につても批判されたことからも何らかの制約が求められるだろうと感じるのが普通ですよ。でもそんなものを設ける「国」が悪い!!と言うのだろう。

 リフレ派が批判してやまない麻生政権ですが、あの時の「地域振興券」のようなクーポンにでもする気なんでしょうか。でもあれは、5%相当額を事務手数料として交換した商店等から差し引くことで、結果として個人商店からは好まれなかったのと、交換先が大規模チェーン店が60%を超えるため地域(商店街)振興というより路面型「大規模店振興」の傾向が出たと記憶しています。(うろ覚え)
 消費税8%のさい希望小売価格108円(税込)で、100円(税抜き)-5円(%)=95円で利益率をどう設定するか大変ですね。