残る命散る命

 被災地における建設業者からは「がれき処理」に割かれていた人員等が、事業終了が近づくと共に「仕事が無い」「人員がタブついてきた」という声か聞こえてきています。
 国土交通省の予算ではなく環境省である「がれき処理」が建設投資(解体工事が含まれるものだけが対象)に算入されることは考えられませんし、被災直後の除却作業は請負工事(完成工事高)ではなく、兼業事業売上(業務委託)で処理されるなど、建設投資として計上されるものとなっていない部分もあることや、会計処理で発生主義で計上できていない中小建設業者では、年度毎の売上計上が繰り越され、平成25年3月以降に計上されることも大きいかもしれない。
 平成26年度においては、「供給制約」の解消がある程度進むことも予想されていますが、利益の出ない公共事業には参加しない傾向は続くと思われます。
 
 「土建供給制約」という表現は、建設業の「土木工事業」と「建築工事業」に対する理解不足の表現ということが感じられます。
 「土木工事業」の発注者は、国及び地方自治体が担っております。被災地における「防潮堤」「湾口防波堤」「自動車専用道路」等がこれに当たります。
 「建築工事業」の発注先は、圧倒的に民間が多く被災地でも被災した住宅の修繕や水産加工業等の事業用施設・設備が圧倒的に占めていました。そのため公共施設への修繕工事は、将来の顧客喪失に対する企業防衛の面からも最優先で行ったため、公共事業(建築工事)の入札不調がおきたのです。
 デフレにおいて、低価格を強いられた民間投資に対してもコミュニティの存続や紐帯を維持することが優先された結果、「供給制約」が生じているということにどうつながるかは、サプライチェーンから一端排除された顧客の弱体化は金融政策では解決しえない問題であり、それらに対する財政政策(公共投資)へのリフレ派の批判は、「打落水狗」を求めているということなのでしょう。
 
 建設業「土木工事業」と「建築工事業」における諸経費の配分は同一なものではありません。目安として「土木工事業」は35%〜50%(工事業種により違う)あり、「建築工事業」の20%〜25%とは差異があります。また、この諸経費率は、東日本のものであり、西日本は同和・在日対策として5%の上乗せ計上がされているそうです。そのため、東日本大震災で、被災地応援に来ている西日本の建設業者からは経費を含めて「安い」ため批判が出ているそうです。でもこちらとしては、どうにもなりません。被災三県(岩手・宮城・福島)の公共労務費単価の引き上げがたの都道府県より高く設定されているのは、そういう部分もカバーするのもあるかもしれません。

 東日本大震災前の公共事業の国の予算維持により低入札は減っていきますが、地方の予算削減から低入札が続いていき中小建設業の経営体力は失っていきます。追い打ちをかけるようにリベサヨな市民の方達から95%以上の落札は談合という通報が寄せられ、公共事業は発注者の「歩切」とリベサヨからの「5%カット」からネオリベの「競争」による低価格受注を強いられ、建設労働者(技術者・技能者等)の待遇は悪化して行ったのです。
 
 

 この間の民間投資は、公共事業以上に低価格受注を強いられ民間投資自体が適切なコストを払わない「フリーランチ」(以前から、公共事業の利益を民間投資の損失を補填していたことは指摘されている)となったため、官民共に適切な価格の是正が求められる背景がありました。この点は、新自由主義の方達が言う、基本価格と選択したオプションによって利益を確保するのとは逆になっていたのです。

 このため、円安による資機材価格の上昇を吸収する体力は無くなっていることや、諸経費率が薄い(調整機能がないということは、下請・資機材業者も含めた、価格下落圧力がある。これは、積算時に価格弾力性を喪失させた利益が薄い単価で発注者及び設計事務所が積算した価格で予算要求しているため。)「建築工事業」では、入札予定額の見直しによる増(価格転嫁)をしてもらわないと「受注すると倒産」という企業防衛から入札参加をしないのです。スーパーゼネコンのカジマにおいても利益率は建築工事1.1%・土木工事19%になるのは、諸経費率の違いもありますが、設計変更を認める土木工事と認めない建築工事という発注者の「悪しき伝統」も入札参加を抑制する要因の一つです。

 被災地に限らず、技術者・技能者不足もそうですが、警備業「交通誘導員」も不足しかつ諸経費での公共労務費単価と請求単価の乖離が大きいため敬遠されやすい傾向にあります。また、被災地では地盤沈下により、海水・地下水等が湧出しやすく「水替費(燃料費・リース等)」が嵩む(24時間稼働)為、そのような工事も敬遠されます。(海中土木と一般土木は違う)

 「土木工事業」であっても、設計変更や追加工事(随意契約)で金額が加算されても、売上即利益増ではなく「減」が多くなる工事は追加受注は拒否する。そのため、発注者が別発注にせざるを得ないため、利益の出ない案件として敬遠される。それが、不調をさらに生むことになる。設計変更の請負額の算定時に、落札率を乗じるため、低入札すればするほど赤字に陥るからだ。
 機械化によって「生産性の向上」ができた「土木工事業」だから、高い利益率を確保できるのと違い、職人の「人工」が価格に反映される「建築工事業」では、労務費の高騰は「供給制約」を生じやすいと言える。「供給制約」の土壌は複雑なのだ。

 「建築工事業」においては、関わる職種の多様性が「土木工事業」と違い「重層構造」に成りやすく、なるべく近隣で調達しようとするのも、諸経費(交通費)を発注者の積算では見ていないからである。
 このことは、東日本大震災において、「土木工事」に対しては、当初から下記のように諸経費の見直しが図られたが、「建築工事」に対しては、適用を除外された。そのため、ゼネコンのように資金力がある建設業者以外の受注が難しくなると共に、技術者・技能者は抑えられ他に廻ることがなくなった。簡単にリフレ派の良心が「土建供給制約」というけれど、「土木工事業」と「建築工事業」では乖離する部分が多く見られる。
 これは国および地方自治体発注の「建築工事業」への諸経費の手当の薄さはそのまま、民間投資への配慮でもあるということです。被災地の建設業者からすると「土建供給制約」による「公共建築工事(投資)」による「民間工事(投資)」が進まなくなると言うのは、事実と違う。実態は、「建築工事業」に対しては「民間工事(投資)」を優先させ、「公共建築工事」の完成が遅れることも想定内でいたと考えられる。確かに、被災企業に対する「建築工事」の復旧は進んだのだから、リフレ派が被災地における建設投資(官民)の動きについて全く見れていなかったことだけは感じた。

労務、資材費上昇に対応/被災地特例、全国に拡大/国交省20130207建設通信

間接費の積算要件は、施工個所が点在する工事で間接費をそれぞれ計上できる工事個所の範囲を、直径5㎞程度以内に緩和する。昨年6月に決めた被災地対応では、市町村をまたいで施工個所が点在する場合に認めていた個所ごとの間接工事費の算出を、同じ市町村内で点在する工事にも適用することを可能にしており、今回の通知ではその範囲を明確にした。

 また、骨材や砂といった建設資材のひっ迫が懸念される地域を対象に、不足分を他地域からの調達に変更せざるを得ない場合、輸送費や購入費用などに関して設計変更できるよう配慮する。

 労働者も工事個所近隣だけで確保できず、遠隔地からの労働者で対応せざるを得ない場合は、赴任旅費や宿泊費などの間接経費が標準的な積算基準を上回って必要になる部分を設計変更で対応する。

 「土建マフィア」「コンクリート本位制」「コンクリート主義」などの「コンクリートから人へ」については、「無駄な公共投資」のように表現されています。建設業「土木工事業」と「建築工事業」における「コンクリート」とはどういったものでしょう。

日銀短観、4四半期連続で改善…07年以来水準 : ニュース : マネー・経済 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

公共事業の増加で、資材となる「木材・木製品」や「窯業・土石製品」などの業種が大幅に改善した。「小売り」や、「建設」、「不動産」、建機リースなどの「物品賃貸」が改善した。

 「コンクリート」は、窯業(生コン)、土石製品(砕石業・コンクリート二次製品の製造業)の内需産業へ建設業者から材料費として支払われるものです。今回の被災地において、生コンの骨材としての「砕石」不足が生コンクリートの「供給制約」となっています。当地の場合は北海道から船舶で輸送されていますが、天候により沈下した公共ふ頭への接岸が困難な場合があり、供給量が制限されています。人員の問題がクリアされていても資材の高騰と供給が官民工事どちらにも出荷制限がかかるため、一般住宅の基礎工事が3週間遅れるのも多いのです。また、大型土木・建築工事においてもコンクリート打設の予定が狂うと、他の業者の予定の後ろに回されるため工程管理が大変です。
 宿泊業、小売業は、西日本から「土木工事業」に大量の人員が来ている効果でもあると思いますね。昼のコンビニやスーパーはどこも混んでいます。酒類等を購入しているので、飲食店には震災後と違い出ていないようです。この辺りは、住民とのトラブル防止もあるのかもしれません。
 
 生コンや砕石の運搬のために大型ダンプの運輸業、建機リースへも流れているのです。コンクリートを排除することは、内需産業の上記の産業の存在の否定なのです。つまり、機械化が進み「生産性が向上」した土木工事業では人力を減らす代償として、工期を短縮等するために「コンクリート」が必須であるともいえるのです。このことは、コンクリート製の防潮堤とグリーンベルト(緑の防潮堤(土砂等))では、コンクリート製の防潮堤のコストが安い(税金が少なくて済む)ことが挙げられます。でも、建設業「土木工事業」の方達の話は違うものです。

 「土砂」を動かす方が儲かる。コンクリートは儲からない。

 コンクリート及びコンクリート二次製品は固定費として、現場担当者がどのようにしても利益を産み出すことはでき無いからです。請負金額は大きくなりますが利益は小さくなりやすい。建設業者の都合だけなら、コンクリートを排除し、土砂を動かす工事だけを建設業者に発注したら儲かって、労働者、株主、経営者は良いですが、国民の税金は大量に支出が増える事は確実です。良いか悪いかは別ですが。発注者の担当者は、税金を少なくする工法の選定に日々頭を悩ませているんです。「公共事業」がバラマキされているって、誰の妄想なんだろう。

 ケインズの『お金を穴に埋めて掘り出させる』は、しばしば「無駄な公共事業」でもやらない方がまし」程度の説明がなされますが、投資家としても優秀だったケインズにすれば、税金を投資しても確実に儲かって、株主に配当がされる「土木工事業」の事業効率を見抜いたうえで、言っていたのかと思ってしまします。また、土砂の価格は為替の影響も受けないでしょう。価格高騰はなかなかしないと思います。そうなると「土砂」だけを動かすことは、「経済合理性に適った事業」ともいえるんでしょうか。(笑)
 現代では、建設業「土木工事業」への投資かすぐれているのか、窯業、砕石業、建機リース、運輸業という投資の選択肢が多様なためそれを評価するのは容易ではありません。

 「建築工事業」の「コンクリート」は建物(ハコモノ)の基礎及び鉄筋コンクリート(RC)造においても、固定費として利益が出にくいだけで、工程管理や品質管理の面からも管理コストが増加することが多く、諸経費もそれほど高く無い事から、経営者と現場担当者が衝突しやすい物件です。
 被災地における生コンクリート、砕石の高騰は、物価スライド条項だけではカバーしきれず、請負金額が膨らみます。これを諸経費でカバーすることは困難ですから、予算案のタイムラグや応援職員の「震災前はこの金額でできた」が根拠で入札に出されると、不調に陥るのはそのためです。
 後は、金額が大きすぎてデフレで縮小した建設業者が手の届かないものとなったこともありますが、公共工事で「供給制約」って、何なんですかね。
 
 「木材・木製品」の伸びは「復興住宅」「一般住宅」の木(W)造の増加によるものですが、昔と違い大工が現場で加工しながら建てることはしません。プレカット工場で集成材による建材を使用することで、品質管理と工期短縮をするようにはなっていますが、他の工種については工期短縮が難しい。

 「コンクリートから人へ」が、内需産業(製造業)の縮小による所得減を狙いとしたものであり、「コンクリート本位制」は、内需より外需という批判。
 税金を効率よく「コンクリート」を通して、内需産業へ請負金額の大半を渡すモノであるため、建設業「土木工事業」「建築工事業」ともに「コンクリート」の価格が変動しやすくなるのは本当につらい。
 現在では円安の影響でアスファルト合材価格が急騰して、舗装工事の価格が合わなくあっています。金融政策による円安の効果は絶大ですよ。
 
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