べんきょうしてみた11

ファンタジーに逃げる“下流”の人々 −「年収別」心底、役立った1冊、ゴミ箱行きの1冊

上流は世の中を動かす法則や権力者の意図、そして政治に強い関心がありますね。苦境の時代こそ、現実を見据え、現実を変えていこうとしている。一方で、500万の人はファンタジーに逃げているように見えます。

 被災地の下流の人である自分が読んだ本が「ローマ人の物語」しかないんですが、こういう方達からするとこういう本もファンタジー扱いされるのでしょう。

経済成長って、本当に必要なの?

経済成長って、本当に必要なの?

経済成長って、本当に必要なの?

 著者であるジョン・デ・グラーフ及びデイヴット・K・バドガーは本のタイトルと違い「経済成長」を否定してはいません。その指標が時代に合致していないのではないかということを述べています。本の帯に「平川克美」氏「経済成長という病 (講談社現代新書)」が推挙とかあるので躊躇いますが、ソーシャル的な思考とはどういうものかということを再確認できる良い本だと思います。
 また、日本のネオ・リベやリベサヨ(hamachan先生が名付けたことも理解できる内容でもあります。)を一括りにして「レッセフェール経済の使徒」という形で登場させていますので、日本における「政治的・経済的・思想的ネジレ」ということも分かりやすい形で説明されているため非常に読んでいてうなづくことが多いです。

前回の津波被災の記録120でのGDPの加算項目は、本の内容に一部手を加えたものですが、様々な視点と思考が必要なことを気付かせてもらえます。リフレ派の良心と称する方の「思考の型」などが学者としての大成も含め有害な部分を持つことにも考えさせてくれます。
 
 アベノミクスやリフレ関連の本を読んでの批判・賛美はそれぞれありますが、この本はそれらに対しても、考えるうえで貴重な指摘をなされていますから、批判・賛美の両方にも取れる内容になっているのにもかかわらず「ソーシャル」という軸がぶれていないのが良いと感じました。
 現在「限定正社員」「ワークライフ・バランス」「ブラック労働」について様々なブログ・ツイッター・本で賛成と批判が書かれていますが、この本で書かれているの内容はhamachan先生やマシナリさんのhttp://sonicbrew.blog55.fc2.com/blog-entry-566.html で取り上げられている野川忍先生が「social」という言葉の概念についてつぶやいたtweetも読了したタイミングでしてので、読んでよかったなということとこの本がどちらかというと日本の保守的な感覚との近さも感じられました。(でも、リベサヨな方達の主張の源泉がこの本で書かれている表層を真似しているだけということからですが。)


目次

第一章  GDP 国内総生産
第二章  幸福の追求
第三章  人々によい生活を提供する
第四章  膨大なコストをかけても不健康
第五章  暮らしの不安
第六章  時間に追われる
第七章  最大多数にとっての幸福
第八章  能力(キャパシティ)の問題
第九章  持続可能性
第十章  アメリカ経済の歩み
第十一章 よい時代がいつなぜ悪くなっていったのか
第十二章 住宅、銀行、融資、借金、破産、差し押さえ、失業、通貨
    ・・・収拾のつかない混乱
第十三章 二十一世紀の経済-生命と自由と幸福のための経済 


 7月10日が労働保険の申告期限ということで、書類を作成していて浮かんだのが、リフレ派の消費税反対は、労働保険料も納付額が上がるのが嫌というのも理由の一つかもしれないってこと。リフレ派には個人事業主も結構いるので少し不思議ではあったのだけど、会社の社会的コストの削減への固執と考えれば納得するし、消費税反対の政党が「労働者」より「消費者目線」であるのを見れば、労働者のセーフティーネットを破壊することで、経営を維持したいと言うだけの話なんだ。ソーシャル何て理解できないわけだ。そりゃhamachan先生が「リフレ粉」っていうのもうなずける。

 飯田泰之 @iida_yasuyuki 15 6月
アベノミクスのよい点と問題点をしっかり指摘.金融政策を頓挫させず,財政で支えながら再分配を!→朝日新聞 アベノミクスに欠けるもの ジョセフ・スティグリッツ t.asahi.com/bb4x

消費増税の影響緩和を ノーベル賞のスティグリッツ教授

 ノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大教授は31日、東京都内で共同通信などのインタビューに応じ、来年4月からの消費税増税に関し「消費税引き上げだけをするのは時期尚早だ」と述べ、日本政府は景気の落ち込みを抑える施策を組み合わせて、増税の影響を緩和するべきだと指摘した。

 税収確保のため、二酸化炭素(CO2)の排出量に応じて課税する「炭素税」を重視していくべきとの考えも表明。「環境を保護し、将来の世代を守る。家やビル、車を新しくする必要が生まれて経済活性化にもつながる」と説明した。

「経済成長って、本当に必要なの?」においても、環境(炭素)税については書かれています。ただリフレ派がおかしいのは、消費税は反対を表明しますが、環境(炭素)税を否定しません。なぜなのでしょう?

 消費増税は単純で一方的な増税ではなく財務省の調整による減税規模も同等以上と言うのが前提と成っています。そういう報道が少ないということも不思議なことですが、減税によって得するのが住民ではなく法人というのが大きいと思われます。


炭素税導入で2020年度CO2排出量20%削減と2.0%経済成長の両立を目指せ:経済百葉箱 番外編 2013年度

▼要旨▼
 世界的に温暖化防止への意識が高まる一方、わが国では東日本大震災以降、火力発電への依存度が高まり、CO2排出量は増加傾向にある。しかし、CO2排出量削減を無理に進めることは、わが国の経済成長を阻害する可能性が高い。そこで我々は、経済成長とCO2排出量削減を両立させる方法を探り、化石燃料由来のエネルギー価格を現在の4倍程度に上昇させる、最大300%の炭素税を課すことが有効であるとの結論に至った。政府が企業に対し排出枠を設定し、その売買を可能にする排出権取引制度(キャップ&トレード)やエコポイント等の施策と比較して、炭素税は、公平性や持続可能性に優る。増加した税収を使った、省エネ産業への補助金法人税減税等の財源効果もメリットとして考えられる。
 また、炭素税導入により、電気代等のエネルギーコストが高騰するため、再生可能エネルギーやスマートシティ等の環境ビジネスの発展が期待できる。炭素税をテコに技術力向上を継続していけば、今後世界的に拡大が見込まれる環境ビジネス市場でのプレゼンスを一段と高めることにより、わが国の経済成長を2%まで押し上げることも可能であると考えている。

 スティグリッツ教授の提案を受け入れた場合、環境(炭素)税に間接税のうち上流で、「原油・石炭・液化天然ガス」に対して、「石油石炭税・地球温暖化対策税」がかけられています。下流は「ガソリン、軽油、ジェット燃料、灯油、重油」に対して「ガソリン税軽油取引税、航空燃料税、石油ガス税電源開発促進税」が課せられています。また、自動車関連税として「自動車重量税自動車税自動車取得税」が課せられて約7兆円の財源となっています。
 ここでもうお分かりになるとおり、リフレ派の求めるのはこれらの減税です。東京電力を叩き「脱原発で経済成長」の根拠は地方税収の喪失による経済成長を唱えていることがわかります。
 かりに「税制のフラット化」により上記の税が統合して「環境(炭素)税」となった場合、庶民への税負担が4倍以上となる300%の炭素税による企業淘汰と排出権取引による金融投資で税を逃れる大企業のための社会と言うことになります。リフレ派の言う経済成長とは大企業と金融投資家が社会的コストを払わない「レッセフェール経済」の確立となりますね。

訂正 10→11