津波被災の記録114
【東京支社】11日で東日本大震災から2年1カ月。被災地ではまちづくりの計画などが整い、ようやく「いざ工事」という段階に入り始めている。ここから防潮堤建設や集団移転など復興事業を加速させるには、用地取得の迅速化が鍵を握る。本県は所有者不明の土地が多く、用地交渉は難航が懸念される。復興庁は土地収用手続きの簡素化や民法の財産管理人制度の活用など対策を新たに打ち出した。ただマンパワー不足の中、現行制度の枠を出ておらず、より強力に推し進めるため県や地元市町村は法改正など抜本対策を求め続けている。
国が収容を簡素化 被災地は「抜本対策を」
県は本年度から2年間で防潮堤や災害公営住宅などの復旧・復興事業に必要な用地を取得する方針で、これから用地交渉を本格化させる。
だが、県によると取得予定用地約5300件(1月末現在)のうち約1900件で用地交渉の長期化が懸念されている。土地の所有者が行方不明だったり、相続人が多く交渉に時間がかかるためだ。
こうした中、復興庁は所有者が亡くなったり相続人が不明の場合に当事者に代わって土地を売却できる財産管理人制度の活用を提案。財産管理人に選任された弁護士らが家裁の許可を得て土地を処分できるため、収用手続きよりも期間を大幅に短縮できるのがメリットだ。沿岸部の家裁支部を中心に書記官を増員し、相談態勢を整えた。
紙面抜粋
土地収用については、審査や裁決などの手続きを効率化した。
昨年11月に国がモデル地区に選定した釜石市の片岸地区の防潮堤建設事業は、国に提出する事業認定申請書の作成に1〜2年かかるとみられていたが、約1ヶ月で完了した。国はモデル事業で得たノウハウを他地域に広げ、迅速化を図る方針だ。
根本復興相は「住宅再建やまちづくりのスピードアップを図る具体的な手立てが講じられた」と自負する。
一方、県は早い段階から現行制度の運用見直しにとどまらず、所有者不明の土地の管理権限を市町村に与える特別措置を国に要望してきた。
県の佐藤悟県土整備部長は「(今回の復興庁の措置で)改善が進み一定の効果はあるだろうが、用地収得は業務量や交渉相手が膨大。手続きの簡素化、スピードアップにつながる改善を引き続き求めていく」と抜本的な制度改正を訴える。
紙面3面抜粋
階氏、土地収得で対策要請 衆院法務委
【東京支社】民主党の階猛衆院議員(岩手1区)は10日の衆院法務委で質問に立ち、被災地の自治体が所有者不明の土地を収得する際の抜本対策を要請。
谷垣禎一法務相は「与党の中で制度を変えられないか議論されている。与党や国会での議論に十分注意したい」と述べた。
階氏は、所有者が不明の土地取得で財産管理人制度の活用が検討されていることに触れ「今までの制度の手直しで十分なのか疑問に思っている。場合によっては法制度の見直しも必要だ。」と訴えた。
弁護士ら財産管理人制度の土地売却代金の保管期限についてもただし、谷垣法務相は「解釈論では、不在者の生死が判明するまで保管義務を負うということにおそらくなると思う」と答えた。
河北新報 東北のニュース/「管理権限市町村に」 用地取得問題で岩手知事が釜石視察
東日本大震災の復興事業の遅れの要因となっている用地取得問題で、達増拓也岩手県知事は3日、国が課題解決のモデルとしている県施工の岩手県釜石市片岸海岸防潮堤事業の現場を視察した。地元住民との意見交換で、用地取得を迅速化するため、市町村が所有者不明の土地を管理する権限を持つ新制度の創設を住民、県、市が連携し、国に要望することを確認した。
片岸海岸防潮堤事業は、震災で損壊した長さ758メートルの防潮堤を高さ6.4メートルから14.5メートルに整備する。
県によると、取得予定地42筆のうち約6割に当たる24筆が、所有者不明または相続未処理などとなっている。関係する権利者は218人に上り、取得に時間がかかっているという。
国は解決策のモデルとして、通常2年かかる土地収用手続き期間を4〜5カ月に短縮する事務の簡素化を提示しているが、県は「抜本的に改善しないと土地収用は円滑に進まない」と指摘。市町村が地権者に代わり土地の権限を持つ新制度創設を訴えている。
地権者の代表7人が出席した意見交換会では、県の要望に理解を示す意見が多く出た。片岸地区地権者協議会の山崎長也代表理事は「安心して住むために早く防潮堤を整備してほしい。用地取得の課題を共有し、協力したい」と述べた。
県によると、2015年度までの完成を目指す県と市町村による防潮堤などの海岸保全施設は12年度末現在、県内136カ所のうち完成は15カ所。着工済みを含めても60カ所にとどまっている。
県は14日、用地取得の迅速化に向け、国がモデル地区に選んだ釜石市片岸地区の防潮堤事業などについて、土地収用の手続きを始めた。手続きの第一歩となる事業説明会を同市鵜住居町の鵜住居小仮設校舎で開催。地権者への用地単価提示も行い、合意に基づく「任意買収」と強制的に用地取得できる「土地収用」を同時に進めることで期間短縮を図る。土地収用に乗り出すのは県内初めて。
片岸地区は土地所有権件数42件のうち、地権者不明や相続未処理などで用地取得に通常より時間がかかる土地が約6割の24件。事業完成の遅れが懸念される中、任意買収と土地収用を並行し、用地取得を迅速化する。土地収用については国が、審査や裁決などの手続きを効率化した。
出席した片岸地区地権者協議会の山崎長也代表理事は「地域がまとまって、協力していきたい。安心して暮らすことができるように一日でも早い完成を望む」と思いを語った。
いいニュースです。でも、なんで今までやらなかったのか? 〜 「土地収用法」、「民法の財産管理人制度」の適用で。 復興の為の土地取得には明かりが見えた感じはします。 - 山と土
復興庁
・復旧・復興に係る土地の権利等の問題への対処について
・防災集団移転促進事業における用地取得に係る境界画定の考え方について(案)
不動産登記法(明治三十二年法律第二十四号)の時点からの土地や明治三陸津波、昭和三陸大津波における集団移転の際に、共有地化された土地が数十年間に相続人不明や相続未確定となり権利者が増大したため整理を必要としなければ復興への道筋は遠いのは当初から指摘されていたことです。
「復興が遅れている」というのは「憲法」を踏みにじって「財産権」を無視しろと言うことに他ならないので、他の地域から見れば遅々としか進まないのは被災地の国民をぞんざいに扱っているのではなく、国民として扱われて証明でもあるのです。
被災地は「抜本対策を」とか、被災地の議員が「法制度の見直し」を言えば、「憲法改正」にまでも言及されるのは当然でしょう。復興が遅れないようにするために、権利を制限することを明記することを新憲法案に入れろってことに受け取られるだろうなあ。
今回のモデルとなった「片岸海岸防潮堤事業」は、東日本大震災後の動きを聞いていても、町内会が自主的に用地の権利者に連絡をとったり、離散した住民に自治体からの説明会の連絡や今後の復興に当たるための自主的な組織を構築して住民が忌憚のない協議を行う道筋を丁寧に行ってきたから出来たことだろうと思います。
かっての明治・昭和の津波の被災から立ち上がるために「自助・共助」としての「土地の共有化」をしたことが、数十年と言う時間を経ると復興の足枷となるということを考えると、市町村道の私有地部分や共有地も含め今回清算できないと未来になお困難な問題を先送りしてしまいそうです。
宮城県での話を聞いても、応援職員の対応の在り方は上記の問題をより困難にする態度が目立っているとも聞いています。実際のところ、今回の「片岸海岸防潮堤事業」も応援職員の横暴な態度(数十分間にわたって住民を罵ったと聞いてます。流石に住民も切れたと話されていました。)で住民の反発から中止に陥る寸前だったことは知られていないことです。応援職員にとっては、自身の所属する「都道府県民・市町村民」にだけ職務に励むのは理解しますが、辞令を受けて被災地に来て、ぞんざいな扱いをするように感じられるってことは、所属する地方自治体での勤務態度もそうなのかとがっかりしますよね。
それにしても岩手県の考える「抜本的な制度改正」ですけど、「国民」としての権利を全面停止するのが前提じゃないかと危惧しては要るんですよ。東日本大震災を含め被災地の住民の権利を含め「国民」として処遇するのは「国家公務員」だけというのなら、「霞ヶ関」に被災地は託すしかないでしょう。とても「道州制」とか「地方分(主)権」とかは怖くて賛同できません。