津波被災の記録98

商店街再建を支援
根本復興相 新年度で予算化の方針
20130122 岩手建設工業新聞

 根本復興大臣は20・21日の両日、本県を訪問。21日には県との意見交歓会を行い、共同で商店街を整備する場合にはタウンマネジメントの考えを入れた上での支援措置を講じていく考えを示し、新年度予算に事業費を盛り込む考えを伝えた。
 意見交換には、国側から根本大臣、長島忠美政務官ら、県側からは達増知事、沿岸自治体の首長らが出席。根本大臣はあいさつの中で「政策を総点検し、再構築するよう指示を出している。現政権は復興と日本経済の再生、国家の危機管理を最優先に掲げており、復興のスピードアップに向けては、復興庁の司令塔機能の強化を図っている」と、復興庁の取組状況を説明した。
 達増知事は「今年は基盤復興推進年であり、本格復興の基礎づくりをしっかりと進めていく。国も人的支援や財源確保、用地確保、鉄道復旧支援などに取り組み、被災者に寄り添い復興を強力に推進することを改めて期待する」と呼び掛けた。
 意見交換会は、復興交付金の運用、制度上の問題点、鉄道のまちづくりの課題、住宅再建などを主要なテーマに行われた。意見交換終了後の会見で根本大臣は「共同で商店街を整備する場合の支援措置が無いとの話が出された。新たな商店街の共同開発や店舗整備に対する後押しを、新年度予算で措置できるよう考えていると伝えた。タウンマネジメントの考えも取り入れながら、まちづくり会社を中心に進める手法が望ましいと思う」と語り、グループ補助金をアレンジした形になるとの見通しも示した。
「季刊まちづくり37号」を読んで、いつも通り力作だが、石巻は再開発事業にこだわりすぎではないか。

季刊まちづくり37
(2013/01/15)(有)クッド研究所/(株)学芸出版社

 いつもは何も季刊まちづくりに批判的な意見はもたないが、いくつか今回は気づきの点。

(1)西村先生のスカイツリー論。景観問題もあるが、そもそもこのBSの時代に、地域局を活かすための地上デジタル塔を新しくつくったという、反時代性をどう考えるのか。離島にはちゃんとBSで全局ながれていますよ。本土はスクランブルかけているけど。全局BSで流せるのは当然。

(2)石巻のまちなかの再生については、大地主さんが、災害公営をもってきてやるタイプの市街地再開発事業をまあ、なんとかなるとしても、通常の高松丸亀をまねたような、商業系の再開発が成り立つのか。高松丸亀の実態を知っているのか。そもそも、衰退している商店街に床を積みまして、そこで事業費を回収する手法が成り立つと思っているのか。

 神戸の長田町の反省が活かされていない。再開発コンサルタントというグループが再開発をしたいと思っているとしか思えない。津波復興拠点で、土地を市有化して、土地代ゼロにして、仮設的な簡易な建築物で事業収支をあわせていくのが筋だと思うが、もう手遅れなのかな。

 浪江の話は、建築学会の今月号の特集と一緒によむと理解が深まると思う。

津波浸水地の市町村による土地購入の目的が何ら説明がないため、霞が関が考えるようなレベルに地方自治体職員も被災市町村民が達していない(残念だけど、当人たちに自覚がない。)。総務省財務省等の本省から派遣された職員にしてもそういうことを促す先導者にもなれていない。少しは本省から指導・指示を入れるべき時期ですよ。指摘される点は、震災後にコンサルタントに地方行政が振り回されたのは、民主党の「官から民へ」「新しい公共」によるものだと確信しています。
 
 浸水地域購入と土地嵩上げという物理的に不可能なことを推進して、別の箇所に仮設商店街を建設することで、「がれき撤去の分散作業」という復旧効率を落して、市有地化による「簡易建築物による商店街形成」→「グループ補助金」の構成員になれなかった事業所が救われない再建に向かった。採択されても、嵩上げで再建地が決まらないという何のために頑張ったかも分からなくなる補助金採択という流れも、1次(水産加工業・大企業)、2次(製造業・宿泊業・大企業)、3次(自動車関連産業・宿泊業・大企業)、4次(商店街・窯業・自動車関連産業)という事前に優先採択先が決定していて、他の産業はだしても無駄だという、半分真実半分デマが被災地に流れていた。

 今後の市町村が購入した浸水地域の土地は、再開発コンサルタントデベロッパーに格安で購入されることになるんだろう。それにしても「グループ補助金」をアレンジした「商店街形成(整備)補助金」!?
 「グループ補助金」でも構成員所有の土地を整理統合しつつ「共同店舗」の設立・運営する「商店街振興組合(商店街振興組合法)」でもできるけど、「まちづくり会社」を中心としたとなると、マシナリさんが指摘する「個人の財産形成の目を完全に摘み取る」ということと、「事業者から出資者への転換」による現実を直視させる方向へ舵を切るのかもしれない。

 もともと自分は、浸水地域に市町村による「店舗・事務所・住宅(介護)複合施設」建設と釜石市の他の地域よりも充実した医療体制(国立・県立・医療法人等)がリンクしたスマート・コミュニティ形成を軸とした商店街の再構築がベターかなと漠然と考えてはいました。

 中心市街地の活性化に関する法律(平成十年六月三日法律第九十二号)を適用するわけでもなく、アレンジした「商店街形成(整備)補助金」とは、下記の法律を全体適用するということか。

○TMO計画 (中心市街地整備改善活性化法 ) →高度化事業計画(中小小売商業振興法)
中心市街地商店街整備計画(法第4条第5項第1号(事業の用に供されていない店舗を賃借する事業を含む))→商店街整備計画(小振法第4条第1項)
中心市街地店舗集団化計画(法第4条第5項第2号)→店舗集団化計画(小振法第4条第2項)
中心市街地共同店舗等整備事業計画(法第4条第5項第3号〜第6号)→共同店舗等整備事業計画(小振法第4条第3項)
中心市街地商店街整備等支援事業計画(法第4条第5項第7号(事業の用に供されていない店舗を賃借する事業を含む)→商店街整備等支援事業計画(小振法第4条第6項)

 根拠法が分からない(たぶん上記の法律を適用)けれど、高度化事業計画の認定→上記のアレンジ→「グループ補助金」というのは、困窮した者へ「自助・共助を強制する構造改革」とつくづく感じるなあ。

追記(20130123)
 グループ補助金 5次後半のプレゼンは本日らしい。33グループだと15分単位で1日でやるのかわからないけど、頑張ってもらいたい。
 東大による院生を利用した「まちづくり会社」も、どうも迷走しそうだな。

補足
 内閣府官僚が指摘する「仮設的な簡易な建築物で事業収支をあわせていくのが筋だと思う」については、経済産業省中小企業庁は、本来「グループ補助金」で、仮設的な再建(仮設事務所)→本再建を認めてました。3次以降から記述が消えたのは、仮設商店街ができてしまったから。国と市町村の復旧の考え方と浸水地域を拒絶するように扇動した大学・NPO等のせいもある。復旧・復興が遅れているのはそういうのもあるから「新しい公共」を持ち上げすぎないように釘をしとかないといけない。