津波被災の記録93

補助事業と委託事業
マシナリさんに取上げて頂いたので、途中までのまとめは下記の通りです。正直なところ、自分は頭の足りない方なので間違っている方が多いと思いますので、その点はご了承願います。


グループとは 「共同で自主解決(共助)」
 中小零細企業(自営業者含む)は、規模の過小性、技術力の低さ、信用力の弱さなどによって、経済活動の面で不利な立場に立たされている場合が多く、個々の中小零細企業の経営者の能力だけでは解決できません。(当人達がどう思っているかは別ですが)
 このため、東日本大震災により被災した中小零細企業が直面している経営上の諸問題等を解決し、その経済的基盤の補完を図るため、複数の中小零細企業が集まり、「共同」で自主的に解決することで、『復興のリード役となり得る「地域経済の中核」を形成する中小企業等グループ』を結成すること、すなわち「グループ化」をすることが補助金を得るために必要となります。

「実行組織」と「グループ化」
 『復興のリード役となり得る「地域経済の中核」を形成する中小企業等グループ』はあくまでも表面上の名称です。「共同」で自主的に解決する組織とは、「競争的市場原理」「選択と集中」を強めることが求められます。大多数のコンサルタントは「弱みを補いつつ、強みはますます強くする」→「コア・コンピタンス確立」→「競争優位の源泉」の確立を構成員に考えるように言いますが、「SWOT分析」の意味も震災以前からの経営を検証することの意味すら分からない状態で書き方だけを要求することに陥ってしまったことが混乱の要因の一つです。
 簡単に言うと、子供に「お父さんのお仕事って何?」に答えられない経営者が、「仕事=経営をどの様に遣って来た事が分からないので、俺がどのよう経営してきたか(書き方)を教えろ」なんです。
 ネオリベ・リベサヨな方達からすれば本来こういう経営者は市場から追放されて当然との声が上がるはずですが、支援を拡充しろという声が高まったのは、コンサルタントからすれば、申請段階から多数の顧客を確保する好機であり、採択された「共同事業」によっては、数年以上に渡る顧客の維持が約束される事業であるという面があるからですし、この補助金の性質によるものでもあります。

 では、実行組織にはどんなものがあるのでしょう。
 火災共済協同組合信用協同組合、企業組合、商工組合、協業組合、商店街振興組合、生活衛生同業組合など11種類の組合約4万組合が全国で活動しています。
 これらは終戦後から大企業に対して中小零細企業の生き残りを目的に設立されていましたし、株式会社及び有限会社(「事業部制」「カンパニー制」「事業持株会社制」等による事業継続の確立など)、LLC(合同会社)、LLP(有限責任事業組合)などもその後の経済環境への対応として、第二会社として同様のことを行うために利用されるようになってきています。
 地方自治体の場合などを参考にすると「広域行政事務組合=グループ」と同様に考えれば分かり易いと思います。
 「グループ化」とは、「共同」で自主的に解決する共同事業を営む起業(法人設立)・企業化(経営体質の変革)を行う事が条件の補助金だと言う事が分かると思います。現在までの採択されたデータ分析では、岩手県中小企業団体中央会の震災以前からの会員であることと、会員となることを条件としたグループの採択率は約60%を超えるからです。ただし、「株式会社等」「人格なき社団」の場合も選択肢としてありますから断定することはできません。この辺りは各県の担当部局の裁量権の範囲にあると考えられます。(採択・不採択理由は一切しないとの方針が、失注管理をマネジメントさせないというのも担当部局の性質上からして、混乱の一因となった。)
 震災から様々な各県団体や全国組織の動きの鈍さが本来は経済産業省を頂点とする組織ではなく、霞が関の他の省庁の関係団体に所属する末端構成員の変動要因と成り得る面をこのグループ補助金の採択以降の関与によってどのように解体されていく危険性を持っているかは自分にも分らないところであり、不安に感じているところであります。既存の組織構造の解体を求める「構造改革」一面というわけですね。

自助努力を伴った構造改革のご褒美
 当然のことながら、「共同事業」を通じた「生産性の向上」等を効率的に推進し、その共同の利益を増進することを目的としていますので、「生産性の向上」への取組による付加価値を高める事が求められますから、イノベーションが行われているかが審査されることになります。こうしたことから「自助努力による構造改革」に前向きなグループにだけ補助金を与える「新自由主義(ネオリベ)行政」を肯定・推進するための事業であることになります。

事業検証と拘束
 補助金(税金)を国・県が交付(投資)する以上、効果を検証する必要があります。そのため「中小企業等協同組合法」、「中小企業団体の組織に関する法律」等により法人として登記されることで、事業報告書が毎年県に提出されることになります。採択された「共同事業」を含む補助金がどのように管理されているかを把握できるわけです。ですから「烏合の衆」に対しては、採択はできないと言う事になります。
 被災中小零細企業経営者の大半は、「3/4の補助」を貰って終わりと考えていますがそうではないのです。マシナリさんが指摘するように、基本的には耐用年数の期間は国・県の関与は続きます。噂としては約10年と言われていますがどうでしょう。水産業に対する水産庁の「8/9の補助」は約9年らしいですし、「釜石市中小企業被災資産復旧補助金(岩手県単独予算)」は5年と明記しています。ただ、共同事業を含めた拘束性やイノベーションの要求もないわけでして、他の補助金や制度を組み合わせることで、むしろ選択した方が良いと思われるのですが、窓口の市町村職員が説明をしないものですから、岩手県が予算措置をしても利用が少なくなるわけです。やる気がないですね。県職員と市町村職員の能力差というべきか認識のズレがこういうところにも表れていることを見ていると、地方分権地方主権というのが如何に無謀で難しいことを考えさせられます。



「中小企業等グループ施設等復旧整備補助金交付要綱」には

(状況報告)
第13条 中小企業等グループ又はその構成員は、補助事業の遂行及び支出状況について知事の請求があったときは、様式第5号により、速やかに状況報告書を知事に提出しなければならない。
(実績報告)
第14条 中小企業等グループ又はその構成員は、補助事業が完了したとき又は第10条の規定による廃止の承認を受けたときは、その日から15日を経過した日又は補助金の交付決定があった日の属する年度の3月31日(補助金を全額概算払により交付を受けた場合は、当該年度の翌年度の4月5日)のいずれか早い日までに、様式第6号による補助事業実績報告書を知事に提出しなければならない。
2 中小企業等グループ又はその構成員は、前項の実績報告を行うに当たって、補助金に係る消費税仕入控除税額が明らかな場合には、当該消費税等仕入控除額を減額して報告しなければならない。
3 補助事業の実施期間内において会計年度が終了したときは、翌年度4月15日までに第1項に準ずる報告書を提出しなければならない。

となっています。


共同事業の種類
 
 一般的なものは、共同生産事業、共同加工事業、共同販売事業、共同受注事業、官公需共同受注事業、共同購買事業です。
 産業別、商店街等向けは、 共同保管事業、共同運送事業、共同宣伝事業、共同検査事業、 共同研究開発事業、特許権共同利用、共同施設利用、共同店舗利用、アーケード管理、共同駐車場管理、組合会館運営、共同リース事業、金融事業、代行払精算事業、共済事業、教育情報事業、労働保険事務組合でしょうか。
 最近のものだと、前払式証票(共通商品券・地域通貨)発行事業、前払式証票(プリペイド・カード)発行事業、ポイントカード事業、外国人技能実習生共同受入事業が採択されたものの中にも見られます。
 なおこれらの事業を実施する際は、大企業を構成員とする場合は独禁法に抵触する恐れがある為、事前に公正取引委員会に書面で許諾を受ける必要があります。1次~4次申請において、大企業との共同事業を採択されておりますが、コンプライアンスが十分であるかは全く分からないこととなっています。

 東日本大震災の特殊な事情から福島県では、事業組合や株式会社設立による「除染事業」の「共同受注事業」をグループ補助金において採択されたと思われるのに、朝日新聞とかが被災した中小零細企業の再生を阻害するような記事を載せるわけですから、福島県民による直接受注による除染作業をさせないようにするための記事かと勘繰りたくもなりますね。なんでこんなにも地方に金が落ちることも含め、朝日新聞脱原発・瓦礫処理反対に親和性の高い方達は復旧・復興が大嫌いなんでしょうね。

追記
事業者の集積
 大企業・中小零細企業が震災以前から認定を受けている補助事業がある場合や県の政策の遂行のために不可欠な分野の事業所の集積が成されている場合、県としては採択の優先順位が高いわけです。申請された中身がどうであろうと。(1次~3次)
 集積をどのように構成するかは、グループの構成内容そのものとも関わりますが、イメージは、正会員(補助金対象事業所)・準会員や賛助会員(補助金非対象法人・個人の参画者)として、「共同事業」に取組めるかが問われることになります。
 コンサルタントや代表者だけに全て作成して貰ったことにより何をするかもわからずに名前を連ねた方も多いと聞いていますから、県段階での補助事業の承認を審査会で通っても、実施状況の確認の際にトラブルが生じる可能性が多いと危惧されます。ここが理解をされていない被災中小零細経営者や事業内容の説明を受けていない参画者の存在がグループ補助金では問題を大きくしたところです。何をするかもわからない「共同事業」を理解する気も無くただ補助金が簡単に貰えたことを風潮してしまったため、書いて出せばだれでも貰える補助金=グループ補助金が被災地を駆け巡ってしまいました。さらに内容が分からないシノドスを始めとするメディアや大学教授等が的外れな批判を加えたことで歪んでいったのです。

追記(20130111)
 2013年度の経済産業省の予算案では、被災地の復旧・復興事業として地元中小企業が共同で事業を行う場合に国や県が補助する「中小企業組合等共同施設等災害復旧事業(グループ補助金)」と名称が修正されて、中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業の中身が見えないで混迷した部分を明確化することになる模様。
 6次申請に間に合わなかった方や今後申請を希望する方は、7月頃を目標に検討をすることが良いのではないでしょうか。復興事業計画書(別紙1)構成員別事業計画書(別紙2)の内容は他人任せにせず、自分たちのレベルに合わせた確実に実施できる事業を検討しましょう。シノドスにでているような大学教授等の実績作りのモルモットにされないように注意をお願いいたします。