津波被災の記録89

 被災地(岩手・宮城・福島)の三県においては、11月30日午後17時締め切りのグループ補助金への対応に必死で、それどころじゃなかったというのはどこにもでていない。
 二回目となる今回の申請をするさいに考えさせられてことは、本来グループの支援者になりうるべき既存の組織の内、県庁所在地の県団体が審査員と化してしまったことが、混乱を深めた一因であるだろうということ。また、全国組織(東京)がこの件についても全く機能しないことをされけ出して、地方の末端から中央への「意見集約」のシステムに劣化というか断絶があることが明らかになったこと。
 この辺りも含め審査結果後(12月20日前後)にグループ補助金申請については整理したいと思う。今後の次回申請(あれば)や関東以西の震災時にも実施する可能性が高いだろうから。

復興予算に見る被災者主権 - 津久井進

今年の10月に枝野経済産業大臣が、国会でグループ補助金が被災地に届いていないことを指摘された際、「熟度が足らないため」と答弁されました。「熟度とは何か」と追及されたものの、それ以上ははぐらかされ、答えられなかった。私は「熟度が足らない」とは、被災してめちゃくちゃになってしまった商店主は、復旧に手一杯で補助金の申請までたどり着いていないという意味かと最初は思ったのですが、しかし、いまは単純にグループ補助金の申請書の書き方がこなれていないという意味なのではないかと見ています。

たとえば立地補助金を申請する大企業の場合、申請書は経済産業省にダイレクトに提出できます。しかしグループ補助金の場合、地域の人が集まって話をし、なんとか合意したものを素人なりに書類にし、市町村に提出します。それを受け取った市町村は、書類を審査し、必要があれば再提出を求め、協議を繰り返したのちに県に送ります。やはり県でも協議をし、それを通過したものがようやく経産省に提出されるプロセスとなっています。

ここには現場を見ずに書類しか見ていないことなどいくつか問題がありますが、最大の問題は書類の書き方を知るはずのない人たちを助ける人手がないことです。民間の事業者を支える仕組みができていないんですね。ですからいくら予算がついても同じことが繰り返されてしまう。それを「熟度が足らない」という霞ヶ関の論理がおかしいのではないでしょうか。

※この人を含めてシノドスって被災地にとっては有害以外の何物でもないです。仕組みそのものを知らないで批評するってなんなのでしょう。
 「熟度とは」基礎自治体職員が担ってきたレベル(行政能力・運用・政策認識等)まで含まれるわけです。今までは代行して貰っていたことを中小零細企業が認識できていないことが、グループ組成において難航するわけです。大企業の正社員のレベルは旧帝やそれに準ずる大卒・院卒で構成されているわけですから、彼我の差は明らかです。確かに中小零細企業の経営者も大卒者は増えているわけですが、普段からマネジメントしているかというのとは全然対応能力が違うことを「霞ヶ関の論理」として言うことはすごく恥ずかしい話だと思いますし、単に公務員制度を批判し、代行業務拡大としてのコンサルタントビジネスの拡大を言っているにすぎません。

財務省から釜石市副市長へ 嶋田賢和×飯田泰之

飯田 ぼくは逆の意見を持っています。誤解を恐れずに言うと、30戸程度の集落の小商店はもともと商売として成り立っていない。これは巡回買い物車の設定など行政サービスでの対応が必要なんじゃないかと。

一方で、シャッター通りは行政が手を加えてどうにかなる問題ではないという点でより深刻かもしれない。おそらく震災前からシャッター通りだったのではないでしょうか。

嶋田 震災前に来たことがないのですが、典型的なシャッター通りだったと聞いています。

飯田 少し前に滋賀県彦根市に行ってきました。彦根市の商店街は典型的なシャッター商店街で、ほとんどのお店のシャッターが下りている。開いているお店も、入るのに躊躇するくらい、やっているかどうかわからないようなお店ばかりでした。気になって「みんなどこで買い物しているんですか」と聞いたところ、長浜のショッピングモールに行っているらしい。

嶋田 釜石市も同じ状況です。土日には盛岡のイオンに買い物に行くんです。震災前の人口が3万9000人で1万6000世帯くらい。土日は一日に2000台弱の自動車が買い物に行くようです。すごい数ですよね。

じつはいま、イオンやユニクロ中心市街地に立地させる計画があります。買い物客を呼び込みつつ、やる気のあるお店にはテナントを用意して、初期投資を軽くして応援していく。そうやって少しずつシャッター通りのお店の組み替えをやりたいと思っています。

飯田 イオン誘致は面白いですね。

日本中の商店街の正しい選択肢は、イオンがあっても成り立つ商店街にすることだと思います。イオンができればイオンと同じものは売れないことがわかるのでいいかもしれない。それに、いま商店街が抱えている最大の問題は足を運んでもらえないことだと思いますから、大型店でお客さんを寄せて、その周辺にお店を立てて足を運んでもらうようにできたらいいですね。

嶋田 やはりイオンの話が持ち上がったとき、一部の人から「商店街を潰す気か」と言われてしまいました。でも他の町に大型店が開店して買い物客が流れていってしまったらどうしようもありません。ゲーム理論的には解は明らかで、できるだけ早く開店しないといけないんです。隣町の人がユニクロに来て、釜石ラーメンを食べて、イオンで買い物をして帰る。人がうまく流れるように工夫して、再生したいと思うんですよね。

そもそも努力していない店が繁盛しないのは仕方ない面もあります。全国のシャッター通りでも頑張っている店はちゃんとお客さんが来ています。しがない布団屋でも、おばちゃんに営業をかけまくってお客さんを確保している。なかには、ボランティアが依頼されて作業をしているのに、「店の近くでどうして勝手に草を刈っているんだ」なんて言ってしまう人もいるようですが、お茶でもだしてお店に呼び込めばいい。ドアを開けても「いらっしゃい」すら言えないようでは、商売は続かないですよね。

飯田 少し話がそれますが、公共事業の集中投入で労働市場を好転させようという考え方がありますよね。でも、これはちょっと無理筋だとぼくは思う。どうも彼らの土木建設業のイメージは昭和時代で止まってしまっているように感じてならないんですよ。あの頃のように予算があれば、働き手がいくらでも集まるような時代ではない。いまの土木建設業は機械化が進んでいて、ちゃんと訓練しないと仕事になりません。

気になって計量分析をしてみたら、公的土木と公的建設が増えると民間建設と民間土木がその5割くらいだけ減っていました。短期的な仕事に未熟練労働者がすぐに応募して失業者が減るという経路はだいぶ狭くなっている。

嶋田 意味ないですよね。

飯田 もう日本の土木建設業の供給能力は決まっていて、官が取ったら民が減ってしまうんでしょうね。もしやるならば、人材育成を含めて複数年かけてゆっくりやるしかない。

※この二人には二度と来ないでもらいたいですね。
 今回のグループ補助金申請している中小零細業者に「死ね」って言っているひとが「地方再生」を説くって何なんですか。上段は「定住人口」だけでは不足しがちな経済活動を「交流人口」をベースとした商業・工業・観光産業活動の活性化「産業クラスター」を意味が無いと言っているに等しいを財務省主計局出身者の感覚とリフレ派経済学者が、全面否定しているってことですから、全国の自治体職員や経産省農水省総務省をふくめた諸政策を全否定しかねないことを宣言するって何なのか理解不能です。
 後段に至っては、官民受給交代による投資効果や諸政策の導入と整備すら効果が無いという話にしていますから、リフレ派経済学者には、そもそも構造改革的な思考しかないということをここで表明しているわけです。
 この部分は、企画管理部門と現業部門の完全分離による教育・訓練をすでに取り入れながら、10年以上にわたる賃下げの現実は無視しているわけです。そして、大企業と違い解雇や自主退職がおき易い職場環境として厚みが薄い(部署移動の幅)と地域の規模(職種と事業所)についての考察も欠落しているに至っては、こういうのが現役の本省人の感覚や主流な経済学者の意見として喧伝されることは、被災地としては許しがたい事です。

地方経済を救うために思い切った金融緩和を 山本幸三×飯田泰之

――ここ20年の低成長によって地方経済は疲弊しきっています。

山本 私の地元である北九州市では、デフレと円高の影響を受けて、東芝の大工場が閉鎖し、海外に移転してしまいました。新日鐵住金も中国や韓国に押されて生産が落ちていますし、日産やトヨタの工場も業績を落としていて、その影響で下請け会社が疲弊しています。商店街は閑散として、目も当てられません。

よく日本企業の努力が足りないという議論を耳にしますが、これはまったくの間違いですよ。企業の経営者は必死に頑張っています。生き残るためにやりたくもないリストラをし、そのリストラによって景気はさらに悪くなっていく。この悪循環を終わらせるためにも、問題の根源であるデフレと円高を終わらせなくてはいけません。彼らを救ってあげないといけない。

――そのためにも大幅な金融緩和が必要ということですか。

山本 その通りです。

東日本大震災の直後、早急な復興のために財源を確保する必要があると考えました。でも国民に負担を強いる増税は避けなくてはいけません。そこで安倍さんに会長をお願いして「増税によらない復興財源を求める会」という議連を立ち上げ、勉強会を何度も開きました。そして、増税ではなく、国債発行と買いオペによって20兆円の財源を作るべきだと提言していました。

そもそも、復興の前に増税の話が始まっていたことがおかしいんですよ。被災された方は「自分たちのことよりも増税が重要なのか」と落胆するに決まっています。あの悲惨な状況でそれがどれだけ追い打ちをかけたか。当時、日本銀行国債を引き受けるのを嫌がり、財務省増税を狙っていたため、両者の思惑が一致してがっちり手を握ってしまいました。結果的に野田政権下で増税が決まり、復興の対応に遅れが出ている。酷い話です。

増税が決まってから「増税によらない復興財源を求める会」は、デフレを脱却するために物価安定目標政策を導入する議連として衣替えをしました。連日報道されている安倍さんの発言はこれら議連の勉強会をもとにしたものです。いまの市場の流れを見てください。安倍さんの発言だけでも市場の好転がはじまっているじゃないですか。早く政権交代を果たして、景気回復を実現したい。

※この方は自民党で、解散前に日銀総裁を含め噛み付いた方ですね。
 大企業が交易条件の是正と市場獲得のために工場を移転したという話が無いのが不思議です。そもそもEUの拡大やアジア市場におけるドル決裁から円決済が何故行ったのかということを起こしていけばこんな話にはならないはず。それに、「復興税」に対する批判が「復興特区」の免税措置との代替について言及しないのは非常にずるいと感じます。こんな人を持ち上げる「シノドス」「リフレ派経済学者」って被災地からするとムカッとする存在です。
 関税撤廃と振替としての消費税増税による「内国民待遇」としての交易条件改善については、「補助金」の財源が残ることが嫌いなリフレ派経済学者からすれば、消費税に反対することは、わかりますが、それって「地方に死ね」って事なんでしょう。
 金融緩和拡大賛美は、「都市=地方」の人口問題も含めて最終的解決としての焦土を望んでいるとしか読めませんね。
 「ゲーム理論的には解は明らかで、できるだけ早く開店しないといけないんです。」そういうなら公共工事を停止して、民間復旧を最優先しなさいよ。公共工事への対応がなっていないとか批判しているのはお門違いです。リソースを取られて復旧・復興が遅れているのは「ゲーム理論」からすれば至極当然のことでしょう。財務省出身者と経済学者が「復旧・復興の遅延の原因」を被災者に転嫁してますってことでしょ。

追記

kumakuma1967

(マクロ政策の金融政策で民需がデフレ脱却を指向した時にGDPの半分以上になる「公的部門+公的部門と直接取引する民間部門」がミクロにどうふるまうかの期待って考えると財政拡大なしのデフレ脱却って遠そうだな。必要な事やるだけで十分なんだが、どうも必要性が挑戦受けてるような….)
7:49pm 火曜 12月 04

 リフレ派の良心たる飯田氏にその気は微塵も感じられないのも、「公的部門と直接取引する民間部門」の中に、中小零細企業は入れない仕組みを構築することが、景気回復としか読めません。新自由主義構造改革の真の狙いも同様なんで、そろそろ本音をだしたほうがよいのではないかと思う。被災地における創造的復興も同様の仕組み。復興予算流用批判も、公的施設を民間資金でやるためには、創造的復興のためにはじゃまなわけで、中間層の破壊は今後も続くし、「直接的取引」から「間接的取引」へ移行する際には、大企業の皆様にすべてを抑えられて分断されるでしょうね。
 そうならないための「リフレ政策」の変質は目を覆うばかりだな。