津波被災の記録83

岩手日報 2012年9月29日(土曜日)
水産加工 応募が低調
有効求人1倍超の本件沿岸部

 岩手労働局が28日発表した8月の有効求人倍率(原数値)で、沿岸部は2カ月連続で1倍を超え、バブル期以来の高水準となった。一方、地場企業は人材確保に頭を悩ませており、中でも国、県のグループ補助金の活用などで生産設備の復旧が進む水産加工業は人手不足が深刻。生産計画にも影響が出始めてる。震災後に設備増強に乗り出した企業もあり、基幹産業の早期回復に向けて行政支援を求める声も上がっている。

産業復興に影響も

「常に求人は出しているが応募がない。人が増えれば出荷も増やせるんだか」
 津波で工場が大破した釜石市大平町水産加工業「平庄」の平野隆司社長はこうこぼす。
 昨年7月から本格稼働し、冷凍庫の増設などで生産能力を倍増。従業員は震災前より6人増の38人だが、10人程度が不足している。
 国、県のグループ補助金は51グループに577億円の交付が決定。水産加工業関連は17グループで重点配分され工場や設備は再建したが、肝心の生産性は思うように進んでいない。
 一方、沿岸全体の8月の有効求人倍率は1.07倍と高水準が続く。だが、人気は事務系などに集中し、釜石公共職業安定所管内(釜石市大槌町)では水産加工業を含む食料品製造の6〜8月の求人141人に対し、就職したのは40人にとどまっている。水産加工はパートで賃金も安いことなどもあって敬遠される傾向にあるという。
 被災者の思いもさまざまだ。津波で全壊した企業の経理担当だった釜石市嬉石町の女性(49)は、「大津波を目の前で見て、海の近くで働くのは抵抗感がある。求人もパートが多く、なかなか条件が合わない」と打ち明ける。
 内陸に建てられた仮設住宅への転居など、生活環境の変化も求職活動に影響を及ばしている向きもある。
 「賃金を上げたいが、それではコスト競争に勝てない。求人への支援策も欲しい」と訴えるのは、大槌町から釜石市鵜住居町に移転再開した双日食料水産釜石工場の玉山真製造部長。同社は約30人が不足し生産は計画の約7割にとどまっている。
 これに対し、県はなかなか妙案を出せないのが現実だ。県雇用対策・労働室の高橋宏弥雇用対策課長は「パート従業員の絶対数が不足している。水産加工業の人材確保は震災前からの課題。工場見学や企業紹介の機会を増やすなどマッチングに努めたい」と地道な対策を強調する。

※ネットに出ていないので書きお越し。
 水産加工業のグループ補助金採択については、「工場見学や企業紹介」がグループとしての活動項目が理由であるのは分かっていました。その後の観光業との関連も含めた措置であるのは石巻等の産業群を毎年の研修課題としてやっていたから理解はします。
 ただ、「パート従業員の絶対数が不足している。」中国人研修生を利用して儲かってしょうがないと豪語しつつ、地元採用の社員を労基法違反で働かせていたことについては岩手県雇用対策・労働室は、どう考えているのだろう。津波の被災前に過重労働と時間外手当の不支給や労災等が常態化していた経営構造を改善しないで、岩手県と大連との関係を優先させるためだけに採択を急いだとしか思えないんですよ。津波被災後の労基署において解雇させられたことを恨んでいたパート従業員が再開したから来るって考えている経営者の感覚の方に問題がある気がします。

地元でグループ補助金に対する不満が、真面目に取り組んでコンプライアンスを遵守して復旧・復興をがんばろうとしても、そういうグループほど落とす傾向が強いんじゃないかという岩手県に対する疑惑の視線が強いんですよ。ただでさえ水産加工業者が「生活が第一」の方のポスターを貼って、中国人研修生を採用して漁家のパート労働者を優先して解雇したことは忘れてません。

水産加工業の「求人への支援策も欲しい」というは、「賃金助成」=「事業復興型雇用創出助成金」の適用拡大と上限引き上げ要求でしかありません。それをどう都市部の方達に理解を求めないと、無駄な補助金によって、価格が上げられているといわれれます。この部分の代償としてのベーシックインカム(BI)を提言されることまでは、地方自身が理解していない。

 地元の水産物を購入しているところが少ない、北欧等の輸入水産物を中国に加工輸出して、再輸入して再製品化するような産業構造が基幹産業というのはなんだか悲しい現実だな。勝川教授の言う資源管理型漁業にしてもそういう現実までは語らないよな。

 平野復興相を始めとして、県内の民主党議員は「グループ補助金」の実施に前向き手はあるが、補正予算による全国の経済環境調整や自民党からの減額補正をどうさばくかで任期満了までになるのかなと思いますね。