津波被災の記録81

2012年9月25日(火) 岩手日報
全業種 上限2000万円 利用促進へ大幅拡充
県の中小企業被災資産復旧補助金

県は、利用が低迷している「中小企業被災資産復旧事業費補助」(全壊事業者向け)について、製造業・宿泊業以外の業種の補助限度額を300万円から2000万円に引き上げ、全業種一律とする方針を固めた。全壊からの事業再建には多額の復旧費が必要だが、300万円の上限が設定され、被災事業者からは使い勝手の悪さが指摘されていた。根拠の乏しい業種区分を撤廃することで、小規模事業者などの復興を後押しする。
 県は本年度当初予算で、同補助に20億円を計上。年間600〜700件の利用を見込んでいたが、8月末現在の利用実績は103件、3億円にとどまっていた。被災企業の事業再開の遅れが要因の一つだが、限度額なしで最大4分の3の補助が受けられる「グループ補助金」に応募が集中しているのに対し、事業者の関心は低い。
 低調な理由はその使い勝手の悪さが大きい。8月末までの申請分の復旧費平均額は製造業・宿泊業1655万円、それ以外1108万円と、ともに1千万円を上回る。だが、補助額の平均は製造業・宿泊業615万円(復旧費の37.1%)に対し、それ以外は240万円(同21.7%)。製造業・宿泊業以外は平均で「5分の1補助」しか受けられず不公平感も出ていた。
 業種で差をつけていたことについて、県は先行実施した「中小企業被災資産修繕補助事業費補助」に倣ったと説明するが、同補助は全壊事業者を対象としていないなど状況が異なり、業種による上限設定の根拠はほとんどない。
 被災事業者からの要望が強いグループ補助金が継続されるかは、まだ決まっていない。
 県は、複数でグループを組むことや一定の雇用規模などが求められるグループ補助金の採択が難しい小規模事業者などに対し、こうした別の補助制度の利用を促したい考えだ。
 県は今後、共同で補助を行う沿岸市町村と調整した上で、限度額を定めた要綱を改正する方針。過去の利用者についてもさかのぼって適用する。
 県経営支援課の松川章総括課長は「本格的な復旧への支援は、業種によって差をつける意味がなく、むしろ足かせになっていることが分かった。窓口となる市町村の協力を得ながら見直しを進めたい」としている。

※紙面には出たけど、ネット上では出なかったのでメモ。
 そもそも10月31日の期限が迫っている「釜石市中小企業被災資産復旧事業費補助金」を自治体との負担協議もなく一方的に通告する岩手県という自治体ってどうなっているんでしょう。市の担当者は事前に知らされてなさそう。県議会が始まりましたので、議会対策なんでしょうね。宮城県とかにそういう動きが見られませんので、経済産業省自治体の判断に委ねるんでしょうか。
 それに

3.補助金の交付対象経費及び補助金
(1)補助金交付対象経費
東日本大震災により滅失した被災資産(※1 )の復旧に要する経費
(消費税額及び地方消費税額を除く。)
※1 .被災資産とは、所得税法施行令第6 条第1 号から3 号までに掲げる資産をいう。
ただし、ブルドーザー、パワーショベルその他の自走式作業用機械装置を除く。
(2)補助金
補助金交付対象経費の2分の1に相当する額以内の額(千円未満は切り捨て)とし、
限度額は次のとおり。
① 製造業、宿泊業
(日本標準産業分類第11 回改定における大分類F及び大分類Mのうち中分類72 の業種)
・交付対象経費が1億円に満たない場合 1,000 万円
・交付対象経費が1億円以上の場合 2,000 万円
②上記以外の業種 300 万円

8.補助金交付の条件
(1) 事業を再開した日の属する年度から起算して、3年経過した年度(平成27 年度)の終了する日までに、被災時の従事者数を回復すること。
(2) 東日本大震災により被災した企業の復旧経費を対象とした岩手県が実施する他の補助金(中小企業被災資産修繕事業費補助金を除く。)の交付決定を受けていないこと。
(3) 補助事業により復旧した施設設備を市長の承認を受けて処分した場合において相当の収入があったときは、その収入の全部又は一部を釜石市に納付させることがあること。
(4) 補助事業により復旧した施設設備は、事業完了後も善良な管理者の注意をもって管理するとともに、その効率的な運用又は運営を図らなければならないこと。
(5) 補助事業に係る収入及び支出を明らかにした帳簿を備え、当該帳簿及び証拠書類を補助事業終了の翌年度から起算して5年間(平成29 年度まで)保管しておかなけれ
ばならないこと。
(6) 補助事業に係る経理は、他の経理と明確に区分して行わなければならないこと。
9.財産の処分の制限
補助事業者は、補助事業により復旧した資産を補助金の交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、又は担保に供しようとする場合は、市長の承認を受けること。
 財産の処分の制限の期間は、減価償却資産の耐用年数等に関する省令に定められている耐用年数に相当する期間とする。ただし、中古資産についても一般の減価償却資産の耐用年数に相当する期間を適用する。

※3の(1)については言及が無い。ここがグループ補助金との違いがある部分なのです。8(2)はグループ補助金の重複を制限する条項であり、これ受けた業者は次の申請でも落とすことは確実になります。
 東北財務局職員によるグループ補助金の対象となった企業の確認のために伺った、水産加工会社は被災前に無かった最新鋭の設備を導入して大層怒られてました。
 自治体の判断次第では補助金返還、詐欺罪で被災地復旧・復興どころか全滅させることも可能なのが「グループ補助金」の怖さです。
 
東日本大震災 グループ補助金/6次募集へ速やかな決断を

 グループ数、金額とも申請の2割程度である。宮城県は5次募集に合わせ予算枠を倍増させたが、それでも当初から不安視されていた原資不足は補い切れなかった。
 選考に漏れた大多数の企業が、今も好条件の補助を渇望している。地元の期待を背負った制度が中断するのでは、事業者に大きな失望を与えることになる。国は一日も早く6次募集開始を決断するべきだ。
 追加募集が滞っている原因は、政局混迷により復興関連事業が事実上の空白状態となっていることにあるのは明白だ。
 5次募集後も平野達男復興相ら多くの閣僚がそろって制度の必要性を強調。野田佳彦首相も補正予算編成と併せ、グループ化補助金を具体的施策の一つに挙げていた。
 ところが民主党代表選後になって「税収や経済情勢を分析しなければ」と、早期の補正見通しはトーンダウン。
与野党対立で公債発行特例法案が宙に浮き、地方への交付税配分さえ危ぶまれる現状では、予備費による手当ても見通しが立たない。
 地元が切望し、閣僚も一致して必要性を訴える。国が前向きに取り組めば前進する話ではないのか。財源の問題も、制度継続に向けた明確な意思があれば、クリアできない壁ではない。
 当初、交付対象に認定されたのは、大企業の部品供給網(サプライチェーン)に属する企業群や、水産加工など有力な地元企業群が中心だった。
 制度の狙いからすれば、緊急性の高さや裾野の広さが重視されることは理解できる。一方で自力再建が難航する中小零細事業者に条件の良い補助が広がらないことに、地元はジレンマを感じている。
 気仙沼商工会議所は第5次募集に当たり、幅広い業種の430社余りを一つのグループとした補助申請を目指した。異例の大型申請だ。県との協議の末、応募は4業種に分けられ、観光関連の91社が承認を得た。
 「400を超える企業が『ここで再建する』となれば、次のまちの姿が見えてくる」(同商議所)。異例の措置に踏み切った背景にあったのは、全ての企業が救済されて初めて地域再生するとの考えだ。
 制度の役割は経済的支援にとどまらない。用地難などの難題を抱える地元企業が、まち再生に向けた次の一歩を踏み出す足掛かりの役割を担っていることを忘れるわけにはいかない。

2012年09月28日金曜日

 大型申請は石巻市(どこかの財務大臣の選挙区)だけが、採択された特殊な手法で経済産業省でも問題になりました。でも石巻のグループは内情はバラバラのようですね。この辺はNHKスペシャルで取り上げていただきたいです。


朝日新聞デジタル:復興予算「被災地を優先で」 財務省が基準づくり 

こういうことをすると、

国建産連が会長会議/若者が夢持てる産業に/経営改善へ行政の積極支援要望20120928建設工業 建産連側は会員各社の経営環境が厳しさを増す中で、公共事業の予算確保やダンピング問題の是正、若年層が夢を持てる建設産業の構築に向け、行政の積極的な支援を求めた。

 会議には来賓として国交省の日原洋文建設流通政策審議官や越智繁雄技術調査課長らが出席。冒頭、北川会長は建設企業が先の見えない厳しい経営状況下にあると説明した上で、「特に地域の建設企業が疲弊し、災害対応や除雪作業などを支える人たちが不足している。少しでも早くカンフル剤を打たなければ、取り返しのつかないことになる」と訴えた。

公共工事/請負額に地域差広がる/中国、四国の伸び悩み鮮明20120928建設通信

四国は、1月単月が229億1000万円で、3月から8月まで毎月、3000億−4000億円台が続き、東北との差は毎月、広がり続けている。中国も、毎月コンスタントに5000億−8000億円台の請負額となっているものの、東北などの伸び率に及ばず差が開いている。この結果、9ブロックのうち、中国、四国の両ブロックだけ1−8月累計が前年同期の請負額を下回った。

 東北は、東日本大震災からの復旧・復興工事によって、他の地区よりも多い請負額が毎月、積み上がっている。ただ、他の地区の積み上がり方が小さく、地域差が月ごとに広がり続ける格好だ。

 NHKスペシャルに好意的なリフレ派やみんなの党やシバキ上げの議員や脱原発等の方達は、被災地以外に使うのがおかしいらしいですけど、他の経済圏も疲弊させて喜んでいるとしか思えませんね。地方が衰退から絶滅の促進こそ「経済成長」というのもそろそろ止めませんか。
 といっても

自分はやってないくせに他人に求める人が増えまくるとき、世の中のブラック労働的な傾向は加速していく

hahnela03
連合組合員の皆様からよく言われてますよ。本日は自治体からの説明もそうでした。復興はブラックに満ちてて凄いですよ。 2012/09/28

 岩手県県土整備部建築住宅課による「災害復興住宅整備事業」は「早くて安い」ことを要求されまして、工期短縮による土日祝日業務はペナルティで減点対象のため残業増加させて、過重労働で労基署から労基法違反に問われるスレスレで実施するか大量の作業員を確保したところで、落札額の設計変更は一切認めない、「物価スライド条項」を対応すると言っても口だけで具体的な数値はない。震災前はマクロスライドで減額された話は聞くけど、増やした話は聞いたことが無い。どこかのマニフェストと同様という有様。「生活が第一」「民主党」を支持する方達が被災地に優しいはずはない。復興が遅いのは365日24時間働かない被災地の労働者が悪いんでしょうね。

(追記)
 災害復興住宅の基本設計は、国は浸水地も想定し、中心市街地の回復も同時に進めるために、RC造1階店舗、2階事務所、3階以上居住空間とする3階建て以上を自治体にお願いしていたように記憶している。現実的な対応だと感じます。でも被災地の浸水地への抵抗感との復興スピード感との乖離を被災者自身が気づいていない以上復興は遅れる。今回の岩手県による「災害復興住宅」はS造を主体として民間が設計・施工一体型で実施することが前提となっています。標準モデル5階建てRC造40戸で約7-8億円(設計・建築・電気・管)を半額程度へ圧縮する。受注は県央部の業者となることは当初からの想定内で、被災地で使われると言っても、資材は岩手県外への発注によることも当初の想定内。被災地以外に使わられる復興予算を制限するってできるわけないでしょ。ただ被災した企業が復旧するためには適切な利益が無ければ困難になるのは自明なのだから、ネオリベ地方自治の行き着く先が、県庁以外焦土になるのは困るってこと。

(追記2)
 用地確保が困難なことは自治体にとっての最大の懸案事項ではある。浸水地以外の地主と金銭面で合意に至らないケースが多々ある事も復興を遅らせている。さらに無傷な市街地においても地主による地代等の高騰によって、企業が追い出されることもおきている。悪いのは自治体だけではないことも明記しておく。