津波被災の記録80

 録画したNHKスペシャル|シリーズ東日本大震災追跡 復興マネー 19兆円を見たので感想を残しておきます。
 
 被災地、被災地以外で現場に立ち会っていない方達にとっては、疑問に感じるように作られています。国民の皆様から頂く予算が「被災地を経由して納税地へ還元する」場合だけではなく「納税地に使われて被災地に還元する」違いについて、税金は集めて全額使う「ばらまき」(厭味です)によって、昨年言われていた「絆」が維持できることについての言及がなかったのは不思議でなりません。東日本の再生のため西日本の経済の維持・発展は欠かせない要件の一つであればこそ使われたとして何の問題があるのかわかりません。間接的な投資効果より直接的な投資という何らかなのバイアスがあるように被災地としては感じざるを得ません。これでは共に生きる日本国民というものが分断されるかのように感じました。

 医療機関に対する補助が足りないお話については、「東日本大震災に係る医療施設等災害復旧費補助金関係参考資料」平成23年8月厚生労働省医政局のパンフレットの控えを見直しながら、医師が指摘していた医療機器は対象にはなっておりません。「医療施設等設備整備費補助金」については言及がありませんでしたので、その申請が成されたのかどうか疑念があります。岩手県医療局、東北財務局、厚労省医政局の担当官には私自身が丁寧な説明を受けている経過を鑑みると、疑念を抱くような内容です。

 グループ補助金について、大槌町のあるグループの取り組みが紹介されていましたが、隣接地に伝わる話では、岩手県の意向は当初「商店街」グループについては当初から採択予定の案件でありました。岩手県内における各市町村への配分もあり自治体当たり1〜2グループが最低補償されていたように見受けられていました。
 岩手県の意を受けた各セクターにおいて「グループ」組成が開始されたのが本年2月中旬であり、大槌町は当初1グループで申請する予定でありました。回を重ねる毎に内部対立が激化し、1→2→4→7のグループへ分裂していったのです。
 放送されたグループの代表は下記の記事との対比を含めて補助金対象者を選定する際に、「日本標準産業分類」に基づいて構成を行いましたが、風俗営業法第3条第1項に基づき許可を受けなければならない営業(バー、キャバレー、ナイトクラブ等)については、対象とならない場合が多く、特定中小企業者の認定を事前に市町村に認定して貰うか、○○組合として参画する(漁協等の補助金同様に組合員が直接ではなく間接的に)ことが必要だったかもしれません。この辺りは、NHKがきちんと補足説明を入れるべきだと感じました。流石にこれは、岩手県の担当に「死ね」と言われた身ですが、制度と運用する自治体を不憫に感じざるをえませんでした。
 
 朝日新聞(現地記者)と毎日新聞(本社記者)の被災地に対する向き合い方が非常にわかりやすいのも今回のNHKスペシャルが表していることについては多くの国民の皆様に気付いて頂きたいところです。被災地に居る感覚と東京在住の感覚については、東京大学先端科学技術研究センター特任准教授のご見識についても被災地に来ている東大関係者の皆様のご反応が気になるところです。

 瓦礫撤去作業について、環境省が直轄する釜石市東松島市の例と県発注の例が出ていることを抜いて説明がなされています。バイアスとして環境省直轄事業が正しいことを刷り込むためのものかと勘繰りたくなりました。釜石市の場合、鹿島建設等の落札額が低いことや分別した瓦礫を市内で焼却処分が可能であることが大きいと思われます。
 石巻地区の場合は、焼却施設を5基で新設(リース契約?)した分も委託費に含まれている話をしないのは公平性に欠ける報道です。
 瓦礫の焼却施設への運搬以前に、分別地を確保しにくかった地域と様々な要因があるので、現段階の数字だけではバイアスが大きいと感じます。
 
 震災発生後、がれき撤去作業を発注する自治体は単価設定に時間を要したり、一部で支払いが遅れたことや、単価も自治体間で異なるため、単価の高い地域に人材が流れ、結果的に作業の進捗に差が出たことも伝えておりませんね。

 被災地に対する過分な予算配分と予算の執行の不適切さをイメージする内容という印象を受けました。被災地以外に居る皆様との「紐帯」を失わないために、予算が被災地だけに使われることはできません。むしろ「紐帯の断絶」を促す危険性の方が大きいと私は考えておりますから、いまだ「復旧」の状態が被災地の現状であり「復興」予算の消化はこれから本格的になる前にこのようなイメージを受けられては、被災地と共に「持続可能な社会」を形成することこそが「日本の復興」であるということを失うことが危惧されてなりません。

朝日新聞デジタル:復興震災1年半/補助金先行、焦る商店主-マイタウン岩手

●採択の判断に不満の声

 5月には、釜石市内から8グループが申請した。採択されなかった5グループの一つは、飲食店や宿泊施設、タクシー会社など22業者で構成していた。商店街の店も入っていた。

 代表で不動産業などを経営する小沢伸之助さん(35)は「メンバーに申し訳ない。不公平だが、どうしようもない」と話す。小沢さんが経営する会社は、「グループ化補助」とは別に、県と市が全体修繕費の2分の1を補助する制度を申し込んだ。「次を待っていられません」

 「飲み屋、水商売というだけでどうしてダメなの」。店を流され、浸水被害のなかった市内の西部地区で昨年5月にスナックを再開した及川順子さん(62)は怒りが収まらない。再開当初は被災したママさんたちを雇った。今も被災した数人が勤める。「釜石の復興した街にネオンはいらないのかしら」

 採択された大船渡のグループには、居酒屋3店、宮古市では焼き鳥2店とかっぽう3店が入っており、補助金が下りる。

 補助の要項は、風俗営業は対象外。風俗営業ではない居酒屋などの扱いは「県のヒアリングを踏まえて商業団体への加盟や地域活動歴などから線引きした」(宮古市のグループ)。

 県経営支援課によると、不動産業は雇用など経済効果が見込みにくいという。居酒屋など夜間に酒を提供する店をどのように扱うかは「各グループが判断した」と説明する。

小川一 ‏@pinpinkiri 9月14日
先日のNHKスペシャルのような検証をわが毎日も始めた。進まない復興。それは「復興特会にシロアリの集団が群がって被災地以外に予算が使われているからだ」。地元議員は怒り心頭だ。なんと復興予算が高速増殖原型炉『もんじゅ』に回されている…。 http://mainichi.jp/feature/news/20120913dde012040011000c.html

SUGAWARA, Taku ‏@sugawarataku 9月14日
典型的日本の地方は自民党政治家を支えることによって農業や土建業による地域の「繁栄」を追い求めたわけだけど、これらが要求するのは高学歴人材ではないのだから、人材が流出するのはある種の必然であって、これを都会のせいにするのは論理的にはおかしな話だと思いますね。

SUGAWARA, Taku ‏@sugawarataku 9月14日
田舎なるものが衰退することの何が問題なのかは真剣に考えたほうがよいでしょう。衰退することに対する恐怖こそが、日本の農村を破壊し、衰退を早めている。無理をして土建やって村おこしをして夢を見た自治体が、今や首が回らなくなり先行きが見えない状態となっている。