「中期財政フレーム」で『緊縮財政宣言』

公共投資の厳しさ変化なし/消費増税も従来構図変えず/中期財政フレーム20120828建設通信

【歳出枠71兆円に社会保障費の自然増含む】
 政府は、2015年度までの中期財政フレームを固めた。毎年度の予算の大枠を縛るための計画で、近く閣議決定する予定。今回のポイントは14年度、15年度の消費増税による税収増が織り込まれたことだ。消費増税によって、毎年度、公共事業費の削減傾向が変わるとの期待もあるものの、今回のフレームからは、この構図を変えないという政府の意図が透けて見える。

 中期財政フレームは、3年間の財政の大枠を示す計画で、毎年度、予算概算要求の際に財務省が発表する「概算要求組み替え基準」を決める基になっている。これまでは、12年度から14年度までの計画だった。11年8月には、東日本大震災からの復旧・復興を考慮して改定したものの、消費増税による収入増は見込んでいなかった。

 今回の改定では、14年4月に8%、15年10月に10%に引き上げる消費税の収入増を見込んだ計画とした。
 その上で、国債費を除く社会保障費や公共事業費など歳出の大枠は、従来と同様71兆円以下に抑えることにした。これまでは、歳出を71兆円に抑えてきたため、毎年1兆円ずつ増える社会保障費の増額に押し出される形で、公共事業費が削減されてきた。消費増税によって、社会保障費の増加を増収分でまかなうようになれば、14年度からは公共事業費が社会保障費の自然増に圧迫されることがなくなる。

 だが、今回の中期財政フレームでは、歳出大枠の71兆円の中に、社会保障費の自然増分が含まれているという。中期財政フレームの大枠とは別枠で、「社会保障の充実」に増収分の一部(2.7兆円、消費増税1%分)を充てるとしているものの、これは今後、社会保障の一体改革に必要となる新規施策のための費用であって、自然増をまかなうものではない。充実施策を実施したとしても自然増は抑えられない。

 社会保障の充実に増税の1%分を充てたとしても残る増税分がある。新規公債の発行額は、44兆円以下とされているものの、この上限は13年度予算に限った縛りで、増収がある14、15年度の新規公債発行額の縛りは明記していない。仮に税収が増え、新規公債発行を44兆円のままとすると歳出に余裕ができる。だが、歳出を71兆円以下としているため、「必然的に新規公債発行額を下げることになるのではないか」(国家戦略室)としており、増収分は新規公債発行の抑制に使われる。こうした枠組みの中では、消費増税で増収になっても、社会保障費に圧迫され公共事業費を削減するという従来の流れは変わらない。 

 ただ、「社会保障の充実」などによって、社会保障の自然増が抑えられるという期待もあるほか、今回の中期財政フレームでは「社会保障分野を含め聖域を設けずに歳出全般を見直す」としており、その分、余裕が出るという考え方はある。だが、消増税に合わせて公共事業費を増やそうとしているとの批判を念頭に古川元久国家戦略担当相は「歳出は少しでも減らす努力をする」と歳出抑制を強調している。現政権下では、消費税で税収が増えても公共事業費の厳しさに変化はないということになりそうだ。

自民党にしてみれば一方的に三党合意破棄宣言に等しいと感じて「問責」に行くしかない。
 「復興特別法人税」「復興特別法人税」にしても、本来の累進課税強化のためには従来の税率を復活させればよかったものを別建てで用意しなくてはならなかったのは、様々な配慮が働いた結果だろう。「中期財政フレーム」にはすでにこの分は織り込み済みだろうし、その分を公共投資(被災地復興以外への転用)も考慮しているとみてはいるが、ここにきて国債発行を抑制して、公共投資社会保障も削減して尚且つ原発ゼロで経済成長して「デフレ脱却」できると高らかに宣言する民主党野田政権の「フロンティア」には死の匂いしか感じられないから、そりぁ問責せざるを得ないだろう。

民主:自動車取得税、14年からの廃止を含め検討−藤井税調会長

 民主、自民、公明の3党は消費税増税関連法案の修正協議で合意した文書で、自動車取得税自動車重量税について「抜本的見直しを行うこととし、消費税率の8%への引き上げ時までに結論を得る」と明記。民主党税調も21日確認した「13年度税制改正にかかる基本方針」で、2税について「抜本的な見直しを進めるべく、検討を進める」ことを打ち出していた。

 せっかく税制改革における消費税の単純増税ではない部分が漏れ始めたというのに、他の間接税・関税廃止と消費税への転換しても財源確保による支出は削減しますって言われて、協力する方向性が変化するだろうなあ。