津波被災の記録73
焼け太る復興予算http://gendai.ismedia.jp/articles/-/33108
ドクターZは知っている
野田佳彦首相が、消費税増税の理由としていた「財政再建は待ったなし」が虚構であったのが早くもばれてしまった。このほど復興予算(2011年度計上分15兆円)を使い切れずに、余らせていたことが明らかになったからだ。さらに国の一般会計予算でも約2兆円の"余り"が出たこともわかった。
ならば、「待ったなし」と政府が主張する財政再建にそのカネを使うと考えるのが普通の感覚だろう。しかし、なにを思ったのか、安住淳財務相は復興予算枠の拡大を検討すると表明した。復興予算については2011年度から5年間で国と地方を合わせて総額19兆円程度としていたが、これを1兆円超上積みし、20兆円超に引き上げる見通しだというのだ。
一般決算の剰余金である2兆円のうち0.8兆円を復興財源とする予定らしい。また残り1.2兆円のうち一部を景気対策にあてるという意見も出ている。
要するに、復興予算だろうが景気対策だろうが名目は何でも、官が民からカネを搾り取って、官が民の代わりに使いたいだけだ。ちなみに復興予算の4割にあたる5.9兆円が使い残しになっている。このうち4.8兆円は翌年度に繰り越されるが、1.1兆円ほどは使い道がないとされている。では復興増税も見直すべきなのではと思うが、政府はまったく言及しない。 所詮、国民からカネを搾り取ってバラマキたいだけの官僚体質が露呈した。だから、復興予算が余っているのに、増税を強行して、予算を増額しようとするわけだ。
それだけではない。
民自公の3党合意で、景気対策を含む2012年度補正予算の編成が既定路線になっているのだ。さらに、2014年4月に消費税率が8%に引き上げられると景気の減速が予想されるので、それを逆手にとり、増税のための経済環境整備という名目でバラマキを復活させようとしている。まさに古い政治手法だ。
3党合意の結果、消費税増税法案の修正案で附則18条、いわゆる景気条項の修正が行われたことが背景にある。具体的には、第2項で「税制の抜本的な改革の実施等により、財政による機動的対応が可能となる中で、(中略)成長戦略並びに事前防災及び減災等に資する分野に資金を重点的に配分」という条項が追加された。つまり消費税増税で財政資金ができるので、財政出動して成長戦略と防災対策をやる。しかも役人のご都合言葉である「等」まで付いて、その他の何にでもカネがつけられるようになっている。無駄使いし放題に道筋をつける修正だった。
消費税増税の直後から、整備新幹線の話が進んだり、前述の補正予算などバラマキのオンパレードが続いている。本当に景気や国民のことを考えているなら、増税も、安易なバラマキもしないはずだから、消費税増税に賛成した国会議員はこんな話をどう国民に説明するのだろうか。はっきりいえば、彼らは次の選挙で落ちるだろう。
無能な当局に起死回生策を教えてあげよう。
このままバラマキの積極財政をさらに強化して、今の予算で認められている日銀引き受けを活用して、財政政策も金融政策も「超」積極にしてバブルを作るのだ。そうすれば、復興予算も確保でき、同時に円安になって景気回復、財政再建にもなる。瓢箪から駒で、好景気に沸いた国民がそれまでの失政を忘れてくれるかもしれない。いかがでしょうか、野田首相。
東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2012072902000097.html
復興予算 13年度も上限なし
財務省は二十八日、八月に各省庁から二〇一三年度予算の政策経費要求を受け付ける際、前年度に続き東日本大震災の復興予算には上限を設けない方向で検討に入った。一般経費は頭打ちとするが復興では予算編成の制約を取り払う。被災地に必要な資金を十分に確保し、遅れが指摘される復旧、復興を加速させるのが狙いだ。
財務省は、被災地の集落の高台移転や被災者の就職支援、原発事故で深刻な被害を受けた福島県内の放射性物質除染などに追加費用が必要になるとみており、予算面での後押しを継続する。
一三年度予算編成では、各省庁が政策の実行に必要とみられる経費の見積もりを示し、概算額を例年通り八月末までに財務省に要求する予定。財務省は経費圧縮のため、この段階で各省庁に削減を求めるが、復興予算は別枠扱いとして各省庁が必要と判断した額の要求を認める。
政府は一一年度からの五年間に必要な復興予算を十九兆円程度と見込み、所得税の臨時増税などで財源を確保した。一一、一二年度ですでに約十八兆円を計上しており、一三年度予算の要求額を加えると十九兆円の復興予算枠を突破する公算が大きい。財務省は予算枠を二十兆円以上に拡大する検討を近く始める考えだ。
必要となる財源に関しては、追加増税や公共事業に充てる建設国債の発行には頼らない方針。一一年度予算の使い残しの活用に加え、国有地の売却益や、自治体などに資金を貸し付ける財政投融資特別会計の剰余金の活用などを検討する。
一方で、一一年度予算に計上した約十五兆円の復興費の約四割が一一年度内に使われず、多くが一二年度に繰り越されており、政策の着実な実行が課題となっている。
※被災地の権利など大都市部の皆様の暮らし向きのためなら無視してかまわず大都市部に金が廻る金を使えと言うことでしかありません。高橋氏の言い捨ては復興増税による実質所得税の見直しが「減税から累進強化」が嫌だとはっきり言えばいいじゃないですか。復興予算がバラマキと言いますが、公共インフラは国の資産の増加でもありますから、それ自体が問題になるのはおかしいです。
「構造改革派」の「財政再建」と「りふれは」の「金融政策」のどちらも本質は預けて有った金を使いたいから金を寄越せと言っているだけに過ぎないよ。
金子洋一・民主党参議院議員(神奈川選出)
「金融緩和は日銀がサボったままで増税だけはする」けれど「自由貿易にはコミットしない」では、とてもわが国経済はもたない。TPPは断固推進すべきだ。⇒TPP先送り論強まる、「大量離党」誘発を懸念
※「りふれは」は関税撤廃による税収減にして、再分配原資を喪失させ関税分代替としての消費税増税すらさせない。輸入農水産物による経済効果を期待しているんでしょうね。関税によって保護されていた産業への補助金は廃止するんでしょう。民主党の議員ははっきりと他の選挙区の議員に向かって同様のことを言って欲しいものです。
公会計研究日誌
http://koukaikei.cocolog-nifty.com/blog/2012/07/post-e465.html
公会計において退職給付引当金はどのような意義を持つのか? —貸借対照表を巡る公会計と企業会計のパラダイムに関する一考察(2)
退職給付引当金から議論がはじまった、公会計貸借対照表に関する考察の続きです。
考えを巡らせているうちに、話が「そもそも論」にまでさかのぼってしまいましたが、とりあえず、ということで理論的検証も不十分な、かなり荒削りの意見ですので、皆様のご意見等賜われれば誠に幸いです。
(貸借対照表の意義)
そもそも、貸借対照表とは何を示しているのでしょうか。
動的貸借対照表論によれば、貸借対照表は発生主義に基づく期間損益計算における現金主義との期間の差異の未解消項目を収納する機能を有するものです。
この「期間損益計算」という概念こそが、企業会計のパラダイムを規定するものと考えられます。いいかえれば、企業会計の体系は、期間損益計算(分配可能利益の計算)のために存在するといっても過言ではないでしょう。(なお、静態論的な考え方は、現代においてはIFRSの時価アプローチの方向につながると思われますが、期間損益計算という枠組み自体が破棄されるものではないでしょう。)
そして、特に企業会計において、貸借対照表は、会計主体の財政状態を示す財務書類といわれます。
「貸借対照表が、なぜ企業の財政状態を示しうるかといえば、資産は、現金を別として、直接的に現金化されるか、あるいはそれが消滅することによって収益(売上債権)をもたらすわけであるから、すべて現金収入として考えることができ、負債および資本は現金支出を生ぜしめるものと考えることができるからである。したがって借方、貸方の相互関係を観察することにより、企業の短期支払能力(流動性)や資本の固定化の程度を知ることができるのである。」(中村忠(1998)「現代会計学〔二訂版〕」, p229)
公会計においては、資産、特にインフラ資産には必ずしも売却可能性がありません。また、公会計主体の破綻は、少なくとも我が国においては想定されておらず、清算価値は意味を持ちません。短期支払能力については、仮に、キャッシュがショートした状態で融資を得られなかった場合に問題が生ずるとも考えられますが、課税権を背景に持つ公会計主体について、融資を得られない状況というのは、企業会計主体とは全く異なる評価を要するように思われます。
このように、資産の売却、清算価値の把握といった、企業会計において通用する観念が適用されない公会計において、貸借対照表によって「財政状態」がどのように読み取れるのかについては、再検証していく必要があるように思われます。
「貸借対照表とは、企業活動に用いられる資金が、(1)どのような源泉から求められ(これを調達源泉という)、これが、(2)どのような資産に使われているのか(これを運用形態という。)を明らかにするものであるといえる(略)。したがって、貸借対照表とは、ある一定時点現在において企業の資金調達源泉と資金運用形態がどのような状況になっているかを明らかにする財務表であるといってよい。」(広瀬義州(1998)「財務会計」,p130)
公会計バランスシートは資産形成に使われた財源を示す、といわれることがあります。それは、上記に引用したような考え方によります。
しかし、それは、負債科目がすべて資産の形成に使われたことを前提としているものです。実際には、退職給付引当金は、資産の形成に使われたものではないですし、公債の発行により費用が賄われた場合、財源の説明能力は失われることになります。
以下に、簡単な思考実験を示します。
<思考実験>
国において、201X年度のキャッシュフローが以下のとおりであった。
キャッシュインフロー 計100兆円(租税収入50兆円 公債発行収入50兆円)
キャッシュアウトフロー 計100兆円(資産形成のための支出50兆円 費消される(費用化される)支出50兆円)
なお、単純化のため、過年度から繰り越される資産、負債はなく、非資金費用もないものとする。
(仕訳)
・収入
現金 100 / 税収 50
公債 50
・支出
資産 50 / 現金 100
費用 50
(貸借対照表)
資産 50 / 負債 50
(業務費用計算書)
費用 50
(資産負債差額増減計算書)
前年度末資産負債差額 0
本年度業務費用合計 △50
租税収入 50
本年度末資産負債差額 0
こうすると、貸借対照表上は、資産50に対して負債50ですから、一見すると、資産が負債(公債発行)で賄われたことを示すように見えます。(ただし、あくまでもこの時点でバランスしているように見えるだけで、後年度にはこの関係が崩れる可能性があることは、過去の記事でも示しました。)
しかし、実際には、公債は必ずしも資産形成に充てられるわけではありません。上記の例において、公債のうち例えば10兆円が赤字公債、すなわち当期に費消される支出に充てられるものだったとすると、資産形成に充てられたのは40兆円ですから、資産獲得の財源が示せていないことになります。
このように、あくまでも、貸方科目が借方科目の取得に充てられたというフィクションがなければ、財源を示したことにはならないわけです。
(貸借対照表を巡る公会計と企業会計のパラダイムの違い)
企業会計主体においては、資産の形成=現金の蓄積=利益の蓄積であり、利益の追求こそが本来的な企業の目的ですから、負債又は資本(純資産)は、資産形成、すなわち目的の達成のために使われた財源を示すことになります。そのため、期間損益計算が必須となるわけです。
しかし、公会計主体においては、資産の形成は目的の達成ではありません。公会計主体における目的は、公的な財又はサービスの提供による国民・住民の福利の向上等の「公益」です。資産の形成を伴わない「公益」の達成もありますし、そもそも、資産価額と、公益の質や量は比例関係にありません。例えば、補助金などの移転支出や、当期に費消されるサービスの給付は、公益を達成するものですが、資産は形成しません。企業会計においては、こうした当期の「費用」も最終的には利益・現金同等物を生み出すのに貢献するわけですから、理論上は資産の増加(負債の減少かもしれませんが)に結びつくものですが、公会計にはその論理は妥当せず、必ずしも資産を生み出すことに貢献するわけではありません。
そもそも、公会計における当期の費用(行政コスト)は、当期の収益に対応するものではありません。税収を収益とみたとしても、これは、課税権、租税権力作用によって発生し徴収されるものであって、費用とは対応関係がないからです(租税徴収のための費用とは何らかの関連があるのかもしれませんが、対応するものではありません。)。
すなわち、公会計における費用(行政コスト)は、当期において行政目的の達成、すなわち一定の「公益」の発生に寄与したものであるべきです。これは「公益主義」、ないし、収益費用対応の原則にならえば、「公益費用対応の原則」とでも呼ぶべきものです。 これが、公会計のパラダイムです。
例えば、移転支出である補助金は、資産を形成しないことから、当期の費用として認識されます。
しかし、補助金による公益の発生は、将来の一定の期間にわたる場合があります。例えば、病院の設備に補助金が交付されれば、当該設備が稼働している限り、公益が発生しているとみることができます((自前の)設備を整備した場合、その効用を「収益の獲得」として、発生期間を耐用年数の間とみなすのが企業会計の考え方です。)。また、企業誘致補助金は、企業が誘致されて将来数十年にわたり企業活動を営み、これによって地域経済が活性化するのであれば、企業が活動し続けている限り公益が発生しているといえるでしょう(最近はこれが反故にされている例が見受けられますが。)。
しかし、先に述べたように、補助金は、いくら公益を生み出すポテンシャルがあったとしても、資産性がなく(公会計主体には所有権がなく)資産とは認められません。したがって、当期の支出により次期以降に公益が発生するようなケースであっても、企業会計をベースとすれば、すべて、当期の公益の発生のために消費された費用と「みなされる」ことになります。
こうしてみると、公会計において、資産と負債、借方と貸方の関係は断ち切られています。ゆえに、公会計「バランスシート」は、貸方と借方が「バランス」しないのです(公会計を巡る通説では、公会計の資産負債差額に意味はないとされていることにもう一度思いを巡らすべきでしょう。)。その意味では、公会計の「バランスシート」は、元来の意味に立ち返って残高試算表と表現すべきでしょう。これらは、単に資産と負債の残高を示しているだけにすぎません。
同様に、公会計主体が、例えば保有資産に対してコストの多寡を論ずるのはいささかナンセンスです。保有資産がどれだけの公益を達成するものなのか、を論じなければ意味がありません。
(まとめ)
以上に見てきたように、現状における公会計の貸借対照表あるいは「公会計バランスシート」は、公会計のパラダイムから見れば、いささか不完全なものです。それは、期間損益計算という企業会計のパラダイムの呪縛から抜け出しておらず、公会計主体の活動全体を正しく表すことに成功しているとは思えません。
端的にいうと、現行の公会計貸借対照表を重視することは、資産形成を伴わない公活動を萎縮させるおそれさえあると考えられます。
これは、公会計と企業会計のパラダイムの違いに起因するものであり、公会計は、企業会計を模倣するのではなく、「公益主義」ないし「公益費用対応の原則」という、公会計のパラダイムに即した考え方によるべきと考えます。
(参考文献)
中村忠(1998)「現代会計学〔二訂版〕」
広瀬義州(1998)「財務会計」
森田哲彌・宮本匡章(2000)「会計学辞典 第四版」
武田隆二(2005)「最新財務諸表論(第10版)」