津波被災の記録51

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「古い公共」の手続  2011年08月21日 (日)

hamachan先生経由
善意のボランティアと被災失業者
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/08/post-e3cf.html

 ですが、そうした「古い公共」の現場を知ってか知らずか、「新しい公共」が現場で活動してそれが奨励されればされるほど、「古い公共」の積極的な雇用政策が顧みられなくなっていく一端が紹介されています。

「どの部屋に誰がいるのかもわからない。
もう久ノ浜には戻れないだろうし、
ここでしばらく生活をしていくわけだから、
久ノ浜の人たちとのコミュニティづくりを、
新たにし直さなきゃと考え、
全世帯のポストにアンケート用紙を配布しようと思っていたんです」

彼は250世帯分のアンケート用紙を持っていた。
ここでの慣れない新生活を互いに支えあうため、、
久ノ浜の人の部屋番号と名前と連絡先を書いた、
名簿を作ろうとしていたのだ。

今、久ノ浜に必要なのは、
また放射能被害や津波被害のある可能性がある、
場所の清掃活動なんかじゃなく、
そこで復興支援の名のもと、花火を上げることじゃなく、
いわき市内の中心部に移って、
ここでの暮らしに慣れようとしている被災者の人たちの、
コミュニティづくりを支援してあげることじゃないか。

(略)

自分たちは津波被害にあっていなくても、
周囲が津波被害にあってしまえば、
もはや自分たちの生活は成り立たない。
しかし家は被害がないため、
避難所に行くことも、仮設に移ることもできないし、
義援金津波被害者のようにいっぱいもらえるわけではない
こうした中途半端な立場に置かれた被災者が、
ボランティアの清掃活動を横目に、
今後の暮らしに希望を見出せず、苦悩しているのだ。

津波被害者だけが被災者ではない。
津波被害地区だけが被災地ではない。

そこを履き違えて、震災から5ヵ月が過ぎた今も、
被災地の“目に見える”支援ばかりしていると、
すぐそばにいる被災者の心の闇を見逃しかねなくなる。

「ボランティアが被災者の自立を阻害する?!〜震災5ヵ月後のボランティアのあり方を問う(2011年 08月 17日)」(つぶやきかさこ)

※ 以下、強調は引用者による。


 ボランティアの自己満足によって地元の仕事が奪われていくことや、仕事を失ったにもかかわらず直接被災しなかったために支援を受けられない方の存在についてはこれまでにも指摘してきました。地方公務員としてもそのような状況を把握していないわけではないと思います。 ただ、行革に加えて災害で人員の減った中で、これまでは災害復旧や仮設住宅の設置といった緊急避難的な事務にリソースを充てなければならなかったため、上記のような手続を要する事務はどうしても後回しになった点は否めません。仮設住宅の設置がほぼ完了した今後はそうした事務にもある程度のリソースを割り当てることが可能になるでしょうが、絶対的な人員不足の中ではその効果も限定的となるでしょう。

 緊急避難的な状況を脱した被災地で生じている現実は、震災前から進められていた「小さな政府」路線の帰結でもあります。

※「がれき撤去」に関しては、男性のみとしているわけではないですが、偏ってしまっています。漁業関係者の婦人部の方達の、震災直後からの奉仕活動によって、被災者が助けられましたが、その方達を支えた方は同様な立場に置かれていました。仙台市の女性の方の声はとても他人事ではありません。
 釜石湾漁協を含め海岸の「がれき撤去」に婦人部を入れ軽作業を手伝わせることで幾ばくかの収入を集落全体で分け合う気が無かったようで、婦人部は作業に参加させない。ということになりました。でも、漁業者のご婦人方というのは、共同経営者ともいうべき立場であるのに結構酷い仕打ちを、漁協役員たちから浴びせられたのは、情けない限りです。普段は労働力と家事等々に使役することで成り立っているのにも関わらず、漁協役員にそのような意識のかけらもないことを見せ付けられ、「協同組合論」というものが現実的に崩壊していることに愕然たる衝撃を受けざるを得ませんでした。
 「協同組合論」も碌に学んでいない漁業者が多いのは致し方ないことではありますが、このような状態では、宮城県知事の「水産業自由化」への賛同者と正当性を漁業者自らが与えていることに、早く気付くべきであると思います。
 岩手県漁連や岩手県水産部がどの程度まで把握しているかはわかりませんが、震災後に横領事件があったことをとりあえずもみ消しはしたようですが、何だかダダ漏れ状態のようですね。あまり人と接触しないようにしているのに、耳に入ってくることまでは止められません。
 
 漁協関係への様々な補助制度についても、岩手県は熱心だと新聞には出てまして、宮城県はダメだという、業者の社長さんの話が出てましたけど、岩手県水産部職員がどのような説明と熱心さをもって業者に接したかはわかりませんが、末端の漁業者への補助制度が伝わっていないのは、不思議です。末端への説明や補助を丁寧に実施しているのは宮城県の方です。
 宮城県の別の業者の社長さんからむしろ、宮城県ではこういう制度の説明きちんとして、丁寧に損害状況を把握し、様々な手を差し伸べているという話を聞いています。
 岩手県でも同様の制度があるそうですが、岩手県水産部職員がそのような活動をしている話は末端には聞こえてこないのです。岩手県職員の対象は、漁協役員と一部の業者の社長だけなのではないかと勘繰りたくもなるのです。
 「新しい公共」によって陣容が薄くなってしまうことで、効率的に進める対象を経営層に絞り込んだ岩手県と非効率的ではあるが「古い公共」に丁寧に取り組む職員の姿勢の違いなのかもしれません。