メガソーラーと規制緩和

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被災地に新エネルギー特区を、地域主導型電力網のモデルに(1) - 11/07/08 | 16:14

 「被災農地にメガソーラー(大規模太陽光発電所)と太陽光パネル工場を」と提案するのは大和総研常務執行役員の岡野進氏。東京電力福島第一原子力発電所の事故により、同原発制限区域内では、飛散した放射性粒子の影響で農業の継続は極めて困難な状況にある。土壌浄化作業の長期化とともに、就農者の高齢化も深刻な問題だ。

復興特区で雇用創出を
 岡野氏の試算によれば、同制限区域内の耕作面積は171平方キロメートル。ここに原発事故の収束状況を見ながら10年かけてメガソーラーを建設していく。10年間での総投資額は2兆1000億円(太陽光パネル購入1兆2000億円、パネル敷設9000億円)、建設に関し延べ3万6000人の雇用が創出できるとする。

 さらに、このメガソーラー建設に必要な太陽光パネル工場を誘致する(年間340万枚生産、初期投資850億円)。これにより、工場建設に1000人、操業に700人の雇用が見込まれる。

 用地は補償機関が買い上げるほか、父祖伝来の土地を手放すことに抵抗感の強い人には借り上げなどの対応を行う。発電コストは当初は割高となるため、国による財政的支援が前提となる。そのため、復興事業として税制優遇や規制緩和を機能的に設けることができる「復興特区」と位置づけることが望ましい。 東北は日照時間等から太陽光発電には不向きとの見方がある。しかし、福島県いわき市小名浜)の日照時間が全国81カ所中12番目に長いなど、福島県海岸部には適地が多い。

 地域住民のコンセンサスが必要なことは言うまでもないが、「地元の電力需要に応えるのみならず、競争力ある産業として、輸出を含む域外への供給を担っていくものに発展させることが可能」と岡野氏は語る。

 政府の東日本大震災復興構想会議は地域経済の再生など五つの論点に基づいて復興策作りを進めている。太陽光、風力、地熱など新エネルギーを活用した地域づくりや産業振興策が打ち出される見込みだ。また、新成長戦略実現会議ではこのほど「エネルギー・環境会議」を新設、新エネルギー活用の具体策など年内に基本方針をまとめる予定である。

 このように、震災復興策の立案で新エネルギー政策が極めて重要なテーマになる可能性が高い。原発に対する見直し機運だけでなく、省エネや環境への意識の高まりの中、これを新たな国づくりや産業振興の柱にすることは国民の賛同を得やすい。

 実は、東北は自然エネルギーの先進地域である。大規模水力を除く自然エネルギーの全電力に対する導入率では、全国平均が3・4%なのに対し、東北全県平均では6%と倍近い。特に、秋田県青森県は10%を超えている。そして、その主翼を担っているのが風力発電だ。

 環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長は、東北復興を世界にアピールするためにも「東北で2020年までに自然エネルギーの域内導入目標を100%」とするプランを示している。東北での自然エネルギー導入への投資額は20年までに約14兆円。新エネルギーの全量全種固定価格買い取り制度を軸に、東北復興のための上乗せ価格設定などを提案している。20年での全電源での構成は風力50%、小水力25%、太陽光14%、地熱9%などとなっている。

 非現実的と言うなかれ。環境省の試算では、東北の風力発電での導入ポテンシャルは7200万キロワット(稼働率を24%と設定)、これは東北電力の発電能力1600万キロワットを十分賄える計算だ。風力発電は騒音や景観への影響など制約があるものの、このような巨大な潜在力を生かすことにより、メガソーラー同様、被災地の復興へ向けた有望な産業振興、雇用創出策になろう。東北は「風」と「太陽」の恵みにより電力の地産地消に最も適した地域なのである。

負担感を共有できる体制を
 次世代のエネルギーシステムを展望するとき、新エネルギーとともに重要なキーワードが「分散型」である。これに対し、これまでの電力体制は大規模集中型。原発など大型発電所を需要家から遠く離れた地域に建設し、広大なエリアに送電線を張り巡らせて供給する。

 日本総合研究所創発戦略センターの井熊均所長は、「これからは需要と供給双方の分散化が必要」と言う。大規模集中型は燃料の利用効率が低く、送電ロスも大きい。今回の原発事故で露呈したようにリスクが広範囲に拡大する危険性を持つ。

 一方、今後自然エネルギーを最大限に活用していくためには、大規模集中型は適さず、分散型への再構築が不可欠である。自然エネルギーは高コストで安定供給に適さないとの指摘がある。だが、これはこれまで大規模集中型偏重の政策がとられ、そのため自然エネルギーや分散型システムの技術が十分に発達せず、また適切な利用方法も体系化されなかったことによるところが大きい。

 井熊氏は「分散化することで需要家主導のエネルギーシステムに変革できる」とする。電源を小口にすればするほど停電などに対してのリスクがヘッジできる。さらに、「地域のエネルギーは地域で作るという意識を持つことが肝要」と指摘する。

 分散化、地域主導、そして自然エネルギーの活用、これらが東北復興へ向けた新エネルギー政策に求められる前提条件となる

 さらに、これは東北だけでなく、全国民のエネルギーに対する意識変革を促す。原発など大規模集中型電力体制がもたらした弊害として、「NIMBY」(Not In My Back Yard=自分の裏庭には入ってほしくない)の助長が挙げられる。

 福島第一原発で発電された電力は、東北ではなく、首都圏など東京電力管内で使われていた。にもかかわらず、原発事故により福島の人々の生活が、人生が大きく狂った。しかし、それに対してわれわれ大都市部の需要家の意識はいまだ低い。電源立地対策交付金制度などを根拠に、負担の低減が図られていたという言い訳はもはや通用しない。

 地域ごとの分散型エネルギーシステムにより、皆が負担感を共有できるような体制を構築し、過不足が生じた場合には地域間で融通し合う対等で緩やかな関係が望ましい。

 仮に、福島にメガソーラーや大規模風力発電所ができようが、これがこれまでの原発に代わって首都圏への電力供給源になると考えてはいけない。分散化、自然エネルギーシフトで意識改革や覚悟が最も求められるのは、実はわれわれ首都圏など大都市部の需要家・消費者なのだ。

(シニアライター:野津 滋 撮影:今井康一 =週刊東洋経済2011年7月2日号)

※震災復興はあくまで、大都市の商社とコンサルを中心とする方達の利益のために「震災特区」「電気料金全量買取」があって、「被災地」のことや「都市と地方の紐帯」というものは所詮二の次の政権運営が垣間見えてしまい、金融投資商品を生み出すことに熱心すぎるのには只々あきれるばかりでしかない。

  hahnela03 電源を小口にすればするほど停電などに対してのリスクがヘッジできる。/本音は「デカップリング」政策。地方と連動しない政治経済の仕組みの構築。脱原発=再分配否定=新エネ特区=規制緩和 2011/07/11
 
 東松島市には、三井物産が手を伸ばし、ソフトバンクのような詐欺的手法に群がる地方自治体の馬鹿さ加減にはあきれるばかり。遊休地の利用ということに拘って、被災地がその国有地・県有地・私有地の遊休資産の無さが、仮設住宅建設や仮設事務所の再建を阻んでいることは言及しないんだな。公的セクターが余剰資産を保有することが、住民生活の安全と生活再建に資するとは考えない。これほど情けないことはない。
 上記の例はあくまで陸前高田市の被災市街地全域を利用することで「ギガソーラー」を構想していることは、地元市街地を復興させる気は無いということ。岩手県知事が建築制限の無期限に固執し、土地利用の規制緩和に熱心で復興予算を増やさないのは、被災地は更地にして、外部に差し出すことを当初から決めていたのでしょう。小沢一郎の指示なのかどうかは分からないけど、民主党というものは、優しくないのだ。「水に落ちた犬は叩け」ということを実践するのが党の本質なんだなあ。
 
(追記)
 震災後に、旧法務局跡地がいつのまにか売却されていた。入札した形跡もないで、国有財産が民間企業に売却されたのだろうか解せない。なにしろ購入した会社が、民主党小沢一郎のポスターを貼っていた会社なもので。それとも法務省は震災直後に財務省とは無関係な超法規的措置を講じて、売却をすることを法務大臣が許可したのだろうか。震災後の土地の売買にはいろいろなことがあるんだろうなあ。