再生と投資

http://money.jp.msn.com/investor/stock/news/newsarticle.aspx?ac=JAPAN-218720&cc=03&nt=14
ロイターサミット:日本再生の可能性大きい、痛みいとわぬ抜本策急務

2011年06月24日

 6月24日、東日本大震災からの復興策をテーマとして6月20─22日に開いた「ロイター日本再生サミット」では、多くの識者から日本の再生策が示された。写真は岩手県田老町で3月撮影(2011年 ロイター/Carlos Barria)
 [東京 24日 ロイター] 東日本大震災からの復興策をテーマとして6月20─22日に開いた「ロイター日本再生サミット」では、多くの識者から日本の再生策が示された。

 多岐にわたった参加者からのメッセージを端的に表現すれば、「過去との決別なしには日本は蘇生できない」ということになるだろう。少子高齢化が進み低成長時代に入った日本では、すべてを満足させる再生策は難しい。新エネルギー構造の確立、規制改革や被災地の活性化、さらには市場を混乱させない財政ロードマップの提示など、様々な処方せんが効果を生むには、推進力のあるリーダーシップが欠かせない。何を犠牲にして何を得るのか、過去にこだわらない厳しい選択が求められている。

 <日本に再生力はあるか>  

 今回のロイターサミットでは、登壇者のほどんど全員に、「今回の震災を奇貨として、日本はより強い経済国家に生まれ変わることができるか」という質問をぶつけた。きわめて明確な回答を示したのは、日産自動車<7201.T>のカルロス・ゴーン社長兼最高経営責任者(CEO)だ。   

 同氏からは、「明快な工程表と明快な優先順位をつければ速やかに復興を果たせる」と力強い口調の答えが返ってきた。経営不振の日産を立て直した経験をもとに、課題に対処する上で重要なのはビジョンの共有であり、明快な優先順位付けだと指摘。「優先順位をつけれてあげれば、実行力は日本人はナンバーワンだ」と同氏は高く評価する。  

 日本国内のサプライチェーンが分断され、その影響が世界にも及んだことで、日本製品の重要性があらためて示された。そして、日本の製造業の回復スピードも世界の注目を集めた。 

 自動車業界では、円高二酸化炭素削減、高い法人税率、厳格な労働規制、通商面での遅れ、電力不足を「六重苦」と呼ぶ。それでもトヨタ自動車<7203.T>の布野幸利・副社長は日本を「新製品を製造していくベースとして活動しやすい場所」と評価する。「震災を通じ証明されたように、規律があり、献身的な労働者が多く、人的な力が日本の強さを支えている」という。   

 日本企業の再生力を評価する声は多く、ベインキャピタル・ジャパンの堀新太郎会長は、日本の産業の潜在成長力について、グローバルな利益水準からみれば現在の6倍から9倍あるとの試算を披露した。こうした潜在力がフルに発揮されればGDP(国内総生産)の200%近い国の借金返済さえも不可能ではない、と同氏は指摘する。日本の債務問題はもちろん深刻だが、「企業のフルポテンシャルが開花すれば、法人からの税収が6倍から9倍になり、5年とはいわないが、早期の返済も不可能ではなくなる」と話す。

 GDPでみて5%にすぎない東北の復興が日本の将来を示す指針になる可能性もある。単に原状に戻す復旧ではなく、より経済力を高める形で復興を果たすことができれば、他の地域のモデルケースになりうるとの期待は大きい。

 スパークス・グループ<8739.OS>の阿部修平社長は、東北地方に建設予定の宿泊施設など不動産に投資する「再建ファンド」を今年7月に立ち上げる計画を明らかにした。ホテルなど宿泊施設を運営する事業者と提携し、新たに建設される施設などに投資する私募ファンドで、500万─1000万ドルの規模でスタートし、半年から1年以内に10倍に拡大する狙いだという。  

 阿部社長は、東日本大震災で被災した東北地方では多くの被災者や復興作業に携わる人の宿泊施設が非常に不足していると指摘。 「投資家として資金提供の形で援助すれば被災地に役立てる」と述べるとともに、投資のリターンも「15%以上を期待している」と語った。 中国などアジアの企業は日本の震災後の復興需要に強い関心を持っているという。 東北地方の再生には特区を活用すべきだとの声もサミットでは聞かれた。「5年間程度法人税をなくすとか、漁協の集約と漁業の効率を上げることがポイント。また自然エネルギーへのシフトも特区を活用して集中的にやるべき。コストが高いともいわれるがロードマップをきちんと作って実現すべき」(大和総研チーフエコノミストの熊谷亮丸氏)という。

 <現状維持と規制緩和の選択> 

 そうした日本の再生力は、現状のままでは発揮されない。その触媒役となる緊急策として、多くの登壇者が抜本的な規制緩和の必要性を訴えた。  

 「観光のカリスマ」として知られる星野リゾート(長野県軽井沢町)の星野佳路社長。ロイターサミットでは日本の再生には規制改革が欠かせないと訴えた。その一つの例として挙げたのがスキー場の供給過剰問題だ。   

 現在、スキー場を廃業する場合には山林を元に戻さなければならないという原状回復義務がある。そのため、費用負担をまかなえない経営者は赤字でも経営続行を選択してしまい、結果的にサービス面で不十分な施設が残ってしまう。さらに地方自治体が関与しているスキー場が多いことも「新陳代謝」を阻む。「赤字で税金を注ぎ込んで経営し、民間を抑え込んでいる。なぜか死なない。ゾンビと戦っている」。  

 一方、人口減少の日本にとって海外観光客はGDPを押し上げてくれる大きな希望だ。訪日外国人の日本国内での平均旅行中支出額は11─12万円。日本人の年間消費額は120万円程度だから、外国人観光客10人で日本人1人の消費をカバーしてくれる計算になる。フランスが毎年7000万人以上の外国人訪問者数を受け入れているのに対し、日本は2009年に679万人と上積み余地は小さくない。「東北はかなり厳しい。ただ、その他の地域、北海道から沖縄まで、観光のポテンシャルが著しく損なわれたと思わない。震災前に戻ることは十分ある」と星野社長は語る。  

 店舗に薬剤師が常駐するのではなく、ICT(情報通信技術)を利用した医薬品販売のメリットを主張したのはローソン<2651.T>の新浪剛史社長。「なぜ患者の前に薬剤師がいないと調剤できないのか不思議だ。24時間優秀な薬剤師がコールセンターにいて、モニターで顔色までわかる。ログも残っている。わざわざ病院に行く必要がない」と技術面では何の問題もないと話した。さらに「優れた技術を国民生活のレベルで活かそうということだ。国庫負担をまじめに考えればそういうことになる」と、規制緩和は国の財政健全化につながるとの見方も示している。

 規制緩和は既得権者の優位性を奪い、一時的な「痛み」を生みかねない。「痛み」のない現状維持を選ぶか、それとも思い切った手術に踏み切るか、大震災の痛手を活力に変えるかどうかの厳しい決断が求められている。

 <原発の将来と新エネルギーの選択>

 同様に、いま日本人が直面している大きな選択がエネルギー問題だ。東京電力福島第1原発の事故を受けて、「脱原発」を軸にした新しいエネルギー政策の必要性が叫ばれている。一方、電力不足は震災からの経済復興の大きな足かせとなっており、産業界からは原発再稼働を望む声も少なくない。「エネルギー政策は安全保障の根幹」(石油連盟会長の天坊昭彦氏)とも言われるなかで、原発とともに生きるか、化石燃料や再生エネルギーを選ぶのか。エネルギー政策の行方は日本経済の将来を左右する選択にもなる。   

 積水ハウス<1928.T>の和田勇会長兼CEOは原発賛成派だ。その理由は経済成長にマイナスになるためと明確。「原発でも徹底的に安全を追求すればいい。原発はなしでは日本はやはり無理だと思う」とし経済に活力を戻すためには電力をもとに戻さないといけないと主張した。電力不足を不安視する産業界からは極端なエネルギー政策の転換に懸念を示す声は多い。  

 一方、自民党河野太郎衆議院議員原発反対の持論を展開。「あれだけの事故があったのだ。新しい原子力の新規立地はもはやできない」。さらに今後40年で現在の原子炉を廃炉にすれば、2050年には原子力は完全になくなると指摘。原発分の電力は火力などの省エネと再生可能エネルギーで代替するという。  

 しかし、火力にもいつまでも頼れない可能性が大きい。世界の石油埋蔵量は長い間40年で尽きるといわれてきた。年月とともに短くなるはずだが、新たな原油泉が発見されるたびに、この予想が10年ずつ伸びていった。 

 「これからは違う」と語るのは、世界最大の太陽電池メーカー、サンテックパワー・ホールディングス日本法人「サンテックパワージャパン(東京都新宿区)」の山本豊社長だ。「巨大な人口を持つ新興国が台頭し、どんなにボーリング(掘削)しても石油が足りない」という状況になりつつある。火力の利用にはCO2増加と地球温暖化という深刻な副作用がつきまとう。山本社長は「原発にするのか、新エネルギーにするのか(日本国民は)選択する必要がある」と訴える。  

 エネルギー政策の選択は、今後の国、地方の議員選挙の大きな争点になる可能性も出てきた。かつて原子力推進派が中心だった自民党の中からも、「異端」の河野氏に追随し、反原発を表立って主張する議員も表れ始めている。河野氏は「自民と民主の中で、グリーン・パーティというか、グリーン・アライアンス(緑の同盟)のようなものができてエネルギー政策を転換するグループができるのではないか」とエネルギー政策を焦点した政界再編の可能性にも言及した。

 ゴールドマン・サックス証券日本チーフエコノミスト・マネージングディレクター・馬場直彦氏によると、キーワードは「トレードオフ」であるという。「原発を廃止すれば地震津波によるリスクを減らせるが、コストも伴う。代替エネルギーの使用でコストが上がる。原発事業がもたらしてきた雇用などのベネフィットが失われる。また、全国的な電力供給懸念の高まりから、製造業の海外進出を加速させる。この点を明確に国民で議論すべきだ」。  

 エネルギー白書によればキロワット時あたり原子力5─6円に対し、火力は7─8円。太陽光は現時点で49円。しかし、太陽光のコストは下がっており、「グリッドパリティ」とよばれる他の発電コストと同じになる日も近づいてきている。一方、原発のコストについては廃炉などの費用を含めれば火力などよりも高いとの見方も多い。国民に選択を迫る前に、思惑が介在しない正確なデータを政府は示す必要がある。

 <国民負担の増大か、財政破たんか>

 国の債務問題も震災で選択決定までの余裕がなくなってきた。国の債務残高(借金)は3月末で924兆3596億円。東日本大震災の復旧はまだ遠く、2011年度第1次補正予算では何とか国債増発は回避したが、2次補正、3次補正が視野に入るなか、債務のさらなる拡大は避けられない情勢だ。

 セブン&アイ・ホールディングス<3382.T>の村田紀敏社長は復興に際しての財源について「増税による復興財源は受け入れることはできない。将来への投資という意味で、特別国債でやるべきだ」と指摘。そのうえで、消費税引き上げについては、社会保障改革と一体化する。「社会保障制度への明確な政策を示せば、国民の将来への安心感がでて、消費にとってプラスになる」との見方を示した。

 サミットに参加したエコノミストのなかでも国債が増発されても、すぐに「悪い金利上昇」が到来するとの見方は少なかった。「日本の国債市場は国内で支えている。債券が売られたところで買うのは日本人であり、まだ十分に家計や企業が支えられる」(JPモルガン・チェース・債券為替調査部長・佐々木融氏)という。しかし、国債暴落の可能性が消えたわけはないというのも共通認識だった。

 みずほ証券チーフマーケットエコノミスト・上野泰也氏は「悪い金利上昇がいずれ起きるという見方は動かしがたい。法人マネーの資金余剰も、海外(投資)に移りつつある。国債償還を支える金はだんだんなくなってくるため、じわじわとリスクプレミアムの拡大は5─10年以内に起きるだろう」とみる。

 上野氏は人口問題への大胆な取り組みを求めている。日本の人口減少は、税収の伸び悩みや消費縮小を引き起こし、財政バランスの悪化やデフレ慢性化の主因となる。上野氏は「人や金が逃げ、キャピタルフライトに近い状況が起きる」と指摘。フランスのように、子供の数が増えれば世帯の納税額が減っていく税制、託児施設の整備少子化対策の強化を提言。さらに観光客の積極誘致、移民や長期滞在者の誘致を通じて、日本の国土に滞在している外国人の数を増やすことも含め、広範囲にわたる人口政策の強化を求めた。

 (ロイターニュース 伊賀大記;編集 北松克朗)



 ハゲタカと呼ばれる外資系のほうが日本というものをよく理解し分析し機会を得ようとしているのが垣間見える。酷いのは国内の見方が未だに旧態依然ということなんだろう。
 東日本大震災による復興が、公共投資か民間投資(PFI)かということや、水産業の漁業権解放も流れは、金融投資する場を形成することに主眼がある。政権交代前に、民主党を含め「金融資本主義批判」というものがあったけど、一番、金融資本主義にどっぷりつかっていたのが「民主党」と「支持者」だっただけの話。彼らにとって復興によって旧態依然たるものは全て津波のせいにして流してしまい、「金融投資」の機会を拡大することなんだと思う。それだからこそ「消費税」や「特別国債」により「投資資金の減少」だけが気に入らないだけなんだろう。