津波被災の記録10

 社員の母親の遺体が見つかる。「良かった」という言葉が出る。被災地に居ないものからすれば、なんと不謹慎な言葉と受け取られるかもしれない。
 肉親を弔うことすらできず、死というものを拒否している方達も多い。役員の妻もまだ見つからない。まだ受け入れることができずにいる。被災地である自宅近くの避難所から離れようとしない。日曜日に歩きながら自然の芽吹きを確認するも、人の心に春はまだ遠い。