付加価値税と配当と株主 その2

付加価値税と株主

 金融資本主義の本場である英国リフレは「法人税減税+VAT増税」となっています。
 付加価値税の話ではどうしても流通関係での痛税感が叫ばれてしまいますが、金融資本主義者の痛税感も相当なものです。株主と言っても、個人、法人、投資会社、機関投資家等があり、それぞれ思惑が違います。配当が欲しいのはそうですが、それをどの様に使うかで対応は分かれます。機関投資家で労働者に身近な存在は、共済と年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)でしょう。

 米国のサブプライムローンで打撃を受けたカルパース等の世界的な規模で運用している年金基金を救済したのはFRBによる債務買取でした。同様に損した富裕層も救済することになりましたが、労働者の将来の年金所得を守るためには仕方ありません。日本は今まで株式等のリスク資産購入を抑制してきましたが、日銀による金融政策が損失補てんを担うことになるでしょう。そのため間接的な株主である労働者の年金所得を増やす金融政策の安定的な運用は望ましいと言えるのです。

付加価値税と民間資金ガー

 付加価値税は財政政策と呼ばれるものですが、リフレ派経済学者等から「緊縮政策」だとの批判を受けています。「民間資金を政府へ移転することで、民間資金が減る」ということからです。民間企業は金融機関による預金通貨(信用創造)によって借入を増やすことで対応可能なのですが、キャッシャフロー経営で見た場合、現金の流失はあまり好ましいことではないからです。経済学者が経済学と経営学を混同しながら「民間資金ガー(現金通貨消滅)」なのはなぜでしょう。金融政策による資金はあり借入でいくらでも調達できる状況ですが、それをせず現金流失に固執しすぎますよね。

 それは、付加価値税の中間申告制度(予定納税)が平成26年4月1日以後から変更になり、直前の確定消費税納税額が、48円を超え400万円以下は年1回。400万円を超え、4,800万円以下は年3回。4,800円を超える場合は、年11回で納付するのです。

 株主にとって「配当が減る」ことを「民間資金の流失」と言い替えてもいいですが、上場企業は、毎月納税するため「現金の流失」が毎月生じることとなります。株主にとっては、消費税は還付されることが無いと思われてもしょうがない税です。それは、売上が減らないからです。前にも言いましたが、消費税を減らすには、課税科目を増やすことのほかに、売上を減らすこと。それもかなりの額。そうすると確定申告時に還付されることが決定されます。でもその時の決算って、利益も減っていますから、株主への配当はお預けにされそうです。上場企業のように売り上げを減らすことが出来難いからこそ付加価値税は安定財源の真価があり、中小零細企業のように、売上が変動しやすい企業は、国にとっては安定財源には成りにくいと考えていますから、売上が減った時には、還付される仕組みがあるのです。別の見方をすると、大企業優遇政策をやる一方で大企業に対して、納税強化並びに厳格化を求めるのが付加価値税(消費税)なのです。

 民間資金が流失するには理由があり、売上も利益も減らしにくく、役員と労働者の高い所得を容認する、つまり「格差を容認」からこそ、代償を払えなんです。

 ですが、民間資金ガーをやめるのは簡単です。継続的に、売上、役員報酬、給料・賞与、法定福利費等を下落させることだからです。それは別名で「デフレ」になるという意味がありますが、リフレ派がそれを言えるんですか。

 リフレ派経済学者による付加価値税減税並びに廃止、財政諮問会議の民間議員による「民間資金ガー」を真面に聞いて、それを行うためには、継続的に何かを下落させることをしなくては達成できないのです。素晴らしいリフレ政策ですね。

※追記
 「大企業の内部留保が貯まっている」ことを「法人税減税」のせいにする方達が居ますが、それは違います。大企業は優秀な社員による節税対応をさせることが可能なので、実効税率を下げられるのです。でもそのような課税回避行動を制するのが付加価値税です。つまり、「内部留保が貯まった」のは、付加価値税が低すぎるからです。付加価値税が低いため、株主資本主義にとっては非常においしい状況であることが良く分りますね。米国の投資金融は日本のこの状態を実際に「わるくない」と感じていますから、日本の付加価値税の低さが株主資本主義に有利に働いていることを物語っているのです。そのような理由から、日本国内で付加価値税増税反対を掲げる共産党の存在は、ハゲタカ様にとってはベストパートナーと呼べるものです。「内部留保ガー」と叫ぶ共産党こそが内部留保を高めた存在なのですから。