付加価値税と配当と株主

 つづきにあたって、「賃金の下方硬直性」はまだそれほど崩れていないけど、所定外給与(時間外手当・休日出勤手当)はかなり抑制的な動きをしていること、賞与のあり方が変わるなど、賃金を巡る動きはこれからさらに強まってくることになります。
 
 アベノミクスでは、厚生年金基金等を廃止する圧力を高めたと同時に「NISA(ニーサ):少額投資非課税制度」、企業型確定拠出年金、個人型確定拠出年金等への加入促進を進めることになるとともに、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による株式購入割合を高めることに替わりました。海外の労働者は給与所得以外に配当等の所得を得る構造になっていることに合わせる動きと思われますし、外国人労働者を増やすことやその労働環境整備(雇用契約等を含む対応)と連動している動きであるため、国内だけしか考えなくて良かった労働者にとっては困難な時代に突入しました。

付加価値税と配当

 配当をどの様に出すかは、経営者の判断次第ですし、経営年数が古い企業はそれだけ累積しているのが一般的です。繰越剰余金で見るのか、その時々の当期利益内で収めるか、現預金の状態なのか判断を求められる際の根拠は様々です。

 中小零細企業の親族株主はあまり気にしていない印象様があります。
 それは「支払配当金(費用)」が存在しなく「利益剰余金」を株主総会で決議した際の仕分け科目では「未払配当金(負債)」と付加価値税が関係ない科目だからかもしれません。
 ただ、上場企業の場合は、法人税の課税のみならず消費税の課税によって減ったと見る株主は結構多いのかもしれません。政府によるあらゆる課税は「株主の利益を減らす行為」だからでしょう。当然のことながら、配当の原資である利益が減る費用計上には敏感です。今年の新聞では相談役の報酬に噛み付いているのもありましたから、法人税の減税にならない経費や消費税を増やす、所定外所得(時間外労働)に対しては「株主の利益を減らす行為」と捉えているようです。配当を重視する方達にとっても、付加価値税は嫌われ者です。

 金融資本主義を批判しながら、付加価値税(消費税)を批判するってどうなのでしょう。
過大に配当を要求する方達にとって、固定資産等を売却させ配当を増やさせることが、出来にくくするのが、付加価値税(消費税)の金融資本主義抑制効果でもあるのは当初からわかっていたことだと思うんです。
 金融資本主義者が、消費税減税又は廃止を叫ぶのは、まあ分かり易い行動ですよね。
 
 今ままでは、企業側が払う場合ですが、貰う場合の配当はどうなのでしょう。
 海外子会社や国内連結対象子会社、投資した企業から入る所得は「受取配当金」と呼ばれるものです。付加価値税(消費税)においては、不課税です。
 海外子会社や国内連結対象子会社、投資した企業から入る所得は「受取配当金」は、内部留保ガーと言われる方達に増やすように求められる科目でもあり、法人税の減税で増えたと思った利益が、付加価値税(消費税)で減るというなかなかアクロバティックな展開に逆切れされる方が出てもしかたがありません。

 日本の大企業の海外子会社は外国に法人税を納税していますが、その納税国の法人税率が低い場合、内部留保は蓄積しやすい状態だと言えます。このような経済環境を選択し、米国企業を含め日本企業もまた節税に勤しんでいるのです。その結果が「内部留保ガー」ですね。

 米国と日本の法人税率は元々ともに世界でも有数に高かったのですが、米国は、米国企業による租税回避によって。その高い法人税率の理由である世界の警察をやめざるを得ないわけです。安全保障費を米国企業を守るという理由があけばこそ、米国企業は法人税を適切に納税することで回収する流れだったんですね。米国企業が租税回避に勤しむと納税が減りますから、駐屯している国に対し、安全保障費を直接求めざるを得なくなるのは当然と言えるでしょう。

 日本の法人税率低下の理由はなんでしょう。小泉構造改革によるODA削減だと思います。
 日本企業の海外受注力はODAと表裏(護送船団方式)の関係にあったのだと考えられます。リスクが少なく確実に受注できるODAは海外実績を積むと同時に海外投資を国内へ戻す導管だったため、法人税率は高くなければならなかったのだと考えられます。小泉構造改革により、ODAが減らされることにより法人税税率の高さも必要ではなくなって行かざるを得なくなるから、法人税減税が進むことになります。国の方針が変われば、外需を稼ぐため海外への進出を経産省は後押しすることになりますし、海外子会社からの配当を受け取るように変わりますね。ただ、国内での取引と違い、円高では配当を増すメリットは感じられませんね。やはり円安でないと国内への配当は増えそうにありません。そうなると、金融政策(為替)で目指せ、円安140円。いや、200円。アベノミクスの初期はこんな感じでした。

 金融政策は「期待」に働きかける。配当が増えることへの「期待」はたしかに増したでしょうし、財政政策での付加価値税(消費税)5%から8%への変更も「利益」と「節税」のバランスを取りながら経営側も応じるし、要求することになります。あくまで金融取引だけしか見なければ、何かものすごく良い光景にしかみえません。でも金融関係者ばかりがこの世に存在しているわけでもなく社会全体での利害調整はせざるを得ないところです。