まなざしの先

 デトロイト市の「破綻した自治体」の記事に対する関心は高いです。でも語られるのは、自動車産業の縮減や市民の減少による税収減となっています。
 でも実際は違うようですが、リフレ派は幻影と戦っているようです。
 

上念 司@smith796000
デトロイト】左翼に破壊された町: http://youtu.be/X5LyKERODTY →左翼系市長+教職員組合+自動車労組=デトロイト没落 これは衝撃的。 http://fb.me/2KJqWd7B7

 リフレ派()の何でも左翼批判の一環で「デトロイト市の没落」がおきたことにしたいのは分らないでもありませんが、「労働権法」の導入を推奨するようで非常に気持ちの悪い方です。

http://www.tkfd.or.jp/research/project/news.php?id=1094:title=アメリカNOW 第99号 労組組合運動の分水嶺?“牙城”のミシガン州で「組合弱体化法」が成立(袴田奈緒子)]

上の表からも分かるように、労働権を最初に導入したのは南部の州。もともとアメリカにおける製造業は北部を中心に発展していたが、組合との交渉をできるだけ回避したい企業は、人件費や時間外労働など柔軟な勤務体系が組める「労働権州」に工場を移転するようになっていった。その後、アメリカでの本格生産に乗り出したトヨタ自動車などの外資系メーカーもこぞって南部州を生産拠点として選び、工業化の遅れていた南部の経済発展を支えた。ここにきて相次ぐトラブルで注目を浴びるボーイング社の新型ジェット機「787」の生産工場も当初予定していたワシントン州シアトルから、労働権州であるサウスカロライナ州に移された。

労働権の推進派はこういった実績を背景に、「労働権」を導入すれば、企業誘致が進み、雇用拡大につながると主張する。一方、反対派は労働権を認めれば、賃金低下など労働環境の悪化を招くと反発。ミシガン州で労働権を巡る採決が行われた前日に同州入りしたオバマ大統領も「労働権法は経済的合理性があるものではなく、政争の具にすぎない」と批判した。

 「労働組合」の組合費分を払わなければ「可処分所得が増える」し、企業側も社会保障費を節約できるという合意が背景にはあるようですが、日本でも同様の事例がおきていたわけですね。
 トヨタを始めとした自動車産業が米国で上げていた利益をだす「労働権州方式」を国内に持ち込むためには、「規制緩和」が必要なのでしょう。「グローバル」と「地球市民」に寄り添えば、彼らと「同一労働同一賃金」は当然だから、日本国内の労働者の賃金は平等にしないといけなくなってしまうようになりますね。どうしたものでしょう。
  
 アメポチ・シナゲロ・共産主義者とか散々な「公共事業ガー」でおなじみの「ハコモノ」(建築工事)が財政赤字の原因(建設費・維持管理費)になっているような印象操作が成されていますが、建設投資における公共建築は民間の1/10程度なので、破綻の影響があるとはとても思えません。
 マンション・アパート投資にとっては、優良顧客である公務員が宿舎を利用しないのが不満だと言うことですし、企業が福利厚生施設を自前で整備・管理することから借上げ社宅等へのコスト縮減とクレーム社員対策というのもあるのに乗ってこないことへの批判だと思いますから、顧客を集められ無い事を責任転嫁されても困ります。

あおの  ‏@aono_show
現在の累積債務がハコモノによるものじゃなくバブル崩壊したあとの不良債権処理に関連した様々な社会システム変更とデフレによるものですよ。

 建設投資における「公共建築」は民間建築の20兆円前後で推移していることは無視して、「建設投資の実質の落ち込みガー」とリフレ派(エコノミスト)等が、騒いでいましたが建築工事分は極端な動きは無く、土木工事のフレが大きかっただけで、数年の状況からそれほど極端な動きが出たとは読み取れません。2014年度は4兆円の減となる見通しから、GDPの減少を含め「供給制約」は解消に向かう方向でしょうから、リフレ派()にとっては喜ばしいでしょう。ただ、建築工事より土木の3兆円減は地方経済にとってはダメージが大きいため、これをどのように抑制するかがこれから注視することになります。
 杞憂に過ぎないでしょう。リフレ派()の皆様が民間投資をバーンと増やすでしょうから。

 
 もしかすると、日本国内でも企業城下町デトロイト市の財政破綻と同様のことがおきる可能性がありますが、現在の国内の仕組みでは中身は別のものです。リフレ派()が言う「左翼に破壊された」とは違うところを探してみましょう。 

デトロイト市の新しい実験と雇用創出―破綻の裏側にあるものhttp://www.jil.go.jp/foreign/labor_system/2013_9/usa_01.htm

復興を阻むもの

デトロイト市の人口は70万人ほどである。最盛期の人口は200万人に迫った。

 デトロイト市が凋落した原因はアメリカの自動車産業の低迷と直接の関係があるわけではない。1967年の黒人暴動で廃墟となった状態を手つかずにし続けたことが大きい。

 キング牧師が50年前の8月28日にワシントンで演説したときに、デトロイト市に本拠を置く全米自動車労働組合(UAW)は公民権運動の先頭に立っていた。けれども、昔を知る労働組合関係者は、「それは中央政府に近い場所の話に過ぎなくて、工場では黒人差別が続いていたし、労組はそれを間接的に支援さえしていた。」と語る。

 日本と違いインフラのメンテナンスを国及び自治体が法令等に基づき点検(建築基準法第12条第2項及び第4項)しており、点検結果に基づき修繕費を予算化しメンテナンスを行っています。
 米国の場合は公共施設をPFI(Private Finance Initiative:プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)事業で行っている場合が多く、管理会社(民間)にとっては、貧しい住民の多い地区での維持修繕はコストが回収できなくなるため放置しがちになったということが考えられます。
 差別的感情からくる「俺の税金が、嫌いな奴に使われるのが気に入らない」は、どこの国でも人種でも変わらない感情なのでしょう。
 
 日本のように税金で「国民の資産」ではないインフラ投資をしているのが「退職金・年金」を運営する「ミシガン州職員退職年金基金」を含めた金融投資を積極的に展開してきた「左翼」だとリフレ派()は指弾しているのです。「リフレ政策は欧米では左翼(リベラル)が支持する」とは、松尾先生が宣言する通りでもありますし、米国における「インフラ投資」「環境(再生可能エネルギー等)投資」にも熱心な存在です。

 日本における「ハコモノ」批判や「公共事業ガー」は、インフラ投資を民間資金=PFI(Private Finance Initiative:プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)によって、デトロイト市のように運営(金持ちの地区だけに投資する。日本だと東京・大阪だけに投資して、地方は切り捨てる。)したいということでもあります。コンパクトシテイやスマートシティでは、民間が提供するサービスへの対価が支払える住民だけしか居住することはできなくなるのは、「サンディ・スプリングス」が象徴するのような、商品化した自治体の姿と重なるからです。

地方自治体の財政健全化に反するPFIの推進はいますぐやめるべきだ

銀行や、事業者の都合のいいように、コンセッションを物権として取り扱うことは、短期的に民間事業者に有利なように見えて、財政状況をさらに悪化させ、プロジェクトファイナンスの原則である債券担保によるコンセッションの導入によって育成されるデューデリジェンス能力を伸ばすことを意図的に抑制し、長期的に国の力を落としている政策に見えてならない。

 民間資金を利用する「第三の矢」によって、国や地方自治体の借金(資産)が無くなるために利用するのは「銀行、事業者(大企業)」及び「商社、証券、投資家」等の都合が良いようになる可能性は否定できません。物言う出資者が黙るはずが無いからです。また、民間資金=PFI(Private Finance Initiative:プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)は、国及び地方自治体の借金(資産)を消滅させるような印象を与えるのは非常にまずいのです。
 現在の国債を含めた債務は「見える化」されているのですが、それも間接的な財政ファイナンスに拠っているからともいえます。国民一人当たり○○円の借金と言いますが、多くの国民はそれだけ貯蓄を持っているわけではありません。大半は富裕層と大企業の金なのですから、中流以下の国民のために「金持ちの金を国民一人当たり○○円で運用している」が正しいのですから、借金を返したら中流以下への投資が減ることになります。そうなると、富裕層等は「間接投資から直接投資へ」を求めるのです。

 有識者会議座長の伊藤隆敏東大教授の主張する「年金積立金管理運用独立行政法人 (GPIF)」のリスク資産への投資(国債を経由した間接投資から直接投資へ) が、「ミシガン州職員退職年金基金」や「カリフォルニア州職員退職年金基金(カルパースCalPERS))」等のように「新自由主義(ネオ・リベラリズム)」的投資をすれば、地方都市(中核市未満)及び低所得者の居住地域への投資は縮小して大都市だけにすることにしろという提言だということです。

 リフレ派(経済学者)は、東京・大阪以外は焦土で構わないらしいですね。ただ、連合や共産党なども「インフラ投資」「再生可能エネルギーファンド」等に対しても熱心であることが、「金融資本主義」批判が単純な構図ではなく表裏一体であることを念頭に入れておかなくてはならないのです。


日本版PFIの課題 : 富士通総研

費用・便益分析の重要性

 PFIプロジェクトは民間資金によって推進され、公的部門は提供されるサービスを購入する義務を負うものである。つまり、公的部門にとって、いわゆる債務負担行為となる。債務負担行為は、政府・自治体の債務残高には計上されないため、国民、住民の目にはわかりにくい。

 PFIプロジェクトは、公的部門が20年〜30年にわたって支払いを約束するものであることから、PFIプロジェクトの数、金額が増してくるにつれて、PFIに伴う債務負担行為に基づく単年度当たりの支出額のレベルをどの程度とするか(例えば予算規模の○%)、後年度負担額の総額をどの程度までとするかといったことの検討が必要である。そうでなければ、国民の目に見えにくいところでの新たな「財政の硬直化」要因となる。また、国・地方の政治家が、PFIを財政制約の中で新規プロジェクトを可能にする「打ち出の小槌」と考える傾向があることも否定できない。「プロジェクトを実施したいが予算がない。それならPFIで」という発想である。こうした政治家にとっての「誘惑」を排除する仕組みも必要である。

 つまり、無駄なプロジェクトは実施しないようにする仕組みが求められる。我が国であまり議論されていない点であるが、PFIはプロジェクトそのものの執行費用の効率化に寄与しうるが、そもそもそのプロジェクトを実施すべきかどうか、他のプロジェクトと比較してどちらを優先させるべきかといった予算配分における効率化には直接結びつかない。イギリスでは、PFIであろうと通常の公共プロジェクトであろうと、資本支出を伴うプロジェクト推進の前にまず、費用・便益分析を行うことになっており、ここで精査され、選択されたプロジェクトのみが残る仕組みができている。我が国での現状では、PFIプロジェクトに進む前に、同様の仕組みを設定しておかないと、政治家主導の非効率(住民の便益と比較してコストが高過ぎる)と思われる施設整備をPFIで行うといった事態を招く可能性がある。

求められる早急な官側の実施体制確立

 PFIは、官側のVFM(Value For Money)追求と民間側の利潤最大化の均衡点を探る仕組みであり、官民双方がそれぞれの目的を達成するようにならない限り、プロジェクト自体が途中で頓挫したり、PFIで行うことによってかえって公的負担が増加したりする可能性がある。ただし、この均衡点はただ単に民間に任せれば達成されるわけではない。
 官側の実施体制確立こそが日本版PFI成功のカギである。リスク評価に基づくPSCの算出手法の確立、費用・便益分析の徹底、競争環境の確保、余剰となる公務員処遇の明確化等、官側によるPFI実施のための早急な「インフラ整備」(制度作り)が求められている。

 『「費用便益」を言えば黙る』というのがありますが、アベノミクスの第三の矢「成長戦略」における「民間資金の活用」=「PFI(Private Finance Initiative:プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)」は、単なる公務員削減と投資の利益しか頭にない方達が「費用便益」を連呼するのは非常に危険なのです。

[http://www.nikkei.com/article/DGXNASGV27003_X21C13A1000000/:title=[FT]ロンドン五輪の負担は重かった]

 ネオリベな方達が「民間資金」で行われた成功例として出していましたが、幻想でしかなかったようです。英国におけるリフレ政策は常に民間投資の失敗をカバーし続けることが国家に義務付けされているように感じます。

英国の地方自治 PFI/PPPの概要
 

これにより公共部門は、従来型の資産(道路、橋、建物など)を所有し、住民が求める行政サービスを運営、提供していた「サービスの提供者」から、実際にサービスを提供する民間部門との契約に基づき、長期にわたりサービスを「購入」する「サービスの購入者」へとその役割を大きく変化させることになる。

 「サービスの購入者」となれば、民間企業に対する債務を負う側になる。それも長期に渡り、国民の目につかないようにすると言うことになります。
 「国債ガー」というほうが、国民に対して「見える化」していたのを「見えにくくする」どちらが良いのでしょうか。

英国の地方自治 - PFIの抱える問題点等

 PFI事業に内在する特性から次に掲げる要素により、PFI事業は地方自治体による直営事業と比較した場合、全体費用としても割高になる懸念も指摘されている。

 資金調達を民間部門が実施する場合、公的部門と比較して調達金利が高利率となること

 公的部門と異なり、株主への配当を考慮しなければならない民間部門は一定の利潤追求が不可避であること

 公的部門から外部専門家(弁護士、会計士、コンサルタントなど)に支払う経費が多額になる恐れがあること

 リスク移転を引き受ける民間部門は、リスクに見合う高額の見返りを求めざるを得ないこと

 契約期間終了時期に行われる交渉において、サービスを提供する民間部門が独占的・排他的地位にあることが多いため、コストの増大につながる恐れがあること

 公設民営で国公立の小中高及び大学等を民間がやればコストも安くなると言うのもありますが、民間経営の都合のためのようです。

学校における清掃業務及び施設の維持管理に要する平均コストを比較した場合、地方自治体が直営するケースよりもPFI事業による学校運営の方が割高になる傾向も合わせて指摘されている。

 前に戻り、リフレ派()が言った「左翼による破壊」に対しては、ネオリベがやったんだという反論があります。

デトロイト市の財政破綻「緊急財政管理官」による再建の中身 | Democracy Now!

 今回の破産のニュースで気付くのは、デトロイト市長の名が報道にほとんど登場しないことです。仕切っているのはデトロイト市長ではなく、ミシガン州知事のリック・スナイダー氏です。共和党のスナイダー氏は2013年3月、デトロイト市の財政運営を州が引き受けると発表し、財政再建に取り組む非常事態管理者を任命しました。非常事態管理者は住民の反対を押し切って共和党のスナイダー知事が強力に導入した制度で、選挙で選ばれた市長や市議を超えた権限をもちます。

デトロイト市では、この非常事態管理者のもと180億ドルに及ぶとみられる大規模な負債を処理していくことになりますが、失敗しても成功しても選挙による民意の評価を受けることはなく、任期の終了とともに去っていくだけです。破産により、痛みを負わされるのは誰か?

 破産報道とともに年金が債務の多くを占めていることが報じられ、じゃ、当然、切らなきゃとする報道が目立ちます。でもこの年金は組合員が地道に貯めてきた積立金に基づく適切な額の支払いであり、組合が組織力を使って法外な額の支払いをごり押ししようとしているわけではありません。
 
 人口の減少により市の職員の数も減り、現役の1人の職員が支払う積立金で退職した職員3人を支えねばならないという困った状況になってしまっただけです。一方で市には、総工費4億4400万ドルと言われるアイスホッケー場建設の計画もあります。

 年金は切らなくちゃという姿勢の非常事態管理者ですが、アイスホッケー場にはおカネを出したいと言っています。スナイダー知事は、2011年 以来、非常事態管理者の法案のほかにも組合つぶしの法案も通しており、ネオリベ路線を推進しているのは明らかです。市の所得税に上限をつけるかわりに州が 市を経済的に支援すると約束していましたが、企業への減税をおこなったため資金が足りなくなったとして市への経済的支援にはほんのわずかな額しか渡していません。

デトロイト市の破綻「ミシガン州政府の助成金カットが主因」―元ミシガン州AFL・CIO会長にインタビュー

「企業法人税減税がほんとうの原因」

「負債額の取り上げ方にも問題がある」とガフニー氏は言う。「180億ドルにのぼると報道されることがあるデトロイト市の負債だが、単年度でみればその額はずっと小さく、4億ドル未満である」とのことである。そこには、株式会社と同じ会計基準による負債額の算出方法が影響している。「市の現役職員と退職者向けの健康保険にかかる経費は60億ドルと試算されているが、この額は向こう30年間の総額であり、単年度にかかるものではない」と同氏は指摘する。市は株式会社ではないので、このような後年度負担による負債額が大きいからといって、株式会社のように株価が下がって資産が目減りしたり、市場からの資金調達が滞ったりすることはない。だからこそ、州もしくは連邦政府全体の問題として長期的に取り組むことが可能であるわけだ。

市内中心部の荒廃はそのままに、周辺部分のみが栄えるといいう構図を放置しながら、その中心部の公共サービスは州政府予算によって賄われてきたというこれまでの姿を、なんら改善することなく、州政府の助成金のみがカットされた。その背景には、「州政府が行った企業法人税減税による税収の落ち込みがあった」と、ガフニー氏は合わせて指摘している。

 財政政策(減税)を推奨するリフレ派が、「土建供給制約」を連呼すればするほど、デトロイト市のように公共インフラを維持するコストを優先的に削減される「都道府県予算のカット」による基礎自治体の財政崩壊を促すことに繋がるのです。
 また、「アベノミクス特区による大減税(法人税・地方法人税・固定資産税)による税収減」を補填する「消費税」による財源確保と再分配機能が、こういうことにならないための措置にならないと大変だと思うのです。消費税反対は、公共サービス縮小から民間サービス=PFI(Private Finance Initiative:プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)=国土総金融商品化によって、住民を選別・排除することを促す面もありなかなか簡単なものではありません。