津波被災の記録109

 当初はこんなに続いて書くことになるとは思わなかった。被災地のあまり書かれない現実の一端を残すことと、途中で倒れるかもしれないのでその経過が残ればいいか程度だった。土日はテレビを見るのが嫌になったのも「復興が遅れている。」というお決まりの言葉が流れるから。
 被災地に於いて、官民共に復旧・復興に携わる方達にとって、耳触りであり日々の業務について責め立てられているようなものだ。
 「復興が遅れている。」とは、「人災」によるものでしょう。再分配機能の一つである「公務員」と「公共投資の担い手」が縮小して、社会コストが下がったと勘違いしたのは、民間(大企業)は何でもできるという傲慢さ以外の何物でもない。
 阪神・淡路大震災に於いては、大都市圏という立地条件により震災復興予算が、どのように循環したかについてはあまり伝わってこなかった。まだ自分自身も関わらなかったせいもある。中越地震は、東北からも復旧・復興事業に携わったが、ゼネコンの「復興はゼネコンだけでやり遂げた。中小零細建設業は役に立たなかった。」という捨て台詞を吐かれるようになる。この辺りから「公務員」や「中小零細建設業」は存在する必要が無いという空気は更に強まっていったと思う。「中小零細建設業」は、単に労務の提供をするしかない「請負の否定」をゼネコンによって求められることとなり、多くは雇用が維持する事も困難な状況へと落ち、重機・車両等を整理する業者が増えていくことで、「技術者だけの会社」と「技能職を含めた労務者」に会社が変質していくことで、災害のみならず平常時の事業の継続性すら危ぶまれる企業体質となった。
 このような傾向は、「地方自治体」を含め、本社機能にだけ優秀な社員を囲い、現業部門は都合の良い労働者を必要とすることになっていった。震災時のBCPに見られるように保護対象は、株主の資産と本社機能を担う社員だけを助ける傾向が随所にみられることになる。被災地を美化しながら、そういう闇の部分を消すことに必死になる、コンサルティングビジネスについては被災地から冷ややかに眺めざるを得ない。
 岩手・宮城内陸地震は、岩手県に於いてはゼネコンの捨て台詞を教訓として、被災地の建設業が随分と頑張ったが、この時、沿岸部(被災地)は予算の偏重により厳しい経営を余儀なくされた。本当にあのときは苦しかったこともあり、「復興予算の流用」を批判する人達の無責任な言動には腹が立った。現在、自分達は被災地であるがかって内陸部の建設業者がしたことを忘れたふりをして、復旧・復興の担い手として参画をお願いしている。今回の規模は当時と比すべきではないかもしれないが、被災地以外の地域が予算の偏重により困窮することは、かって経験したことを思えば、あってはならないことだろうと思う。
 
 地方公務員のこれほどの移動と余力がない状態であるのも、「新しい公共」の幻想による「人災」だろうと思う。


震災復興を加速させるために(3)外部人材が解媒 医療体制の構築・大船渡市

大船渡市企画政策部企画調整課の志田努課長は「震災後、大学教授やゼネコン、企業、政治家など、多くの人が支援したいとやってきたが、地域に根を張って共に頑張ろうという人は多くない。若い2人はこれまでの仕事でいろんなネットワークを持っていて、私たちでは調べるのに時間のかかる情報でもすぐ取ってきてくれる。役人にはない民間人ならではの突破力で、地域住民にもどんどん入り込んで信頼を獲得している」と言う。

必要な人材 邪魔する人材
 「震災復興を加速させるために」(1)で紹介した南相馬市でも、NPOが多く誕生しているが、外部からやってきたNPOは設立時の補助金目当てではないかというものも散見されるという。南相馬では子供とお母さんがもっとも減っているのに、保育関係のNPOができたり、行政が個人線量計や計測器を配布しているのに、放射性物質を計測するNPOが登場したりしているという。

 外部人材は必要だが、復興の役にたたないばかりか、妨げになるような人もいるということだ。国土交通省出身で大船渡市副市長を務める角田陽介さんはこう言う。

 「専門性のある人材はもちろん来て欲しい。民間ならではの能力を持つ人にも来て欲しい。だが、こんな人は来ないで欲しい。アンケートばかり取る自己満足の研究者。1人1台の車が要るという地方の実情がわからない、都会の価値観を押し付ける人。自分の発想を押し付けるばかりで調整をしない人。マインドの問題です」

 マシナリさんは「利害調整」の実務の困難さについては丁寧に説明しています。
 被災地では、官官と官民、民民(地元×地元、地元と仙台・東京等在住者)の利害対立で、困難さは外から見ている分ではわかりにくいのかもしれませんが、理解してもらわないと、「復興が進んでいない。」でバッサリとされないためには、強制力のある法律で解決するという手法を整備することになります。民主党政権は、被災自治体に対して早急に浸水用地を制限することを求めました。
 
自民党も、
大規模災害時の権利制限、憲法改正で…石破氏

 いきなり憲法改正をだしたので、一部では噴き上がったのも分からないではありませんが、疲弊する地方公務員と被災地と被災地外の住民対立を一部緩和する処置として、法律を整備する必要はあるのでしょう。
 東日本大震災から2年。被災地も当事者として見つめ直す時期であり、被災地外も支援の在り方や「利害調整」について、お互いに問い直す節目となったのかもしれません。


追記

@azmshuji
まぁ被災地で商売する気満々の人はいっぱいみかけたなぁ・・・ 『なにしにきてん』と思ってました。

いむらや @reichi062
被災地に妙な人が群がるのは世の常です。ああいう人たちにとっては人の不幸が飯の種だから

永松伸吾 @shingon72
 311以降にわか防災専門家が増えた。結構なことです。これからも引き続き防災の仕事をして頂きたいと思います。

高燃費(C寝台) @ta1000islands
いわゆる「被災3県」というと、岩手宮城福島を指すわけですが、これらの県はほぼ全域で何らかの被害があったと見て良い地域だけど、そこでも津波被ったところとそうじゃないところの温度差はある。

高橋 準 @myriel_june
言葉は残酷で、たった数十文字で人の心を、どん底まで落とすことができる。今回の震災後まきちらされたのは、放射性物質ばかりではない。悪意と憎悪もだ。それを運んでいるのは、一つ一つは短い言葉たち。まきちらしている本人たちには自覚がないどころか、「自分たちは正義だ」と思っている

ロクスケ(ロクデモ ナイ) @HRokusuke
関心が薄れたとかいわれる西日本方面のみなさま、東日本の復興再生がならないと予想される東海東南海南海の巨大災害が起きたときに東の地方から支援が続かないかもしれません。どうか一日も早く“東を元気にすること”がみなさまにとってもその時の支えの一助になるとお考え下さい。

cloudy @kmori58
津波被災者について「農業や漁業はどうせ大して儲からないのだから、莫大な費用をかけて旧態復旧させるより、転職や起業を助けるためにお金を出すのがよい」という意見はあまり見られないね。自分は手持ちの情報が少ないので断言はできないが今の所これに近い意見。