津波被災の記録96

申請12グループ全て採択 県の復旧補助金

県の施設復旧補助金認定
5次前半、総額69億円

県は16日、被災中小企業などのグループに施設・設備復旧費の最大4分の3を国と補助するグループ補助金の第5次公募(前半)の認定結果を公表し、申請のあった12グループ全てが採択された。申請した全グループが採択されたのは初めて。補助総額は69億円。
 5次前半の公募は昨年11月に行われた。今回の12グループは全て4次募集では不採択だったが、県によると「復興事業計画が見直され、採択レベルに達した」と判断されたという。
「紙面抜粋」
 5次前半の公募は昨年11月に行われた。今回の12グループは全て4次募集では不採択だったが、県によると「復興事業計画が見直され、採択レベルに達した」と判断されたという。
 代表者の所在地では釜石が最多の4グループで、このほか宮古の2グループなど。内容は商店街やインフラ復興、肥料のサプライチェーンなど幅広いグループが認定された。
 この結果、グループ補助金1〜5次前半の合計で63グループ(構成員1188事業者、うち補助金交付先882事業者)に646億円(国431億円、県215億円)の交付が決まった。
 5次後半の公募は今月11日に締め切られ、33グループが申請した。結果は来月下旬ごろに公表される予定だ。
 
 採択を受けた企業グループは次の通り。
 ▽久慈港湾機能強化グループ(久慈港運など15事業者)
 ▽釜石地区<絆>サポートグループ(岩手三菱ふそう自動車販売など9)
 ▽宮古さ おでんせ!ネットワーク(海幸園など8)
 ▽いわて三陸住宅インフラ復興ネットワーク(東邦岩手宮古営業所など20)
 ▽新生やまだ商店街グループ(写真屋KONなど22)
 ▽大槌地域コミュニティグループ(ティーティー・エムなど26)
 ▽釜石地域観光インフラ産業復興グループ(小澤商店など24)
 ▽農業用肥料サプライチェーングループ(ミネックスなど8)
 ▽釜石住環境復旧・復興グループ(釜石レミコンなど15)
 ▽釜石地区建設業経営再生・復興推進グループ(青紀土木など9)
 ▽県石油商業組合大船渡支部・県高圧ガス保安協会大船渡支部連携グループ(丸新石油店など18)
 ▽住宅換気システム製造グループ(佐原など6)
(2013.1.17)


 前回取上げた山田町のグループが採択されたようです。おめでとうございます。
 プレゼン時に色々と問題があって審査員からも厳しい指摘を受けたグループもあるやに聞いてはいました。プレゼンの評価が高かったのは、釜石地区<絆>サポートグループ(岩手三菱ふそう自動車販売など9)とのことでした。
 基本的に「共同事業」=「復興事業計画」の採択はプレゼンの結果!?を踏まえて、補助金交付額(あくまでも上限の枠)を県職員の査定によって決定したものを国(経済産業省中小企業庁)が認定したというのが今回の結果で、申請内容に沿った施設・設備の復旧が完了し、財務省の検査が通って、補助金(税金)が入金されるので、まだ交付されたわけではありません。
 
 えーと続き。

補助金(税金)の回収
 被災中小零細事業経営者や扇動する支援者を騙る方達が、補助金(税金)を貰っても返す必要が無いし、国は返せとは言わないはず。と言います。ここで勘違いしてしまい、「書いて出せば通る補助金」を「貰わないと損だ!!」という気持ちが高まった時に、NHKスペシャルやメディアによる「復興予算の流用」で、「グループ補助金」を貰えない人達がいるのに怪しからんという世論を作り上げたことで被災地はさらに混迷を増してしまいました。
 補助金(税金)は、リフレ派の言うような「給付金」でも「支援金」でもありません。補助金は益金として計上し納税しなければなりません。震災直後の会計年度であれば、損失が勝る場合もありますが、年度の経過とともに受領した補助金をその年度で約38%以上納税することになります。その後は、長期に渡り、法人税・法人事業税・法人市民税・固定資産税で回収していきます。金融機関が元本と利息を徴収するのとは違いますが、納税で回収しているのです。これは他の補助金も同様です。

事業承継と排除
 補助金(税金)の回収を確実に担保するため、被災中小零細事業者に事業の継続性を「共同事業」と「実行組織」を要求することになります。

 今回の「グループ補助金」は直接的な納税をより確実にさせることを目的としているため、事業継承者がいない事業者には申請を断念して頂くようにコンサルタント等が説明をします。その時点で「書いて出せば通る補助金」から「貰わないと損だ!!」という気持ちが逆なでされることで、メディアで不満をぶちまけることになったのです。
 水産庁の8/9の補助金も漁協を通じた分と○○養殖業生産組合方式(組合員給与化)には手厚い支援をしていますが、後継者がいない漁業者や高齢な漁業者は対象としない旨の宣告が成されました。ここで、事業者間の支援格差は一気に拡大したのです。
 マシナリさんが指摘するように「自助努力しないと支援しない」というのが「復興の方針」の大前提となっているため、住宅再建が進まないのも当然と言えるでしょう。だって3.11以前の復旧そのものが「自助努力が足りない」と断定されているからからです。
 どれほど多くの自治体職員が応援に来ようとも、支援職員が「復興のために協力をしてください。」と言っても被災地の現実は「自助努力しないと支援しない」と宣告される方とNPOや大学関係者等から手厚い「自助努力なんて必要ない。ただ支援だけを受けてください」というように分断されてしまった状況で誰が協力的に成れるでしょう。

machineryの日々「自助努力を支援するというネオリベ的矛盾」

実は「ネオリベ的」な行政手法というのは、バラマキとか護送船団方式への批判に対応するため、保護対象という前提をカモフラージュしながらその方々への保護を正当化するための方便でもあったわけです。

 下線の指摘部分は、「新協同組織革命―過当競争を超えて ・百瀬 恵夫【著】」のなかでは、護送船団方式から「やる気のある(自助)中小企業者の選抜」による修正資本主義に対応する「協同主義」への移行としての「協同組合組成」が書かれています。
 ネオリベ的行政手法は、市場からの淘汰をより促進するために「協同主義」を上手に利用しているのだと思います。それは保護という名での「排除の論理」の正当化がし易いためではないかと思います。
協同主義の問題
 グループ(協同組合等)の「組合員の資格」で、誰でもが入れる組織ではないことを明確化するのですが、「何で俺を入れない」ということになって、事業者間でトラブルが発生します。これも理由が説明できない(すると組成の内容が分かる人にはわかるから)ために、別グループを立ち上げたり分裂していくことで、グループ間対立が生じました。
 ある意味「蠱毒」を組成しているようで、自分の頃の協同組合論とは別の方向過ぎてグループ組成の経緯を考えるとどうしても違和感がありますね。

machineryの日々「 社会の安定=自営業と雇用の安定?」

本書ではこのほかにも跡継ぎ問題など商店街の抱える問題が分析され、このような状況を踏まえて、新氏は、商店街(とそれを構成する中小商業者)が自らを「弱者」として保護を求めるのではなく、商店街が独自に有する機能に特化するような取組を進めるべきであって、そのために「中間的形態である協同組合や社会的企業を中心に商店街を再構築することを考えている」とおっしゃっているのだろうと思います。私もその方向性についてはおおむね賛同するところですが、ではそれを実際に進めるための制度が、果たしてグループ補助金なのかというのは大いに疑問が残るところですね。

 「復旧は3.11以前に戻す」ことであり「復興は3.11以前に復旧した状態から持続可能な成長をする」ことが本来の定義ですが、「グループ補助金」は「復興に資する事業者だけ復旧を認める」という「復興」=「構造改革の推進」という裏定義を隠していることについては腹が立つところです。
 「自助努力」として事業継続を断念し、株式会社による事業部門化に移行して存続させることをコンサルタント等は要求することになります。これも混乱を強めた一因です。街づくりコンサルタントは「商店街再生(再構築)の事例」として、「香川県丸亀商店街」を出すことが多く、「一商店街一業種」を提案します。
 マシナリさんが指摘する通り「勝ち残ったものだけが、総取り」というのはユニクロ柳井氏「一番にならないと意味がない」や「できん者はできんままで結構」三浦朱門氏などの言葉が浮かびます。被災して困窮している自営業者にさらに死の宣告を「グループ補助金」という制度を用いてすることが正しいこととは思えません。

別紙1と定款等の対照表
自分が整理する為に作成していたものです。合っているかどうかは保証ができません。