津波被災の記録61

 東日本大震災から一年が経ち、会社の喪失した資産の再建のため「中小企業等グループ施設等復旧整備補助金」=「グループ補助金」に申請することになりました。
 現在まだ正式な募集が岩手県より公式に出ているわけではありませんが、空気がありまして、今回の申請で終了となるだろうということらしい。

 一次募集は、釜石市が手続きを行い農林水産系の一次産業関連(漁協と水産加工業者を主体)とし、二次募集は、製造業を中心として、新日鐵東北電力、SMC等を絡めたものが対象、三次産業はホテル関係を主体とした三次産業が助成対象となりました。中小企業庁で公開しているので、お伺いして資料を集め捲る。随分と岩手県では、事業仕分け同様にプレゼンを要求したので、補助金コンサル系の方達の跋扈を招きまして、成功報酬は、グループ全体補助金額の3%らしい。100億で3億払ったら、再建の際の施設・設備の中身が薄くなるだろうし、自己負担分の手当て(銀行融資)も厳しいものとなるだろうなあと感じた。今後の首都圏、東海等の大規模災害があった場合は、今回事例をどのように生かすか問われるだろう。

 仮設事務所・仮設商店街により再建支援は「中小機構」に国会の予算承認により蓄えてきた国民の税金が使用されたわけであるが、今後の首都圏等大規模災害時の資金を国会議員が検討している形跡は薄いような気がする。当事者たる住民はどう考えているのだろう。事業仕分けに熱中し、そういう部分を薄くしても大丈夫なのだろうと、さらなる火遊びに勤しむのだろうなあ。橋下大阪市長の言に一喜一憂するようでは。

 グループ補助金が、「国民の税金」という意識が欠落した状態で利用し、その適切な運用と管理ということを、当該申請を通じ被災地の人々が学ぶ機会でもあるが、中々欠落した意識を有する経営者が多くて大変だ。まあだからこそ、公的セクター批判が簡単にできるということでもあるのだろう。そして、大都市部から批判を浴びているのもそういう意識で「国民の税金」に接していることが一因だった。
 自分たちが納付する税金より多くの公共サービスを供していながら、その代行者(自身の能力不足を代替しうる有意な人材)を認めることができないことを是正する良い機会にしてほしいものだ。NPO等を嫌うのも、共同体の保守性と相互承認による紐帯の形成が成されるべきなのだが、その切断を促進することへの忌避なんだろう。

>第4章「変革なき組織的家族社会の深層」抜粋
「日本には『個』の組織化である『民主主義』の基礎であるべき、組織(システム)という概念がない。組織という概念は、すべて『合理的に組み立てられた対象』を意味する。それは常に分解可能であり、ばらばらの部品にして再構築できる対象であり、同時に、その部品は等量・等質で常に交換可能のはずである。

日本における最も米国的といわれる企業も、その実体は「組織」ではなく、一種、擬制の血縁集団ともいうべき「組織的家族」とでも名づくべき家族なのである。

 グループ補助金の申請のための書類を作成しながら、頭の片隅に引っかかっていたのが、この補助金申請により形成された場合、地方に於いてはより濃密な「組織的家族」である経営体が組織として変われるだろうかということ、「国民の税金」の使用することによる会計検査院岩手県により監査をどう考えているのだろう、今回の被災地全てに対し「組織」管理が要求され、その責任も直截的に経験することになることに堪えられるだろうか。
 
 公的セクターという防波堤は今回の震災で壊れているからこそ、経済団体は職員を公務員として復興庁の政策決定へ関与させる道を開いたし、コンサルへの依存が高まり、NPO・大学等の市町村への政策決定への関与は強まった。
 あの津波は、様々な防波堤を壊していったのだなあと、振り返りながら、前を見ながら溜息が出た。