再生

 不思議なほど、ぶくまが無い。関心の薄い記事なんだろうか。
 マシナリさん、hamacan先生のエントリーと重なる記事ではあるが、被災地というものをどのように見ているかというものの本音が垣間見れる動きではある。まあ、「いでおろぎー」を弄って遊ぶほうが楽しいということで、そういうエントリーに関心が向かっているのを、見ていると実務が本当に嫌いな人達が多いということを実感させられる。貧困の克服に本気で向き合う気が無いのだなと。
 被災地以外への受け入れを用意する基礎自治体の本音が「人狩り」に近いものであることを言うべきではないと自制しつつもこの記事を読みながら、今後の再生への困難さにへこんでしまう。この政権と県・基礎自治体の動きは明らかに、生きる希望を奪うことを実践しているように感じて悲観的に成らざるを得ないのも、「希望学」は、如何に人は絶望するかという研究でもあって人間としての存在をどのように奪えば良いかということが感じられていたこと、新日鐵の合理化による雇用の喪失と市民の離散と地縁血縁の断絶がもたらしたものを、また経験することで、若年層が東京等へ向かうことは抑えられない。
 だから、世田谷区長がああいう人になったことで、厳しい未来しか用意されていない若年層に出ていくも地獄、留まるも地獄の道を用意しようとする遅い動きに、憤ってしまわざるを得ない。
 
http://mainichi.jp/select/opinion/eye/news/20110527k0000m070171000c.html?toptopic=tab2_text
記者の目:阪神の経験から考える震災復興=田畑知之
 東日本大震災の被災地の復興が進まない。同震災復興特別措置法案の審議がようやく始まったが、責任のなすりあいのような国会論戦が、復興政策をどれだけ深めるだろうか。阪神大震災(95年)の復興の過程を取材した経験から、あえて「巧遅よりも拙速を尊ぶべきだ」と言いたい。復興政策にスピードを欠き、地域共同体の再建が阻まれた実例を見てきたからだ。

 ◇故郷離れ避難し1年半で定住 
 関西学院大社会学部の荻野昌弘教授らは、自宅を失った被災者129人を95年から98年にかけて3回調査し、彼らがどう移動したか分析した。多くは避難所に一時避難し、その後は仮設住宅や被災地内外の公営住宅に移ったり、自力で自宅を再建した。調査結果を分析すると、自宅を再建したり、被災した場所とは別の場所で定住を決意、といった移動パターンは被災からほぼ1年半で固定化していた。

 つまり、被災地外の公営住宅に住み着いた人たちは、兵庫県内外を問わず、そこでの定住を1年半で覚悟した。荻野教授は「被災前の地に戻りたくても移動先での生活が安定すると動けなくなる。共同体を復興するには、定住を決意する前に復興計画を示す必要があることを、この調査は示唆している」と言う。

 東日本大震災でも、故郷を離れた避難先で、子どもが避難先の学校に慣れ、両親もそこで仕事を得れば、定住志向が増すだろう。帰りたくても帰れない人が出てくる。家族と一緒に移った人はまだいい。住み慣れた町から遠く離れて独りで暮らす高齢者のことを考えると、つらくなる。

 もちろん、被災地に雇用が無ければ県外に避難した人たちは帰って来られないし、被災地外への流出は続く。安定した雇用には経済の活性化が必要だ。

 大阪大の林敏彦名誉教授らによると、阪神大震災の場合、95年からの5年間に約7.7兆円の復旧・復興事業費が投じられたものの、うち約9割が被災地外に流出した。工事主体の事業を請け負ったのは主に被災地外のゼネコンだったからだ。現場作業員として働く形で地元に恩恵はあったが、神戸経済は震災前の8割程度に縮小した。復旧・復興事業はインフラなどの更新需要の先食いに終わり、安定した新規雇用を生まなかった。

 案の定、復旧工事が一段落した97、98年ごろから被災地の経済は冷え込み、中小企業の倒産や廃業が相次いだ。仕事がない中高年の男性が仮設住宅や復興公営住宅に引きこもって酒におぼれ、孤独死する例が続発した。私の知人の男性も自殺した。運転手だった彼は震災後、仮設住宅での事故で失明。周囲に「働きたい」と言いながら、生活保護を受けて復興公営住宅で1人暮らしをしていた。00年の初夏、復興住宅であった住民の交流会で、彼はその輪に入らず、離れて見つめていたという。その夜、彼は命を絶った。57歳だった。

 職を失うことは社会とのつながりを失うことに等しい。雇用を確保することは、被災者に生きがいを与えることと同じだと感じている。

 今回、復興事業に被災者を雇用し、現金を支給する「キャッシュ・フォー・ワーク」が導入されている。がれきの撤去作業に被災者が従事しているのが一例だ。被災者に目標を持ってもらい、復興需要を循環させる重要な取り組みだ。ただし、提唱者の一人、関西大社会安全学部の永松伸吾准教授は「恒久的な雇用ではない」と認める。

 工場の復旧や新規誘致は重要だ。だが、例えば東北の被災地にも多い半導体関連など精密部品の工場は、設備を更新すれば生産性が上がる分野であり、必ずしも多くの雇用は期待できない。

 ◇福祉や農漁業の雇用創出がカギ
 私は、農漁業といった地場産業の早期復興と、高齢者介護など福祉産業の充実が重要だと考える。神戸大の中谷武名誉教授が兵庫県の産業連関表を基に、建設主体の復興事業より福祉産業に投資した方が3倍の雇用増が見込める、と分析した例がある。

 東北の被災地は高齢化が進む地域だ。介護に当たっていた家族が津波で被害を受け、外部の介護を求める人も多いのではないか。新しい施設が必要だし、小規模施設ならば地元工務店が請け負える。

 地域再生の青写真を早期に示し、雇用を創出することが共同体の復興に必要だ。そのために、被災地の自治体は「復興のためにこの事業が必要だ」という具体案を提示し、東日本大震災復興構想会議で肉付けし、一刻も早く実行に移す必要がある。具体的な中身の乏しい国会論戦を見ていると、「時間に余裕はないのに」といらだってくるのだ。(大阪経済部)