津波被災の記録124

東日本大震災:イオン「実験」陸前高田、釜石中心部に出店

◇「被災地で一からまちを作る」

 流通最大手イオンが来年、東日本大震災で壊滅的な被害に遭った岩手県陸前高田、釜石両市の中心部に相次ぎ出店する。大型店舗を都市部の郊外に展開し、中心市街地を空洞化させたと指摘されてきたが、「被災地で一からまちを作る」(村上教行(のりゆき)・イオン専務執行役東北代表)と新たな方向性を打ち出した。都市部で出店余地がなくなる中、巨大流通資本が人口減少社会での生き残りをかけ、被災地で「実験」を始める。

 陸前高田市では「イオンスーパーセンター」が来春、水田の一角に開店する。1キロ先の海辺の中心市街地は津波で更地となっている。出店の背景には数年続くとみられる復興需要がある。流入する大量の作業員で当面の人口減少分は埋まり、仙台市青森県八戸市間の三陸沿岸道路建設も震災後に本格化している。
 だが、村上氏は「それだけではない」と強調。「中心商業施設を目指す。郵便局も地元商店も近くに来ればいい」と、まちづくりの青写真を語った。復興後も作業員を地元に定着させるため、グループ傘下の結婚相談所で相手を紹介する。その子供が学校に上がれば学用品を提供する。「まちそのものを作る覚悟だ」。そう語る村上氏も宮城県気仙沼市出身で、兄の営む商店は津波で流された。
この出店を、現地イオン関係者は「実験」と呼ぶ。大型小売りが都市部で飽和し、隣の宮城沿岸部でも他社との競合が強まる中、より人口の少ない空白地帯へどう展開していくかに存続がかかる。新店舗の延べ床面積は従来の半分の約6000平方メートル。「陸前高田で成功すれば他の地方都市でもやっていける」と語る。
 地元に復興後の撤退を心配する声もあるが、村上氏は強く否定。周囲の環境変化に合わせ店舗移転を奨励した創業者の家訓「大黒柱に車をつけよ」を引き、「まちを転々と歩けと言われてきたが、転々とするまちもなくなった」と新たな道を迫られた背景を述べた。
 実際、出店へ着々と布石を打ってきた。「被災者の買い物環境を整えたい」と震災2カ月後の2011年5月、市から3カ月の期限で施設を借り、翌月に出張販売を開始。市内2店舗が被災した三陸地方の有力ストアは同8月に販売を再開したが、被災者は「競争がないから値段が高い」と震災前からの不満を募らせ、出張販売継続を求める800人分の署名をイオンや市に寄せた。追い風を受けイオンは同11月に仮設店舗を建てる一方、正式出店の用地探しを業者に依頼した。
中心市街地では200以上の商店の大半が被災。半数は店を閉じ、残る半数は各地に散った仮設店舗で営業を続ける。市は市街地の半分を海抜12メートルにかさ上げして商店街を再生する考えだが、実現のめどは立たず「いつ商店街を作れるとも言えない」(市都市計画課の担当者)。地元商業者からは「イオンと同じスタートラインに立てずに再生できるのか」との声が上がる。
 一方、釜石市では4万7000平方メートルの「イオンタウン」が来春、中心市街地に近い新日鉄釜石(現・新日鉄住金)跡地に開店する。ピーク時9万人台だった市の人口は1989年の高炉休止を経て、震災後の現在約3万7000人。市は「出店で再び人を吸い寄せる側になる」と、イオンにまちの再生を委ねている。【市川明代】

「被災地の復興」が、大都市圏の大資本のみならず大学等の「実験」=「モルモット」の一面があることについては、以前から指摘をしているところです。

 市内2店舗が被災した三陸地方の有力ストアは同8月に販売を再開したが、被災者は「競争がないから値段が高い」と震災前からの不満を募らせ、出張販売継続を求める800人分の署名をイオンや市に寄せた。

 被災中小企業がグループ補助金等を得ても再建が困難なのは、運転資金の循環が困難である点と設備投資を回収する価格転嫁の困難さにつきます。地域からの仕入れ・雇用等を維持するコストを被災者(消費者)自身が支払いを拒絶する。コミュニティと地域経済を拒絶する理由を「競争がない」というのですから、大資本との競争による「衰退する地方」は被災者(消費者)の理想郷の一面でもあると言えるでしょう。
 大資本であっても「まちそのものを作る覚悟だ」=「実験」をするにしてもリスクは負いたくないため、「復興特区」や「成長産業に対する補助金」が民主党政権下で用意されたのです。これについてはアベノミクスの「成長戦略」も同様です。
 大規模再開発事業において、最大の課題は優良なテナントを確保することが困難であることにあります。そのため、東京資本を守るためのテナントと消費者の確保を被災自治体に強制させることになりますから、復興計画は地元の意向ではなく東京資本の意向が最優先されます。

リ ベラルな方達は、「地域経済の循環」を「地域通貨」等で行おうとしますが、大半は失敗します。小規模な経済圏は資金量が足らないため消費の加速度を増し、「コミュニティと地域経済の維持コスト」を吐き出させるのですが、経済規模が小さいため挫折するので補うための外部経済(BI)の投入を求めることになります。ただ、その代償として公的サービスに対する再分配は縮小され、ベーシックインカムで給付された金額を自己責任で支出を選択することになりますから、結果としてネオリベの望む環境整備に貢献していることになります。

 そのことからも、被災地における「コンパクト・シティ」化は、既存のコミュニティの再生は一切考慮されません。むしろ不必要なものであることが前提です。なぜなら、被災地復興が遅れている理由である「財産権」が存在してはならないからです。そこはもう貴方の故郷ではありません。



東日本大震災:土地は生きる支え「売れぬ」 開発の壁に

◇膨大な利害調整 焦る商店主・・・

陸前高田 震災から2年半がたつ中心市街地で、復興のつち音はどこからも聞こえてこない。岩手県陸前高田市は、津波で壊滅した市街地の海側を公園とする一方、山側約90ヘクタールを盛り土で今より5〜6メートルかさ上げし、商店や住宅が並ぶ新しいまちをつくろうとしている。
 「やっぱり土地は売れねえな」。祖父母の自宅や自分と両親の自宅兼美容室を津波で流された男性(35)は6月、市から届いた書面を前に、仮設住宅で共に暮らす父(65)とそんな話をした。
 市は新しい商業エリアの開発で、住宅や店舗を流された地権者たちの土地を買い上げ、かさ上げ後に販売、賃貸する手法を模索する。市による“地上げ”は国の「津波復興拠点整備事業」に基づき、再建のスピードアップが期待できる。買い上げ費用は国が負担。書面は、市が地権者に土地売却の意向を聞く調査だった。
 「このまちに暮らしながら、自分の場所を他人が使うなど想像もできない」と男性は言う。土地は先祖から受け継ぎ、祖父母で16代目。その祖母も母親と津波にのまれた。土地は生きる支えであり、そこで新たな商いを始めたいと願う。
 買い上げが無理なら、地権者全員の同意のもと、土地の換地(再配置)を進める従来の「土地区画整理事業」の手法を取るほかない。地権者は2000人を超え、亡くなった人も多い。道路1本引くにも膨大な利害調整が必要で、果てしなく時間がかかる。
 一刻も早い商店街再生を願う文具店主の男性(59)は焦る。「イオン開店は来年春。かさ上げが終わるころ、どれだけの商業者に力が残っているのか」
 市の意向調査に対象地権者120人のうち90人が回答を寄せた。「売ってもいい」は3割だった。家財一切や家族を奪われ、残った土地に抱く被災者の当然の思いが、まちの再建を遅らせかねない。【市川明代、根本太一】

 被災地復興=再開発事業(東京資本)と宣言するリベサヨな毎日新聞にとっては、憲法で保障された「財産権」が、市による“地上げ”=開発を遅らせると大変ご立腹のようです。ナチス的手法によって、憲法が存在しないように被災地で実績を積めば、大都市圏での再開発事業も円滑に進むことでしょう。東京資本(ドイツ国民)の円滑な投資環境整備のためには、地方を含め既得権益者(ユダヤ人)の権利(利権)があることが我慢ならない事なのですね。


東日本大震災:大船渡の商業者 大手に学び対抗へ

 流通最大手イオンが来年、東日本大震災で壊滅的な被害に遭った岩手県陸前高田、釜石両市の中心部に相次ぎ出店する。イオンの商圏となる北隣の大船渡市は、陸前高田に比べれば中心市街地の被災面積が小さく、地権者も少なかった。このため、市は津波復興拠点整備事業に着手。来年春にかさ上げを終え、店舗が建ち始める計画だ。
 のり店を営む伊東修さん(60)は2011年末、仮設商店街に店を構えて驚いた。内陸からの日帰り客などで震災前とは比較にならないほどにぎわう。初めてでも入りやすいよう店を模様替えした。向かいの鮮魚店はウニや筋子仕入れを増やし、包装を工夫した。
 「震災前は勝手な時間にシャッターを閉めていた。卸売市場が休みだと品切れも平気。大手小売りのようには客の方を向いていなかった」と伊東さんは振り返る。「やる気のある商店主が集まれば、大手に対抗できる」
 現実は甘くない。被災した店舗の再建には国や県から補助が出るが、新規開業は全額自己負担。買い物で必要な物がそろう商店街にするために、新たな店を呼ぶのは難しい。
 7月、まちの将来を話し合う商業者の会合は「地元だけでマーケットのようなものを」「中央の資本を入れた方がいい」と紛糾した。仮設商店街の客足も鈍ってきている。「シャッター通り」の再現に終わらせないためには何をすべきか。手探りが続く。【市川明代、根本太一】


河北新報 東北のニュース/復興誓う笑顔 「釜石109」でファッションショー www.kahoku.co.jp

maturi 早く景気良くなれ  hahnela03氏の 東京資本と被災地の関連についてを 2013/08/22

 maturi氏の「東京資本と被災地の関連について」については、「実験」=「モルモット」を復興予算(補助事業)=税金で行う事例として「グループ補助金」と「復興特区」についても明らかにしなくてはなりませんし、「実験」=「モルモット」がプロパー資金=民間資金で行うことについて、アベノミクスの「成長戦略」において、「民間資金の活用」が謳われていることもあり、「大資本のブランド力」の強化は建設地の土地に立脚するコミュニティをより弱体化させていくことと周辺のコミュニティの維持というトレードオフになるのだと考えます。

 長年に渡る『「大都市圏と地域経済との循環」の再構築』における、コミュニティと地域経済を維持する役割を喪失した「自営業者(その集積の形態が「商店街」)」に対する「交流の場(社会・文化資本の形成)」を提供・マネジメントする「大都市圏の大資本」を欲求する行為の実現としての「釜石109」であったと見ることになるでしょう。
 今回の事例は東日本大震災によって「住民が求める交流の場」が喪失したことへの補完というよりも、今後の「複合商業施設」の運営が「テナントの公共的役割」を宣伝することの意味が大きかったのではないでしょうか。

コラボ商品、笑顔で販売 「釜石109」で女子中生 - 47NEWS(よんななニュース) www.47news.jp

maturi 早く景気良くなれ  震災で衰退する地方民にはベーシックインカムでもくれてやればいいんじゃないですかね(毒) 2013/08/22

 リフレ派は「ベーシックインカム(BI)」に固執していますが、「東京資本と被災地の関連について」からすると、「東京資本を維持するための税金(BI)の使い方(選択と集中)」が読み取れますし、「交流の場(社会・文化資本の形成)」も必要のない投資と見ているのが良くわかります。